第8話思うがまま
『caffe柳』のビックハムサンドは人気なだけあって中々美味しかった。セットのコーヒーは少々残念ではあったが総合的に見れば美味しいと言えるものだった。
……しかし、山吹の話は確かに参考になるものもあったが、殆ど使い物になりそうも無いくだらないものばかりだ。
メモを広げてみても、図書館で仕入れたネタの方がよっぽど使えそうだ。やはりこのひねくれ者を探してまで話を聞く必要は無かったのだ。
……そうだ!その通りではないか!なぜ僕はこの男にネタの提供など頼んだのか!どうやらかなり頭がおかしくなっていたらしい。
そうだそうだ。こんな無駄な時間を過ごしている場合ではないな。早々に図書館に戻らなくては!
僕はビックハムサンドセットを早々に食べ終わると席を席を立った。
「あれ?早いですね矢田さん」
「ああ。僕は随分と無駄な時間を過ごしたらしいことを悟った。図書館へ戻る!」
「おいおい、私に話を聞きにきたのは君の方ではないかね?」
「確かにそうだ。だが、結果として得られたものはくだらないものばかりだ。成果などほぼ無い。図書館ではそれはそれは良いネタを集められていたのだからな。そう気づいた。故に図書館へ戻るのだ」
「ふむ、そうかそうか。やはり君にはまだ私の考えの及ぶところまで来ていないのか……私は悲しいよ」
「せいぜい勝手に悲しんでおけ!僕は行くからな!」
「……思うがままだな」
ボソッと山吹が何かを言った気がしたが、おそらく気のせいだろう。
僕はレジで会計を済ませて、とっとと図書館に向けて早足で歩き始めた。
早く図書館へ!ドブに捨てた時間をサルベージしなければ僕の気が済まない!
創作意欲がメキメキと湧いてくるのがよくわかる。今なら良いものが書けそうだ!
僕の足はますます早くなり、ついに走り始めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます