第三部ツベル大陸

第45話 ツベル大陸

 闘神ミメにワト女神、それに私カメ魔神と私達の子供ナギとナミが降り立ったのは、アイン皇帝が支配する、科学の発達したツベル帝国のはずでした。


 粉塵混じりの、嫌な匂いのする風が吹き抜けます。

 ツルタ神王国から、アイン皇帝が黒船艦隊で帰国して、わずか1年程・・・その間に何がおこったのか、ツベル帝都は瓦礫しか見当たらない、焼け野原でした。


 呆然と立ち竦むミメに聞きます。

「ミメ、ここはツベル帝国だよね?」

「・・・この辺りは商店街・・・ここからでも・・・白亜の宮殿・・・アイン皇帝の城が・・・美しいお城が・・・見えてた」

 涙をぼろぼろ流しながら、ミメが声を絞り出します。


「ワトさん、酷い事になってるね!」

「神界からしばらく離れてたから、ここまで酷い事になってたって知らなかった」

「これじゃ、皆仲良くって訳に行かないよね?」

「カメさん、徹底的にやりますか!」


「ワトさん、私は神王国の国王として、友人のアイン皇帝の手助けがしたい!」

「それで良いわよ!突然神罰降したりしないよ!」

「ミメもその方針で良い?」

「じいちゃんに任せる!」


 突然ワトさんが背負ってるナギが、大声で泣き出しました。

 瞬時にミメは闘気をまとい、私は魔力をまとい、ワトさんは神力をまといました。


 それぞれ気を纏った私達には、全く影響ありませんでしたが、辺りを轟音と爆風が襲い瓦礫が吹き散って行きました。


「ナギが教えてくれなかったら、ちょっと怪我をしてたかも」

「ナギちゃん偉い!!」

 ミメがナギに、ほうずりしながら言います。

 ナギは誉められたのが分かるようで、キャキャと笑ってくすぐったそう。

「ワトさん、何処から砲撃されたかわかる?」


「カメさんに分かり安く言うと、ここから西の方向約3キロ」

「3キロ!!結構遠くからの攻撃だね」

「敵国対応の為、大量破壊兵器の工夫から科学の発達が促される」

「泰平の世では文化は発達しても、科学の躍進は望めない」

「女神的には、程ほどの科学は必要と思うけど、それより豊かな文明開化を望わね」



「砲撃は誰が何の為に行ったか、現場に向かい確認しますか!」

 私達全員、一斉に西3キロ先に向かい飛び立ちました。



 眼下に見えるのは、巨大な大砲と30人位の兵士でした。

 蒼白く輝くミメ、白銀に輝く私、黄金に輝くワトさんの3人は、兵士達が見上げる中悠然と降り立ちます。

 兵士達は凄まじい神圧に混乱しているようで、小銃を構える事すら出来ずに居ます。

 得たいの知れない者に対する、恐怖にすくんで居る様子。


 羽飾りの付いた兜の指揮官風の兵士に問い掛けました。

 少し威圧を込めて「貴官の所属を問う!」

 無言の兵士に更に威圧を増し「答えよ!!」

「ロ・・・ロキソニ帝国独立砲兵隊」

「更に問う!先程の砲撃、誰に何の為か」

 脂汗を滴ながら「ツ・・・ツベル帝国に降り立つ・・・謎の飛行物体・・・・・・」

 気絶したようです。


「私達に対する攻撃を確認」

「人限定収納!」

 一瞬で辺りは、兵士達の装備品が散らばるだけの、無人の丘になりました。

 ミメが気を利かせ兵の装備品、大砲弾薬を収納しています。

「ふ~~疲れた!威厳のある話し方、慣れねぇ!!」

「うふっカメさん、カッコ良かったよ!」

「敵はロキソニ帝国みたいだね」


 辺り一帯に、ロキソニ兵が居ないのを確認し、元ツベル帝都に向け飛びます。


 跡地を飛び回り、ベトンを固めたトーチカを見つける事が出来ました。

 上空からだから発見出来た訳で、一見普通の瓦礫の山です。


 難民に偽装した兵士数人が、入り口を監視して居ます。

 兵士の一人に話しかけました。

「カメがアインに会いに来た」

 不審そうな顔で聞いていた兵士は

「カメ?がアイン皇帝に?・・・!まさか?神王国国王様?」

「その通り!こちらは闘神ミメとワト女神」

「約束通り友に会いに来た!」


 大急ぎで他に2人兵を呼び寄せ、辺りに向かって大声で

「神々を御案内する!!後は任せた!!」


 安心したアインは無事のよう。

 長い地下道を下りながら、少し安堵のじいちゃんでした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る