第10話 熟考乙女
食堂を出てすぐ近くの階段を上がり廊下を左に曲がり真っ直ぐ突き進み突き当たりを左。そうすると我々のサークルが使う部屋が見えてくる。
部屋に入ってみたが天音さんの姿は見えない。流石にこんなにわかりやすい場所にいるわけがないか。
かといって今売店に戻ると今日俺が学祭を楽しむ時間が終わりを告げることになる。それだけは勘弁である。
「さて、次に行くか」
次は校内の図書館だ。学祭開催中にわざわざあの図書館に行こうと思う人間はそうそういないだろう。
図書館は現在の建物から出て西に行った所にある。早く行かないと天音さんがいなくなってしまうかも知れない。早く行かなくてはならない。
図書館の中は静まりかえっていた。まあそもそも図書館とは静かな場所であるが、それにしても人気がない。
大学にいる時はよくこの図書館にいる僕ならばとこに隠れられようと見つける自信がある。
まずもって中央のデスクスペースにはいないだろうし、本棚の間でうずくまるようなことはしないであろう。となれば2階の窓際であろう。
中央に向かい、吹き抜けから上を見上げると天音さんが外を見つめてボーッとしている。
2階に上がり天音さんに声をかけた。しかし見事に反応がない。もう一度大きな声で声をかけたがそれでも反応がない。
「……仕方ない。少しここにいるか」
天音さんは今一人で答えを出そうとしているのだ。それに、本来家族間のことに他人がああだこうだいうべきではない。ただ答えが出るまでは少しそばにいてあげよう。
僕は本棚から「5分で読める物語」というショートショートのオムニバス形式の小説を手に取ると椅子に座って読んで時間を潰すことにした。
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