第20話 じいちゃんは侯爵様

 朝も早く、誰から話しを聞いたのか、奴隷商人が訪ねて来ました。

 猫族男性2人、犬族男性2人を連れて来ています。

 4人はちゃんとした身なりで、不安そうです。


「此が武器と持ち物、奴隷の物でございます」

 控えの者が持っていた物を、私に差出し

「それでは此で失礼します」と言って帰ろうとします。


 呆気に取られていた私は

「待って!お金を・・・」

「お代は結構でございます、魔爺様」

「今後ともご贔屓に」言い残し、帰って行きました。


 不安そうな4人に

「ミメ代わりに話して、安心させて!」

「じいちゃんわかった、任せニャさい」

「それと、これも還しておいて」荷物をミメに預けます。


 ミメは早速4人に話しています。


「あなた方、じいちゃんに助けられて幸運ニャ!じいちゃんはね!ワト・・・」


 私は宿を出て、今後の事を考えながら町中を歩く事にしました。


 1人で目的の無い散歩初めてだな・・・。


 あれ?食料品店のあれ?醤油だよね!

「店主!あれあの醤油!味を確めて良いか!」

「どうぞ、どうぞ、ロニ村の特産でございます」

「仕入れが少なく、少々お高いですが、煮物炊き物が非常に美味しくなります」


 差し出された小皿、数滴入った匂いは醤油!ペロッ・・・うん!醤油だ!

 米食の世界、醤油が無いはず無いって思ったが有った!


「店主!在るだけ全て買うぞ!」

「え?ありがとうございます・・・が、3樽で・・・30万ゼンになります・・・宜しいですか?」

「良いぞ!はい大金貨3枚」

「毎度!有り難うございます!」

「お届け先は?消えた!」

「ああ収納した、問題無い」

「??又の、ご贔屓・・・を」


 店主は収納、見たことの無い不思議でシドロモドロに成るくらい驚いていました。


 次に酒屋、料理酒は・・・果実酒、清酒が多数並べられて居ます。

 あの米で良く清酒出来たな!ドブロクが精々と思ってた。

 ドワーフのルドフ当たり大喜びだろう。

 店主ここの酒全て買うぞ!

「5万1千500ゼンになります」

 金銭感覚また狂いそう


 全て収納して、思いだしました。

 月の宿、20刻から酒場になってた、醤油並みに高額だと酒場成り立たない!


(カメさん)

(ワトさん、何?)

(味噌も有るわよ)

(さっきのお醤油に気を取られ見落としてる)

(え?戻って見る、有り難う)


「店主又来たぞ!」


「あっ!旦那様!何がご入り用で」

「味噌を在るだけ全てくれ」

「味噌でしたら王都に有りますよ、仕入れ先が王都でございますので」

「そうなのか?じゃ1樽」

「毎度!5千ゼンでございます」

「5千?少し不安になる、味見させてくれ」

「はい!此方です」「うん、味噌だ、旨い!」

「はい大銀貨5枚」


「私ロニ家のドニと申します、何か御入り用の際には、呼びつけて下されば何処にでも参ります、侯爵様」

「流石商人、耳が早過ぎる、私はまだ侯爵じゃ無い」

「明日侯爵に成られるのでしょう」

「そう、なのか?」


「はい竜殺しの魔爺様、実質既に侯爵様です!」

「?何か有ればその時頼む」


「御約束願えるのなら、ご領地に出店させて頂けないでしょうか?」

「店か?有れば助かる、宜しく頼む・・・まてまて、領地なんて頂いて無いぞ!」

「ガルバニ町の西側全て、侯爵様のご領地だそうですよ」

「何処からの情報だ!」

「商人は情報が全てで御座います」


(ワトさん此のため?味噌に託つけて)

(私からより良かったでしょ、お味噌も買えたし)



 従者5人が私を探して居たようで「大急ぎ宿にお帰り下さい!馬車が待って居ります!」


 宿の前には10人乗りの大型馬車が3台止まっていました。


 亜人語も人語も話せるルナが皆を集合させていました。

「ルナ有り難う助かった」

「お役に立てて私も嬉しい!」

「ルナが居てくれて良かった、此れからも頼む!」

 ルナがニッコリ微笑みました。

「主殿遅いぞね!」「皆待ちくたびれたのじゃ」


 何?私が悪い?こんな予定だった?

「あっ1日間違えてた?」


「今日の昼から王都に向かえば、明日の夜に王都に着く」

「夜には国王様のお話を聞く事になるニャ」

「悪かった、味噌と醤油見つけて喜びすぎた!」


 バタバタ(私のせいで)慌ただしく、ガルバニ町を出発しました。


 ガルバニ南門を出て夜の内にゼンナ大橋を通ったらしい、寝てたもんで知りません。


 皆元気ですが、私は馬車酔い!

 もうダメと思った頃、王宮に到着したようです。


 まだ明るい、随分跳ばしたようで、酔うはずです。

 お蔭で、王様と内密な話の頃には、気分もスッキリお腹はペコペコ。


 王宮内は、思った程贅を尽くした感が無く、実質的な作りになっていました。

 国王の思いが偲ばれます。

 すこし好感が持てました。


「お付きの方は此方に」

 ミメやララア達が通された部屋は豪華な食事が用意されて居ました。


「侯爵候補様と従者の方は此方におこし下さい」


 体育館を思わせる、広い部屋に通されました。

 部屋を眺めて居ると、私より少し若い老人がひょこひょこ入って来ました。


 従者が皆礼を取り「国王陛下!」

(王様なの?この人)

 私も礼を取ろうと、仕掛けると。


「良いよい、今は誰も居らん、堅苦しいのは嫌いだ」

 私はお辞儀して返答に代えました。


「楽しみにして居った、竜を見せてくれ!」

「此所に出して構いませんか?」

「その為の場所だ」


 私が収納から竜を出すと。


 王様は竜のデカさに驚き、其よりもデカい竜を収納していた事の方に興味を持たれたようです。


「魔爺殿は収納を他者に与える事が出来ると聞く」

「儂にもくれぬか?」

「良いですよ」軽く答え渡そうと

「いや待て、此処では無い、明日謁見の間で派手に渡してくれ!」

「派手に・・・ですか?」

(どうしよう、派手に・・・意味が判らん)


「竜は献上して貰った、此所に置いて居てくれ」


「おっそうだ!明日は一応国と儂に忠誠を誓ってくれ」

「はい!勿論」

「かたちだけで良い、竜殺しを儂らで、どうこう出来るとも思えん」

「領地の運営も、好きにして構わん」

「お心遣い感謝します」


「それでは明日、楽しみにしておるぞ」


 王様、簡単に言ってくれる、派手な演出なんて・・・。


 じいちゃんは、この世界に来て初めて、思い悩むのでした。

 もっと他に、悩まないとダメな事、考えないといけない事、

 一杯有ったはずなのにね。

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