第35話 じいちゃん魔物が攻めて来た後編

 ネクラは、リムとカリラを操ります。

 操る対称が見えていれば、今のネクラの能力なら容易く操れます。

 リムを操り、第一中隊に集合を掛けさせました。


 統制の取れた行動で、第1小隊から第12小隊まで集合、隊列を取ります。

 カリラ副隊長が、点呼を取らせ、全隊員が集合した事を確認します。


 ネクラが進み出ます。


 隊員達はネクラを不信に思いますが、中隊長の指示が無いため、直立不動で待機して居ます。

 第一中隊は、こうして簡単に、ネクラの操りに絡め取られて仕舞いました。



 ネクラは、拘束され転がって居る、没落貴族達をチラリと見、今は戦力外の邪魔者と切り捨てる事にしました。


「奴隷にされている仲間を助け、神王と名乗る極悪人を討伐する、良い戦力が手に入った!」



 強力なネクロマンサーのネクラですが、彼女には重大な欠陥が有ります。

 強力なフュプノ使用時、他者個々人の区別が全く出来なくなってしまう事です。

 男女の区別さえ、あやふやな状態になって仕舞います。


 魔物を操るのは問題無いのですが、人を操る場合、100人を超えた辺りから、症状が現れます。


 平常時がまともかと言うと、それも微妙です。

 ネクラは、人の顔を覚えられ無いのです。


 人一倍優秀な知力を持って居るのですが、ネクロマンサーのフュプノとは、そう言う物のようです。

 個人を意識しないから、他者を己が如く操れるのかも知れません。


 今のネクラには、操って居る者と、操って居ない者しか区別出来ない状態です。



 ネクラは、強大な敵が近付いた事に気付きました。


 感情さえ、乏しくなって居るネクラですが、それでも驚きを感じた事に、戸惑うネクラです。


 もやもやした敵集団の中に今の状態で、しっかり認識出来る男女が居るのです!

「こんな事、あり得ない!」


 神であるワトと、神に成り掛のじいちゃんです、強力な霊の輝きに生物なら反応するのは当たり前です!


 彼女の理解出来ない現象に、恐怖心から手持ちの全戦力を投入します。

「行け!あの男に全員で掛かれ!!」


 リム達は、戦っちゃ駄目だ!

 と、心の片隅で感じながら、強大な憎悪に操られ、神王に向かいます。


「・・・総員抜刀!」「・・・切り殺せ!」






 上空から、見渡した限りでは、魔物は撃退されたようです。

 辺り一面コカトリスやオークの死骸で、敷き詰められて居ます。


 私にワトさん、ミメが殆ど同時に降り立ちました。


 ミメは相当な努力をしているようで、他の獣人魔人すら追い抜きLV的に秀でて居ます。

 私やワトさんより長身なミメ、堂々としていて頼もしい!



 神王都防衛隊は、隊列を組み点呼を取って居るようです。


 リムに、労いの言葉を掛けようと進みます。


 その時、リムの「総員抜刀!」の声と共に隊員が襲い掛かって来ました。

 加速を使って居るようで速い!「・・・切り殺せ!」


 咄嗟の判断「最大威圧!」中隊は気絶し崩れ落ちます。


 自然な動きで、私の前にミメが私を守るように立って居ます。

 ミメは私の第一秘書官であって、護衛官では無いのですが本当に頼もしい!




 遅れて降り立ったルナ達。


 ふらつきながらも、立ち上がった女を見て。

「お前はネクラか?」

「私の名前を知っている、貴女は誰だ?」

「私はルナ!」

「!ルナ・・・姫様?ルナ姫様ぁ!」

「ネクラ!私の父ロゴスと一緒では無かったのか!」


「ロゴス様は、私を庇い逃がすため、人間の毒矢に倒れ惨殺されました!10年前、私の力は不完全で、役立たずでした。そんな私のせいでロゴス様は」


「今の私は無制限に操れます!私と一緒に逃げましょう!!」


「ちょっと待て、ネクラ!」

「私達の神王国を攻撃した訳を話せ!」


「えっ?ルナ様の国?ですか?神王国は・・・?」


「私達の恩人、ツルタ神王様の国だが、私達と共に建国した!ネクラも覚えて居ろう!エルナもルドフも、共に良い国にしようと頑張って居る!」


「えぇーー?聞いた話と全然違うよ!」



 正気に戻った防衛隊に、ネクラと没落貴族達は連行されて行きました。






 没落貴族達は、国家反逆罪並びに、神王殺害未遂で全員死刑、刑は即執行されました。


 貴族の私兵達は、農奴にされ、強制労働10年の刑。

 刑が終了しても、奴隷の身分からは解放される事は有りません。


 一方ネクラは、10年の月日、魔物を操り大森林南の端を拠点に、ツベル大陸帰還を唯一つの目標に頑張って来た、情報を得た相手が悪かった事など、情状酌量され、神王都、王都、追放の刑になり、ホミ男爵領預りに落ち着きました。



 ガルバニ伯爵領とアボガ子爵領、それに3馬鹿金カード持ちの領地、アロ村ルバ村カル村の5箇所の統治者が不在になった為、永く尽くしてくれた従者5人を男爵に昇格させ統治させる事にしました。


 従者達は「主殿に使えて良かった!」と、感激の豪泣きでした。

 アロ村は銅鉱石産出の大切な所、王都貧民街の住民から、希望者を募り移住してもらい、町に昇格しました。


 ルバ村は、木材の町ガドから、ゼンナ大川を下ってきた木材を加工している大切な所です、今では移住者で町の規模になって居ます。


 常夏の村カル村ですが、従者時代の雑談をヒントに、一大リゾート地として、大盛況、エシム男爵の意外な才能に驚き感心するじいちゃんでした。




 アボガとガルバニの冒険者ギルドについて。

 あまりにも弱体化している為、リムにガルバニギルドマスター、カリラにアボガギルドマスターとして、就任してもらいました。

 二人の努力向上心の賜物、殆ど最強の上、軍隊を指揮する手腕が優れた女性と言うことで、引き受けてもらいました。


 リムとカリラは、元ギルマスや自称上級中級の冒険者達の妨害が酷く、当初苦労して居ましたが圧倒的力でねじ伏せ、それでも従わない者は追放処分したそうです。


 その後、リムとカリラは、何度か闇討ちに合いましたが、圧倒的LV差と兵士としての訓練の賜物、返り討ち盗賊として切り捨てたそうです。

 力による解決も時と場合に寄れば必要な事だと、しみじみ思います。




 ゼンナ王都にも巡回バスが走り、モノレールの蒸気機関車の試験運用、神王都ゼンナ王都間が開通しました。


 この大陸、順調に発展して居ます。

 人々の暮らしは豊かに、王都の貧民街の住民は、農地開拓者になり餓える事が無くなりました。

 貧富の差は、まだまだ顕著ですが、その日の糧に困る者は居なくなりました。


 私が抜けても其ほど問題は起こらない状態になって居ます。



 よし!!

 ツベル大陸の冒険に出発だ!!!









 第一部は、これで終了です。

 第二部は、小国がいがみ合う、ツベル大陸の、お話になる予定です。

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