第28話 じいちゃんを狙う者達

 魔大陸と言われている、ツベル大陸。

 大陸を統べる、皇帝アインは怒りを露にし、大臣達を怒鳴り付けて居ます。


 妃に迎える箔付けの為、遣ゼンナ使として、送り出したお気に入りのルナ、生死すら不明の状態が続き、苛立ちも最高潮に達して居ます。


 大臣達の誤魔化しも、最早通用せず、一大勢力に成り上がった、小娘の始末のチャンスと、策略の末少人数で送り出した、負い目もあり、黙り混む大臣達でした。


 蒸気船、戦艦黒船艦隊を引き連れ、状況次第ではゼンナ王国壊滅も吝かでない!

 決意を込め、アイン皇帝はゼンナ大陸に向け出航しました。




 一方、ゼンナ王国最大の宗教団体、ゼンナ正教の神殿では。

 大聖者と自称する老人が、がなり立てて居ます。


「信者はどうした!参拝者共が居らんではないか!!」


「収入の激減はどう言う事だ!大口の御布施が皆無とは、お前ら弛んでおる!!!」


「大聖者様、私共の怠慢では御座いません、最近成り上がりの侯爵領に女神と称する女が現れ、信者は皆そちらに参拝しておるようです」



「異端審問官を呼べ!」


 無気味な大男が、鈍重そうな風体に関わらず、身軽にやって来ました。


「大聖者様、お呼びかの?ぐへっ」


「異端討伐隊を引き連れ、魔爺と言う、成り上がり侯爵を殺せ、いや、討伐せよ!それから、女神と称する女を捕らえ、拷問で無理矢理でも偽者と言わせ、お前らの好きにした後、火炙りの刑に処せ!!

 待て!美女で、良い身体をして居れば許して、連れてまいれ!」


 神殿に閉じ籠り、信者の美女をはべらせ、贅沢の限りを尽くしていた老人に、真実を知る気は無い。


 異端審問官と討伐隊が上手くやる。

 今まで通り、邪魔者は殺す!

 理由はどうにでも捏造出来る。

 問題になれば、贅沢させてやってる、貴族共が処理するだろう。


 ゼンナ正教の教えは、救いも祝福も無い女神ワトは幻想である。

 ゼンナ正教は人々を救い、祝福を与える!

 教義が事実で人々を救い、救済出来て居るなら立派な事です。


 はべらせた美女達を、貪りながら自称大聖者は快楽には貪欲です。

 何処かの、淡白枯れたじいちゃんより、生物の雄とすれば、優秀です。



 ツルタ侯爵領では、開発中の蒸気機関が完成。

 蒸気機関、乗り合いバスの試乗会が、開催されて居ます。


 アボガ町で助けた、5人の女性ドワーフ、彼女達はルナと共に、送られた技術者で、蒸気機関を試用した乗り物の技術指導する役目だったそうです。


 運転手と後部の窯焚き要員2名、1台に3人の乗務員が必要です。

 乗務員は花形のエリート公務員として大人気で、30名の募集に数1000人が応募して来た有り様です。


 1気筒のピストンから、カムを通じて起動、時速30~50キロメートルでトコトコ走るバスですが、ゼンナでは想像も出来ない新技術でした。


 しかし、カメさんとすれば、少し不満の残る開発でした。

 ジェット機やロケットを見据えていた少年時代、高校生まで走ってて、乗って通学した、古臭い蒸気機関車のからくりなど、見向きもしなかった酬いです。

 知らない物はどうしようも有りません。

 じいちゃんは役立たずでした。


 でも、ジュラルミンの開発では、じいちゃんの独断場でした。

 アルミニウムに少量の銅とマンガン、マグネシウムの合金がジュラルミンです。

 合金関係は得意です!

 ドワーフ娘達にじいちゃん凄い!と尊敬され、こっち方面では、面目保てました。



 蒸気機関を利用した船、蒸気船開発は遅れて居ます。

 ルナ達が乗って来た蒸気船は、邪悪な魔道具としてゼンナ正教が破壊しつくしたそうです。

 5人のドワーフは蒸気起動車の技術指導員であって、造船技術者で無いためです。

 少しでも原型残っていればと悔やまれます。


 今の段階は、トムソーヤの冒険に出てくる水車が着いた蒸気船

 あの感じの木造ボートまでこぎ着けて居ます。


 スクリューはツベル大陸でも、まだ開発されていないそうで、技術者として、興味が湧くのか、凄い食い付きでしたが、エンジンからどう言う感じに力がスクリューに伝わるのか、じいちゃん知りません。


 ツベル大陸では、既に蒸気機関車が走って居るそうで、

 ゼンナより100年は進んだ、文明を持っているようです。


 蒸気機関による産業革命が既に起こっていたそうで、

 蒸気船による、大航海時代に先駆けて、送り出されたのがルナ達でした。


 ツベルでは、石炭埋蔵豊富な炭鉱が多数見付かり、燃料は石炭が使われて居るそうです。


 何とかルナをツベルに送り返す、手立ては無いか、悩むじいちゃんでした。




 次は大陸横断鉄道に、取り組もうと思って居ます。

 鉄道には大量の鉄が必要です。


 鉄は、大森林東のロニ村、銅はロニ村の北にあるアロ村が製錬産出しているそう。

 面倒でも、大事業、いくら好きにして良いと言われていても、他の貴族の手前、国王に相談、許可を得ないと。


 同行メンバーは、事務官エルフのルヒト、技術者ドワーフのレリハとリイフ、秘書のミメ、ミメの補助の猫族のフラウ、それに問題発生時、ごり押し解決要員のワトさん。


 王の謁見は到着と同時に実現しました。

 以前、ワトさんの恫喝が良く効いているようです。


 王命で、ロニ村、アロ村に命令が飛び、必要なだけ幾らでも、鉄材が手に入る事が決まりました。


 お礼に献上品、王に広場まで出向いて貰い、目の前でレリハとリイフが蒸気起動馬車を組み立てます。

 2人は収納から手順良くパーツを取りだし王が飽きる前に完成させました。


 出来上がっても、王は何か解らない様子。


 タンクに水を入れ、窯に火を入れ、蒸気起動馬車を動かせて見せると「凄い!凄い!」と大ハシャギする、王でした。


 献上品のお礼に、男爵までの爵位を授与出来る、権限を与えられました。

「有りがたく頂戴致します」

 お礼は言いましたが、何か微妙、あまり嬉しく無い。

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