第32話 じいちゃんみんなのお蔭だよ!
アイン皇帝に、ゼンナが後進の発展途上、全てに置いてツベルに劣る、と思ったまま帰国させたくなくて、2週間の滞在中に、かなり強行軍の案内をしました。
先ず、移動で度肝を抜こうと思いました。
「アイン皇帝、これに乗って下さい」
目の前で、美女が巨大な竜に姿を変える!
「人と思って居たが、竜が人化して居たとは!!」
「竜族も神王国の一員です。此から向かう巨人族の、精錬工場を含む一帯が、竜族タツノ男爵の町になります」
驚く皇帝とルナの乗った竜がゆっくり飛び立ちます。
其を追いかけるように、飛び立つ私とワトさん、ミメとタツノ。
呆気に取られる皇帝を後目に、高速で抜き去り、タツノ町に降り立ちました。
降り立った皇帝は盛んに飛行術の方法を尋ねて来ます。
「皇帝に付き合って竜に乗ってたけど、ルナも飛べるよ!」
その一言で、皇帝は目を丸くして「誠か!ルナ姫!!」
「はい!飛べます」
「何をどうすれば飛べるようになる!!」
「全てじいちゃんから授かるの!」
「じいちゃん?とは?神王殿の事か?」
(能力を授ける?まるで神では無いか?侯爵だったはずが神王と呼ばれ?この老人は何者?)
(ルナがワト嬢の事を、ワト女神様と言ってた!女神の婚約者は、やはり神なのか?)
(しかし、どう見ても唯の老人にしか見えん、神々しさの欠片も無い!)
皇帝は混乱しながらも、かなり正確にカメさんを見てる!流石一国の主です。
そんな事より、巨人族の族長ゴレムが、案内しようとウズウズしてる。
巨人族には、3.75倍4.38倍の拡大コピーで作った、服を着せて、見てくれは巨大なだけの文明人に見えます。
彼らはもう腰簑だけの蛮人ではありません。
「主様ようこそお出で下さいました!」
話方も流暢になって居ます。
「ご案内します」
「この工場では、ミスリルが精錬されて居ます」
「あちらに見える工場では、アルミニュウムが精錬されて居ます」
屈み込みながら、ゴレムが説明します。
巨人族に合わせた、巨大な設備に圧倒される皇帝。
「ミスリルをこれ程大量に産出しているとは!羨ましい!!」
皇帝は心底羨ましそうです。
次の工場では「これがアルミなのか?」
出来たてのアルミニュウムインゴットを持ち上げ、「羽根毛のように軽いな!!」
(ボーキサイトと言ったか?こんな泥んこを、どうすればアルミに出来る?)
「このアルミに、小量の銅等を混ぜた合金が、神王国内を走って居る、蒸気バスの車体に成ります、金属名はジュラルミンです」
「ああっあの鉄より軽く丈夫な車体の事だな・・・」
皇帝は、何を思うのか、無言で物思いに耽って居ます。
(何が、蛮族の住む未開の地だ!この合金の技術だけを取っても我が国より数十年いや!100年は進歩してる!)
ワトさんには、皇帝の思いは筒抜けです。「うふっ」
「後、巨人族は鯨肉の加工工場も運営して居ます」
「一頭丸々購入し、収納した鯨が工場に運ばれます」
「巨大な鯨の加工は、巨人にうってつけの仕事です」
「鯨は肉は勿論、革、骨、口内のヒゲ、に至るまで、全て棄てる所の無い貴重な資源です。
捕鯨の村、ガレロにも、この技術を逆に指導して感謝されました!」
巨大な鯨肉のベーコンを贈られ、皇帝は大喜びです。
「我が国も鯨肉を見直すべきだな!」
皇国では鯨肉は食べず、焼却廃棄しているそう、鯨油のみ潤滑油として使用する不経済な利用法、まるで昔の何処かの国々のよう。
もっとも、鯨油を取るため大量に、捕鯨されて居るのはマッコウ鯨で歯鯨、大和煮のような加工調理しないとパラフィンだったか?が含まれた癖のある肉質の鯨です。
「工場総責任者ゴレム案内有難う!」
「主様!いつでも歓迎致します!」
「もっと頻繁に御越し下さい!」
「お待ち申して居ります!!」
「では、次に此処で精錬された、ミスリルやオリハルコンを使い、剣や武具を作って居る町に行きます!」
再び皇帝は竜に乗り、ルナは飛ぶ所を見てもらうため、私達と一緒に飛び立ちます。
皇帝は驚きと共に、羨ましそうにルナの飛ぶ様子を見ていました。
「ここが、武器製造ゴン男爵の町です」
ドワーフのルドフの指導により鋳造や鋳掛けの技術が向上し、今では立派な剣や防具が大量に製造されて居ます。
2本角のゴン男爵ですが、1本角のアイン皇帝によく似て居ます。
アイン皇帝も気付いたようで「神王殿、彼は魔人なのか?」
「いえ、オーガのゴン亜人です」
ゴンは私が始めて友人になった亜人で、当時はまだ小さなゴブリンでした。
合う度に進化して、姿が変わり、最近今の姿になって居ました。
ゴンは誇らしげに、案内して居ます。
案内した先は、作業場で無く、展示場の方でした。
ゴン正解だよ!私は心の内で思いました。
皇帝はミスリルやオリハルコン製の優れた武具にただならぬ興味を持ったようです。
「アイン皇帝、次は酒造りの町に行きます!」
飛んでる姿を、羨む皇帝陛下授けるか、迷う所です。
困ったら、ワトさん!
(ワトさん皇帝に魔飛行を授けるメリットとデメリットどう思う?)
(あれほど、欲しがってる!恩を売る良いチャンスよ!皇帝を仲間に引き込めたら最高でしょ!)
ララア男爵の町に着きました。
ララアが、待ちわびた様子で近付いて来ます。
「主殿、遅い!待ちわびたのじゃ!」
「すまん!ララア、案内頼める?」
ララアは、嬉しそうに私に絡まって来ます、歩き難いけど、まっ良いか!
辺り一面芳醇な香りが漂って居ます。
「主殿と歩くのは、久し振りじゃ!」
ララアは町の中央、製造されて居る、全種類の酒が展示され、試飲出来る休憩所に案内してくれました。
皇帝は、嬉しそうに各種酒を味わって居ます。
かなりの酒好きみたいです。
最終的に3種類の酒が気に入ったようです。
ララアに命名は任せて居ますが・・・何と言うか・・・。
大吟醸神王酒(最高級日本酒)、ミスリルスキー(最高級ウイスキー)
オリハルディ(最高級ブランデー)
の3種類でした。何れも最高級品、流石舌が肥えてらっしゃる!
ララアのネーミングセンス!
ウワバミ醸造酒工場、オロチ蒸留酒工場、ジャジャ発泡酒工場、ジャノメワイン工場、凄いのか、酷いのか、判断出来ない、ネーミングセンスです。
ついに、皇帝の口から嬉しい言葉、頂きました!
「私の国には、これ程多彩な酒は無い!羨ましい!是非大量に輸入したい!!」
やったね!
科学技術では、100年遅れてるが、文化的には優れてる!
「ララア、ナイスな案内有難う!今度ゆっくり遊びに来るよ!」
「主殿、待っておるぞ必ず来るのじゃ!」
「皇帝陛下!お酒を誉めて貰ったお礼に、飛行術を授けます!」
「何と!神王殿!誠か!」
「はい、軽く目を閉じて・・・はい、此で、飛べますよ!」
「な、な、何と!!」
「最初はルナに手を繋いで貰い、ゆっくり飛び立つ、そう、其で良い、徐々に自分で飛べるように、意識して!」
「大丈夫もう、飛んで居ます」
「本当だ!飛んでる!!凄い!!!神王殿!感謝!!礼には!!何を持って礼にするか?」
「落ち着いて皇帝陛下、私と陛下の友好が深まれば、其に勝る物は有りません!」
「此からは私の事はアインと呼んでくれ、それと貴方をカメと呼ばせて欲しい!」
「ああっ良いなアイン!」
「良かった!カメ」
「この飛行術の恩は忘れない!こんな凄い!嬉しい事は無い!」
初飛行のアインに、速度を合わせたため、かなりスケジュールに遅れが出ました。
喜ぶアインと共に、次のケイト男爵の町に飛びます。
アルケニーの丈夫な糸を使用した、繊維と服飾の町です。
「主殿!もう、来ないのかと少し落ち込んで居たぞね!」
「悪い!ごめん!色々案内する所が多くて。今度埋め合わせするから!!」
ケイトの案内で、アインは意外にも、アルケニーの丈夫な繊維に、非常な興味を持ってくれたようで、大量な輸入を希望していました。
「ケイト、良い案内だった!有難う」
「なに、主殿の為なら、何でもするぞね!」
もう少し、気分良く飛びたい感じのアイン、ダメ押しの小物装飾品細工の町、コポ男爵の町に飛びます。
「我が主君、良くお出で下さいました我ら一同、首を長くしてお待ち致して居りました!」
相変わらず、硬いねコポ。
コポ達コボルトは、知的で繊細な細工、緻密でゴウジャスな作品の数々アインをすっかり魅了しました。
輸出品は、大量に予定出来ましたが、逆に輸入品となると、ツベル特産品と色々品目を言われたが、欲しい物が無い!
欲しいと言えば石炭位しか無い。
科学の進んだ国、もっと凄い物が有るかと期待したが、少しガッカリしました。
アインが帰国する日がやって来ました。
「アイン!今無人の船はある?」
「私の旗艦、あの甲板に立って居る、歩哨兵以外居ない!」
「じゃ、歩哨に降りて来て貰って、無人にして!新造艦を貰いに行って、収納出来なかったら困るから、試してみたい」
「収納!」
「おーっ!見事!あんな巨大な物を瞬時に収納するとは!」
「ほう!波も立てず現れた!凄い!」
アインは仕切りに関心していました。
土産を一杯積み込み、名残惜しそうに黒船艦隊が帰って行きます!
旗艦を収納しただけで無く、こっそりコピーしたのバレないかな?
縮小か拡大コピーして、サイズ変えたらバレないかな?
私の収納内に今、黒船艦隊の旗艦がコピーされて入って居ます。
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