第3話 じいちゃん町へ

 森から出るとすぐ町が見えました。

 門番らしき人が見え、向こうもこちらを不審そうに伺っています。


 こう言うときはおどおどしないで、明るく話し掛けること。

「今日わ、旅の者ですが町に入るにはどうすれば良いですか」


(旅だと?この門に来る・・・大森林から来たのか!怪しい!)

「普通に通って良いが、ご老人荷物を持っておらんようだが」


「収納庫をもっておりますので手ぶらの気まま旅です」


(収納?そんなの聞いた事ないぞ!)

「ほうそれは凄い!収納魔法使いか」

(このじいさんボケ老人?)

「何か出して見せてくれ、疑うわけじゃ無いが」


 しっかり疑われてる「さっき仕留めたホーンラビットです」角と毛皮を出して見せます「あれ?毛皮きれい」


(本当に出しやがった!毛皮も見事に仕上がってる?)

「ほう狩りの腕もたしかだな」

(見かけない老人だが・・・もしかして上級冒険者か?)

「通って良し」

「あ!待て!」


「はい、何でしょう」年の功そうそう慌てません

「肉は持っておらんか、あれば売ってはくれぬか」

「良いですよ、はいどうぞ」


(ホーンラビット?でかいな!)

「いや、一匹丸々は買えん、片モモ肉2000ゼンでどうだ」

「良いですよ、欲しいだけ切り取って下さい」

 門番は、ナイフを取り出し、手馴れた様子で切り取りました。


「思いの外大きかったので、ほい2500ゼンだ」

「良いのですか?」

「これでも安い位だ感謝する」


(変な老人だったな、フワフワして掴み所の無い、強そうににも見えん、見掛けに依らん実力者が、何をしに?)


 門番に混乱を起こさせたなど、つゆとも知れず、じいちゃんは進みます。


 少し小さめの銀貨25枚もらい町に入りました。

 平然と通り過ぎましたが、内心小躍りしたい気持ちで、足取りも軽く町並みを眺めました。「お金が手に入ったよお」

 2500ゼンは、日本円で5000円になることはワト神の完全会話のお陰で自然にわかりました。


 町並みは木造建築の平屋2階建てが殆どで、3階建てがちらほら見える、現代日本人が見ると貧しそうな家並みです。

 キョロキョロ眺めながら歩いていると、防具屋らしい店主に呼び掛けられました。

「もしもし、ご老人変わった防具ですね」

「少し見せてもらえませんか?」

 自分の服装を見直してみると、スニーカーにスラックス、セーターの上にジャンパー

 上等な服ではないが、大昔のヨーロッパ風の少し貧しそうな服装の人々の中では、いささか浮いた感じがします。


(カメさん)

「え?ワトさんですか」

(言い忘れてました、カメさんの服、破壊不可の掛かった特別品にしてます、それに癒し効果も絶対手放さないようにね)

(その服の効果でゴンさんとぶつかった時、即死を免れたのよ)

「はい、有り難うございます、ワトさんには凄く良くしてもらって」

(じゃ、またね今度ゆっくりお話ししましょ)


 カメさんはあまりピンと来ていないようですが、破壊不可の掛かった服がどれほど規格外の物か、この後ずっと汚れも傷みもなく暑さも寒さも防ぎ、回復効果まで付いた超便利グッズ、呑気なカメさん今後この服が原因でトラブルに遇わないことを祈ります。


「店主急ぐので今度暇な時にしてくれないか」

「そうですか、残念ですが今度是非お願いします」

「店主知ってたら教えてくれ、狩りをした肉とか買い取ってくれる所があるか?」

「それでしたら、この通りを真っ直ぐ行き左側に3階建ての建物、冒険者ギルドで買い取ってもらえます」

「冒険者ギルドか有り難う行ってみる」


 古ぼけた家並みに突然立派な3階建ての建物、おまけに大きく冒険者ギルドと看板があり迷うことなくたどり着きました。


 老人に怖いもの無し堂々と進み、受付嬢の前に行き。

「森で狩ったホーンラビットを売りたいのですがここで良いですか」

「はい、買い取らせて頂きます」

「ポイントカードはお持ちですか」

「へ?」首を振りながら、ポイントカード?何それ・・・。

「では発行します、無くても買い取りしますが、有ったほうがお得です」

 必要書類は名前を書くだけ、亀福は言いにくいみたいなので鶴田 亀と記入しておきました。

「ツルタ カメ様ですね、しばらくお待ち下さい」


 少し待つと名刺サイズの木の札を渡されました。

 裏にツルタ カメと書かれています、綺麗な文字ですが、木の板に手書きです。

「セコ!」


 ポイントカードの説明をさせて頂きます。

 カードには木、銅、銀、金その上に黒曜が有りますが普通の冒険者は持てません。

 木で1万ゼン買い取りで銅に昇格さらに100万ゼンで銀のカード、銀のカードで1億ゼン買い取りで金のカードに昇格します。

(1億ゼン?)

「この町に金のカード持ち居ますか?」

「残念ですが居りません、王都に行けば数名居られるそうです」

「このカードを持って隣の買い取り窓口へどうぞ」

 大きなカウンターのある窓口にカードとホーンラビット4体分の角と毛皮それに片足取ったホーンラビットの肉を出しました。

(あれ?やっぱり毛皮綺麗になってる)


 ゴツい顔した中年おやじが担当で

「空間魔法使いか!」

(何者だ!この老人、木の札初心者のはずだが?)

「毛皮も角も傷無しだな、4体分で8千ゼン肉は片足無いが大物なので1万ゼン合計1万8千ゼンでどうだ」

「それで良いです」

 小さい金貨1枚と大きい銀貨8枚手渡されました。

「よし、昇格して銅のカードになるぞ」

「買い取り金額証明書発行しておいた、受付窓口へ提出すれば良い」


 さっきの受付嬢に木の札と証明書を提出し、しばらく待つと

「カメ様お待たせしました」

「おめでとうございます銅のポイントカードです、裏の名前ご確認の上血を一滴カードに垂らして下さい」

「お!本格的じゃないか木の札ポイントカードとか、ガッカリしたがしっかりギルドカードじゃないか、うんうん」

「何かおっしゃいました?」

「いや独り言です気にしないで、プツリ」

 指の血をカードにたらし落ちた血はカードに吸いとられ一瞬カードが光ったように見えました。

「カード内のステイタスは本人のみ見ることができます」

 銅のカードに8千ゼン買い取り実績があります後99万2千ゼンで銀です頑張って下さい。


 にっこり笑った受付嬢は凄い美人だと言う事に今さら気付きました。

 やっぱり緊張してたのか、不甲斐ない。

 今手持ちの金2万500ゼンこれだけあれば良い宿に泊まる事が出来るでしょう。

「あのうおねえさん」

「はい何でしょう、自己紹介まだでしたね私はリムです」

「リムさんお勧めの美味い飯の食える宿在りますか」


 ギルドの裏通りにある「月の宿」と言う所を教えてもらい今日の宿にする事にします。


「いらっしゃいお食事ですか?お泊まりですか?」

「とりあえす3日泊まりたいのですが、いくらですか」

 3日で1500ゼン食事は朝100ゼン弁当100ゼン夕食300ゼンだそう

 今日の夕食含め2800ゼン支払いました。


「朝食は6から8刻夕食は17から19刻20刻からは酒場になります」

「お部屋は2階の2号室、ご案内します」

「今16刻半ですので後少しで夕食時間になります、ではごゆっくり」


 部屋は四畳半位ベッドと窓際に机と椅子、椅子に座り気になるステイタス確認です。

 ステイタス考えるだけで表示されます。

 なれかな?


 LV 2   HP 50   MP 50  力 100  速さ 100  魔力 100

 地球神の加護    不老   チャット

 ワト神の加護    身代り  完全読み書き会話

 アイテム      無限収納

 スキル       跳躍


 あれ?スキルが付いてる、ホーンラビットのスキルかな?

(ワトさん、今良いですか)

(カメさんだったら、いつでもOKよ)

(ホーンラビット偶然倒せたんですが、一匹なのに凄いことになってる)

(見てたわよ、カメさん本当面白い見ててあきないわ)

(イヤその見てたの)

(地球神のせいでカメさんホーンラビット、ゴブリン所かムクって言うウズラみたいな、鳥にさえ負ける最弱だったの)

(はいごもっともです)

(身代り使えば勝てるのに忘れてるのか、ちっとも使わないし)

(はあ・・・言われて見るとその通りです)

(カメさんよりホーンラビット何倍も強い、上手く仕留める事が出来たので目一杯取り込ませてあげたの)

(ワトさんのお陰だったんだ)

(これからも役に立つスキル取り込んであげる、頑張ってカメさん)


 ワトさんってずっと見守ってくれて、有難いけど神様の仕事とか大丈夫なんだろうか「そうだったポイントカード確認しておこう」カードを出して見たいと思っただけで文字が浮かんできます。


  ツルタ カメ 銅級  残り992000

 LV 2  HP 50  MP 50  

      力 100  速さ 100  魔力 100


 加護とかは出ないようになってる、これはもう見なくてもいいな。


 夕食は玄米ご飯に野菜と鳥肉の煮物、大きな鳥肉のステーキでした。

 肉は美味かったが、肝心のご飯は変な匂いと風味があり食べづらいものでした。

 おそらく保存の仕方が悪いためと精米してない事が原因でしょう。

 何とか美味しいご飯にならないものか・・・。

 そう言えば、子供の頃縁側でおばあちゃんが、闇米を一升瓶にいれて棒で突いて精米してたな。

 ※因みに闇米は、米穀通帳持って配給所で買う以外の方法で手に入れたお米の事です。


 気長に突けば私にも出きるかも、今度手頃なビンを手に入れて試してみるか。

 せっかくのお米美味しく食べないと!


 ベッドの寝心地悪くない!むしろ寝心地良い!

 子供の頃配給所に、米穀通帳持って米を買いに行き、「鶴田は食い過ぎ今月の配給分は無いぞ」と、販売を断られた事など取り止めの無い事、今では懐かしい思い出が頭を過り気持ち良い眠りにつくのでした。

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