第10話 じいちゃん竜と遭遇する

凄く疲れていたようで、眠った感じなく朝を向かえていました。

体はスッキリ元気です。


いつもより早い就寝だったためか、まだ夜明け前みたいです。

生活魔法光を小さく灯し時間を見ると5刻でした。

部屋の隅に行き、壁にもたれて棒で突く精米を始めます。


ビンの玄米をひたすら突く棒でひたすら突く繰り返し突く............

かなり精米が進みました、今五分突き位かな、きれいな白米にするのは、この方法ではきついかも。

7分か8分突きで我慢した方が良いかな。


ミメ達の寝袋がモゾモゾ動きます、「起きた?」

「あっじいちゃん助けて!出られニャい」

寝袋の首の部分紐で縛っているのを忘れてるようです。

「ありがとニャ、こんな寝かた初めてニャの」

ホミもキサも同じように、もがいていました。


皆が起きたので、途中でビンを収納します。


外の広場まで降りて、ミメ達に簡単な、かまどを組んでもらい鍋を置き、肉と玉ねぎの塩味汁を作り、肉と輪切りにした芋とニンジンを遠火でじっくり焼き、塩をパラパラ振り掛けます。


ゴンが不思議そうに聞いて来ます。

「カメ何してる?」

「朝食の用意」

「朝食?朝も食べるのか?」


話を聞くとゴン達は1日1食夕方食べるだけだそうです。

考えて見ると、日本でも1日3食食べる習慣はここ100年程の内に徐々に定着した事でした。

でも、朝はしっかり食べたい!

ミメもじいちゃんに釣られて食べてただけで、いままで昼食は食べた事無いそう。

檻の中では1日1食だったニャと言ってます。

(ワトさん、ゼンナの食習慣はどうなってる?月の宿では弁当入れて3食だった)

(カメさん、月の宿は高級宿よ、普通の宿は食事無しのきちん宿)

(ゼンナの一般人は1食か2食、3食食べるのは貴族か王族位かな)

(へぇ、そうなの)


食べて見たいと言うゴンと子供達を交え朝食を取りました。

肉と玉ねぎから良い味が出て、美味い塩汁ができていました。


ゴブリン達は初めての味に目を輝かせていました。

「カメさっきパラパラ振っていた白いの美味いな」

「塩だけど要る?」

「あればくれ」


美味くても使い過ぎないよう注意して塩1壺渡して置きました。


(ワトさん相談)

(何?カメさん)

(魔人4人のガルバニ町へ先に行っちゃダメ?)


ワトさんの説明では、冒険者には位と住み分けがあり

ガドロは初心者の町、アボガは中級者の町、ガルバニは上級者の町だそうです。

上級者は個性の強い、曲者揃い、ガドロ町からゼンナ大川を下れば簡単安全にガルバニ町へ行けるが、まず受け入れられないでしょう。

との事。


なるほど、駆け出し者がデカイ顔して近づくんじゃねぇ!ってか。

狭い領分だね!バカにする訳じゃないけど、金のカード持ちですら竜を倒した人居ないんでしょ。


(金のカード持ちは王都に3人居るよ、騎士爵位が1人准男爵が2人)

(へぇ金のポイントカードで爵位が貰えるの)

(カメさん、単独竜殺しは無条件で黒曜カードに昇格それに侯爵様よ!)

(制度だけで1人も竜殺し出てないの!)

(カメさん狙ったら!爵位はもらって損はないよ)

(........................)


8刻ゴンの村を出発。

ゴブリン達に感謝され、再度訪問をと口々に言われながら旅立ちました。

魔人助けの旅がなければ、ゴブリン達とノンビリ暮らすのも悪く無いかも。


ゴンは私と狩をするのが楽しいと、また道案内をしてくれています。


道中コカトリスを3頭サクサク倒し、その都度ミメ、ホミ、キサ、それにゴンまで

「力が湧いて来る!」と言っていました。

ミメ達は兎も角、ゴンはLV24、LV20程のコカトリス倒して何でLVが上がる?


そうか!仮にLV30の人がLV1の竜に勝てるか?

無理でしょう!竜のLV1と人のLV1が同じ訳無い

同族のLVしか比べられない!

なまじLVが視れるので、大きな勘違いしてた!

同じ人間でもこの世界の人と転移者の自分は同族とは言えない......


「カメ、もうすぐ大森林湖が見えるぞ」

「えっ?そんなに近いの?」

「ああ、湖から北はせまい、南に大森林が広がる」


突然、コカトリスのブレスでさえ、風呂の中の屁のように可愛く感じる、凄まじい咆哮が響き渡り、辺りがビリビリ振動しています!


「カメ!竜だ!」

「何かと、闘っているようだ!」

私達は音のする方向にユックリ進みました。

ビリビリ振動する咆哮は続いています。


やっと見晴らしの良い場所に出ました。


悲惨な光景、吹き飛ばされたり炎に焼かれたのでしょう、冒険者と思われる死体が辺り一面散乱しています。

重症をおい、それでも何とか立っている冒険者が5人、私は一番近くの冒険者に駆け寄り、治療しようと上着を脱ぎ掛けてやろうとしました。


「じいさん、危ない!逃げろ!」

「いやいや、放っておけません」


竜は全く無傷で敵をほぼ全滅できた事に満足したようで咆哮が止まりました。

「皆!下がって!」

突然現れた老人に、驚きながらもこちらに下がって来ました。


私は問答無用で竜に向け「みがわり」と唱えました。

  土竜

LV10 HP20000 MP15000

     力 30000  速さ 10000  魔力 20000

スキル  メテオ  大地の咆哮


意識が飛びそうに成る程、痛みを伴った⁉力が湧きます。

竜は私の体力になり、立つことも出来ず、ベチャッと伏せの状態で動く事も身動ぎさえ出来ない様子。


「メテオ!」感覚は雨あられでしたが、ぐっと抑え、1個の大岩を竜に降らせました。

その頃やっと沸き立つ痛みが治まりました。

私の身体では、竜の力はきついです。


倒した竜を収納し、5人の冒険者一人一人に上着を掛けて治療しました。

周辺に散らばる50人程は、全員遺体になっていました。


長い間呆けていた生き残り冒険者達は、感謝も無しに詰めよって来て、

「じじい!お前は何者だ!」

「怪しい奴、向こうの魔人はなんだ!きさまの仲間か!」


「身の程知らず、上級者気取りの若輩者!」

「興奮するな!命の恩人だぞ!それを、きさま呼ばわりは無いだろう!礼儀知らず共め!」

「魔人は私の奴隷だ、文句あるか!」


地球でもほとんど無かった、久しぶりに腹が立ちました。

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