第6話未来の遊びというものは
「さて、次は遊びの観点から話そうではないか」
遊びの観点から?
……SFで使えそうなネタという事なのならば近未来の遊びとかそういう話なのだろうか?
だがこの男、まともな遊びというものを知っているとは到底思えないのだが……。
「遊びとは様々あるが、未来に残る遊びとは何か?それを考えたことは君にあるかね?」
「いや、そういえばそんなことを考えたことなんてなかったな」
「そうですよね。私もそうでしたよ」
ああ、天音さんもそうだったのか。
口ぶりからして既にこの話も聞いているようだ。
「おお!そうだろうそうだろう!」
なんだか言い方がとてつもなくウザいがいつものことなのでここはすんなりと流す。
「さて、今現在は遊びにVRを用いたりしているな。さらに遊びが仕事になってもいる」
「ああそうだな」
僕は適当に相槌を打つ。
「ではこの先の未来はどうか?それは自分がゲームの世界に完全に入り込むことになる!アニメや漫画の世界が実現するのだ!」
うん?これまた普通のことを言い出した。そういう発想なら僕にもできるぞ?今日のこいつはなんだかおかしいぞ?まともなことを言っていることの方が多い。
「……なんとでも言うと思ったか?そんなわけなかろう!」
やっぱりか!
やはりこいつはいつも通りだ。
「遊びというものは創り出すものなのだ!遊びを創り出すということはそれすなわち!新たなる娯楽の開発!見よ!これが私の開発した遊びの数々だ!」
そう言って山吹は大量の紙を見せてきた。
紙には遊びのルールが書かれているようだ。
遊びの名前はヘンテコなものばかりで‘おどろおどろ’や‘沼はまり’など名前からはどんな遊びかまるで想像できないものばかりだ。
「ふっふっふ!どうだ?面白そうなものはあるかね?」
「いや、もはやどんな遊びなのかわからない。というか、なんだこのネーミングセンスは!」
「いいネーミングセンスであろう?」
「よくないんだよ!どんな遊びなのか言われてもぱっとこないだろ!この‘おどろおどろ’なんて遊びはこんな名前しているくせして全くおどろおどろしくもなんともないただの意味不明なメンコじゃないか!」
「ただのメンコではない!‘おどろおどろ’はメンコが踊るように跳ねる特殊なメンコを使って行う全く新しいメンコなのだ!ルールはメンコと似ていてメンコを知っていれば馴染みやすいのだぞ?」
「最近の若者はメンコなんて知らない!」
「矢田氏よ!そういう考えではならんのだ!老若男女に受け入れられるものをかんがえなくてはならないのだ!」
「だからといってここにある遊びはひねくれすぎている!」
「それはまだ君が私の見る未来を受け入れていないからだ!未来は受け入れなければ見えてこないのだよ」
「受け入れられるか!少数には受け入れられたとしても万人には受けない!」
山吹と僕との間に火花が散る。
やはりこいつの考えることは理解できない!
と、そんな熱くなっている僕たちの間に天音さんが割って入る。
「まあまあ、矢田さんも山吹さんも落ち着いてください。そんなに熱くなっても仕方がないですよ?これは矢田さんのネタ集め。矢田さんは聞きたいことだけ聞いて聞きたくないものはきかなければいいのですよ」
……確かに天音さんの言う通りだ。要は聞かなければいいのだ。そうだ。こいつの話を今回は聞いてやることにしているのだと思っていたのがいけなかったのだ。
「少し休みましょう?どこか喫茶店にでも行きません?」
「うむ、仕方がないな。天音さんがそう言うのならばそうしよう」
頭を冷やして一度冷静にするにはいい考えかもしれない。
「わかったそうしよう」
僕達は汚い山吹の部屋から脱出して近くの喫茶店へと向かった。
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