第2話 開祭式
8時になると大学校内にある体育館に集められていた。
一応開祭式という事だが、実際は数年前にあるグループが売店荒らしを行い、復旧に時間がかかり、学園祭が台無しになったという事案の所為である。
そのあるグループというのが現在の天音ファンクラブ。当時はメメントモリーという活動内容不明の謎サークルであったとの事だが、僕たちの入学前の事で現在の四年生、留年して5年、6年大学に在籍している人たちも詳しい事は知らないのだという。活動内容を知るのは天音ファンクラブ会員のみでたる。どうせくだらない活動だろうと予想はつくが……。
開祭式を開催しますとアナウンスがあり、全員が整列して壇上に立つ実行委員会会長の道川公十郎に注目した。
「諸君!本日は待ちに待った学園祭の初日である!今年度の学園祭には、かの世界的音楽家である天音弦一郎氏が音楽監督を務める天音交響楽団にお越しいただくこととなっている!これはつまり、例年比をはるかに超える来場者が訪れる事は確定である!売店は混雑が予想されるので、店頭に立つ人員を増やし、迅速な対応を心がけるようにしていただきたい!また、ステージ担当員は天音交響楽団の皆様に失礼のないよう、心して対応するように!学園全体で大いに盛り上げ!盛大に終わろうではないか!」
道川公十郎の挨拶に拍手と歓声が送られる。僕もその場のノリに合わせ一応拍手をしておく。
「相変わらず堅苦しい挨拶ですよね……」
僕の横に居た天音さんが哀れ味を込めた目で壇上の道川氏を見ながら呟いた。
「名前からして堅苦しいし、ユーモアあってもいいじゃないか?」
「……そういえば、あの人どこいるんですかね?」
「あー、山吹か。さあな。居ないなら居ない方が良い」
とは言ってはみたが、おそらく校内にいるであろう。僕にはなんとなくそれがわかる。
「問題が起こりそうですもんね。さ、売店に行きましょう?完売しないと絵笠先輩がうるさいですからね」
「そうだな」
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大学第一校舎屋上
私はここに立っている。
とうとうこの日がやってきたのだ。
私は屋上からアリのように小さな人々を見ながら準備を進めていた。
あの人々が世紀の瞬間の目撃者になるとは思ってもいないだろう。
この学園祭を大団円で終わらせるつもりは毛頭ない!今世紀一のひねくれ者と呼ばれる私がいる限りはな!
「矢田氏よ、今日は邪魔をしてくれるなよ!」
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