第7話当てもない文芸サークル小話
何か話そうと提案した僕が最初にした話題は所属している文芸サークル『そよかぜの園』のことにした。
共通の話題は小説関連しかない僕と天音さんでは必然的にこういう話になる。
「今回のコンクールで賞を取ったのは天音さんだけだったか?」
「いえ、審査員特別賞を三年生の横山田茂樹先輩が獲得しましたよ。……私はあの人の書く恋愛小説は夢見過ぎていて嫌いなんですけどね」
「でも文章力は飛び抜けている。が、それで賞を取るっていうのが腹立つ」
「そうですよね。だいたい横山田さんって審査員特別賞とかですよね。話はそこまでなのに文章が上手いだけで賞取れるんですから」
「……天音さんも意外と言うもんなんだな」
「サークル内で一番嫌われてる人ですからね、そりゃ私も嫌いですよ」
天音さんは一口ダージリンティーを飲んでヒートアップしそうな感情を抑えているようだった。
「それにしても天音さんはよく賞を取るよ」
「そんなこと言いますけど、矢田さんもサークル内では1.2番目に多く賞を取ってるじゃないですか」
まあ確かに、実際の事を言えば天音さんより賞を取った回数は多い。天音さんは2回、僕は4回だ。まだ二年生である事を考えればかなり多い。
「矢田さんは今回初めて落選したんですよね?たしか」
「大学生になってからはな。高校では三年間で賞を取ったのは1回だけだった」
「じゃあ高校との通算だと私と同じ回数なんですね」
天音さんは高校で3回賞を取っているのか。高校時代では惨敗というわけか。まあ天音さんの才能ならば当然か。
「あー、思い出した!今度の学園祭で私たち売り子やることになったらしいですよ」
……ん?今何と?
「あ、天音さんもう一度聞くぞ?僕と天音さんで売り子だと?」
「ええ」
「本当に?」
「はい、サークル長の絵笠先輩がそう言ってました」
「うっそ〜」
僕は売り子なんてしたことないのだ。どうすればいいのかさっぱりわからない。いやそれよりも。
「何故僕と天音さんなんだ?」
「なんでも『うちのサークルでエースは二人だから二人で頼む!賞をよく取る天音と矢田の作品を猛プッシュしてサークルの経費を稼ぐのだ。二人で頼むぞ!年末の飲み会の豪華さが決まると思えー!』……だそうです」
絵笠先輩の声真似をして天音さんその時の状況を教えてくれた。
絵笠先輩は人がいい豪快な男なのだが、こういう時がたまにあるのが少し傷だ。
「絵笠先輩らしいが、面倒だなぁ……」
「まあそう言わずにやりましょう?頼まれてしまった以上仕方がないですよ」
「はぁ……出来れば今日じゃない日に聞きたかったよ」
「あーすみません。そういえば凹んでたんでしたね」
「……その言葉もまた凹む要因だぞ」
なんだか少し気まずい空気が漂った。
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