第4話 じいちゃん奴隷を買う

 意外に気持ちよくグッスリ眠る事ができたようで、目覚めはスッキリしています。

 加齢と共にトイレが近くなり一晩3回はトイレに行っていたのに、昨夜は一度も目覚めず気が付けば朝になっていて非常に満足の行く睡眠でした。


 服を着るとクリーンが掛かったのか体がスッキリします、ベタついた髪の毛もサラサラです。


 ワトさんの話では、この世界も1日24時間だそうで、昨日腕時計の時間を合わせています。

 今6時30分6刻半、とりあえす共同トイレに行き用を足して・・・紙は?この世界尻ふきどうしてるの・・・持ってて良かったポケットティッシュ。


 朝食は不味いご飯に鳥ガラスープ、野菜の煮物、ご飯さえ美味ければ、じじい的には満足の行く朝食でした。


 今日は町中を散歩しながら精米に使えそうなビンを購入しよう。

 お米は美味しく食べたい!


 今手持ちの金17700ゼン贅沢しなければ当分狩りをしなくても大丈夫でしょう。

 何か安い武器も購入したい、私弱いですから。


 目標が出来たので早速町中へ出掛けました。


 ギルドのある通りへ出て目につく露店をひやかしていると、鋳型で大量生産されたと思われる剣が売られています、古武道やった経験から良し悪しは多少わかるつもりです。

 ざっと見た感じどれもなまくらで、安いが買う気も起こらず次に行こうとして、一振りの剣が気になりました。

 1メートル前後の他の剣よりも60センチ少々の寸足らずでいちだんとみすぼらしい外観ですが、何か気になった物で店主にたずねました。


「店主これを見せてくれ」

「どうぞ手にとって、ご覧ください」


 持った感じ重量は非常に軽く感じます。

 鞘から抜くと短く細いため、非力な私でも充分扱えます。

 寸足らずでも60センチ以上あれば日本刀でいえば大刀です。


「店主安ければ買っても良いが値段は?」

「お気付きでしょうが、なかごの部分錆のためか大磨り上げされて寸足らずになっております」

「旦那様以外興味持たれなかった剣でございます」

「お安くさせていただきますので是非ご購入願います」

 商機と見てペラペラしゃべくる店主5千ゼンとの事だが、言い値で買う手はない。


「3000ゼンだな」

「それで結構ですどうぞ」


 売れそうもない剣が売れて、店主は大喜びです。

 代金を支払い、剣をベルトに差し今度こそ精米のビンを買おうと先に進みます。

 武器が手に入るとなぜか嬉しい、「年は取っても男は男か」なんて呟きながら歩いていると人だかりが目に留まりました。


 酷い!素っ裸の女の子が倒れていて、身なりの良い男が殴る蹴るの暴行繰り返しています。

 女の子は首輪に鎖をされ、頭から血を流しています。

 えっ!頭、耳・・・獣耳??

 ウソ!猫耳娘!

 私は何も考えず娘に駆け寄りました。

 男に向かい「これこれ、これ以上殴るとこの娘死んでしまいますぞ!」

 娘はビクッビクッとケイレンを起こしています。

 娘に引っ掻かれたのか情けない顔の男は、ハッとして一瞬で青ざめ

「さっき買った奴隷だが、もう要らんご老人そなたに譲ろう、100ゼンで良い」


 何?奴隷?人身売買?あまりの事に思考が止まり、無意識のうちに小銀貨1枚男に渡します。


「よし!これで奴隷が死んでもお前のせいだぞ!!」

 言いながら男は、逃げるように立ち去って行きました。


(カメさん!速く!娘にジャンパー着せて!速く!)

 あっワトさん、確かに大勢の前で素っ裸は可哀想ですね。

(違う!速く!速く!!)「??」


 娘にジャンパーを掛けてやります。

 途端に娘がフワリと光ました。


(間に合った!良かった!)

(ねえカメさん、この世界奴隷保護法で理由なく殺すと罪に問われるのよ)

(・・・・・・)

(大勢の前で、男から奴隷を買ったでしょ危ない所だったの解るでしょ)

 なるほど男の捨て台詞、そう言う事だったんだ。

(もう、カメさんもっと気を付けてよ、ほんと目がはなせないんだから)

(じゃ、またね)

「・・・さて、この娘どうしよう」


 回りを取り巻いていた人々はすでに居なくなっていて、途方にくれる私だけ。

 娘を抱き抱え近くのベンチに座り、膝枕して娘が気付くのを待ちます。

 今は上着をしっかり着せてファスナーもとめています。娘の耳は紛れもなく猫耳です尻尾はダラリと力なく垂れています。

 前髪をかき分けると思いの外可愛い顔が現れました。

 髪は白、白猫だね、尾も、面白い・・・なんて。

 触れられたためかビクッと身を縮め逃げようとしています。

 でも、弱った体は思うようには動かない様子。


「気が付いた?もう大丈夫だよ」

「ニャニ?話す事出来るニョか?」

「信じられニャい」

「普通に会話できてると思うけど」

「今まで誰ともはニャせず困っていたのニャ」


 娘の話では漁のため釣りに海に出て、嵐にあい何日間も漂流しその内飲み水が無くなり釣った魚を生で食べ餓えと渇きをしのいでいたが、衰弱が激しくもうろうとした状態から気付くと檻の中だったそうです。


 恐ろしさを我慢して会う人に

 一生懸命話し掛けたそうですが、誰とも会話できなかったそうです。

 何日も檻の中ですごし、今朝さっきの男に引きずり出され、訳のわからない内に殴られ、ビックリして相手の顔を引っ掻く、激怒男に殴る蹴るされ今に至るそうです。


「話しはだいたい解った」

「私は鶴田 亀、カメと呼んでくれて良いですよ」

「私の名前はミメニャ」

「ミメニャちゃんか」

「違うミメニャ、ニャは口癖ニャ」

「へ?ミメちゃん?で良い?」

「そうニャ」

「ややこしいね」


「ミメちゃんはここに流れ着いてもうろうとしている所を奴隷として売られたようだね」

「私は奴隷ニャのか?」

「うん、それであの男から買い取ってミメちゃんを助けたと言う事」

「そうニャの?感謝するニャ」

「歩けそう?ミメちゃんの服を買いに行かなくっちゃ」

「服?そうニャ私裸で引き回されてとっても恥ずかしかったニャ」


(カメも歩けば棒に当たる)大変な拾い物してしまった、出来れば元の所へ還してあげたいと、じいちゃんは思うのでした。

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