第26話 じいちゃん巨人族が来た!

 侯爵領の朝

 日の出と共に、ツルタ市内は活気に満ちあふれて居ます。


 じいちゃんは、まだグッスリ眠ってます。

 年寄りの割に、朝寝坊なじいちゃんです。


 いつも通り、8刻半に声が掛かります。

「じいちゃん、起きて!」

 起こしに来るのは、決まってミメです。


 侯爵邸には、ララア、ケイト、ミメ、ルナ、それにタツノ。

 事務官として、エルナ、ルヒトが常駐しています。


 侯爵邸に隣接、棟続きにワトさんの住まい神殿が建てられました。


 9刻エグゼクティブ、ブレックファースト朝食付きの会議って意味です。

 じいちゃん此でも前世、某一流企業の部長職でした。


 いつもは、軽く報告を受けるだけが、今朝は紛失の件多発の、各種報告でかなり長引きました。


 10刻を少し過ぎて、事務室に向かいます。

 会議室には、既に多くの区長や代表者が詰めかけて居ました。


 報告の多くは、収穫前の農作物の消失、放牧中の家畜の減少についての物でした。


 ついに来たか!


 誰か、コポを呼んで来てくれ!

 コポが無理なら、コボルト族なら、誰でも良い!

 大急ぎ来るよう、伝えてくれ!


「タツノ、巨人族がチョッカイ掛けて来た!」

「主殿、誠か!」

「ああっ間違い無い」


「竜人族は人化のままジャングル開拓村に集合!

 本日を持って、最前線とする!!


 ラミア族アルケニー族は、町の運営陣以外を、交代で最前線援護!


 ルナ達は、市内全域防衛に当たれ!」


「ゴン!」

「何だ?カメ」


「ゴブリンの精鋭を集め、10小隊を作れ!

 5小隊ずつで、開拓村周辺を、昼夜交代警備してくれ!」


「わかった!すぐ取り掛かる!」


「主殿お呼びにつき、コポ参上致しました!」

 相変わらず、固いね!モコモコの縫いぐるみ。


「コポ、コボルトの中、最もステルスに長けた者何人居る?」

「自分を含め15人であります」


「全員出来るだけ、速やかに集めてくれ」


「あっコポ待った!」

「主殿、他に何か?」


「15人の内、加速出来ない者が居るか?」

「全員加速は、持って居るで有ります!」


「良かった!全員館前に集合、その後私と出発する」


「皆其々取り掛かってくれ!解散!」


「ミメ、私はワトさんに会って来る」

 言い残し棟続きの神殿、ワトさんの部屋に向かいます。


「ワトさん、今話しても良い?「」

「カメさんの話ほど、重要な事無いよ!」

「・・・はい・・・信者も大切にしてよ、ワト詣りの人達、凄い収入源って、俗っぽい話だけれど」


「カメさん巨人族の話でしょ!」

「そう、巨人族が悪さして来た」


「それでワトさんは、巨人族とも仲良くして欲しい?」



「難しい話なんだけど、巨人族って亜人じゃ無いの!

 私がワト界を管理するずっと前、1億年以上前に管理してた、神の末裔が今の巨人族なの」


「退化してしまって、原始人みたいだけどね」



「私的には、滅ぼしても良いかな?って思ってる。

 正直分かんない、会話も意志疎通出来るかも分からない者達だから」


「ワトさんらしく無いよ!いつも言ってる、全ての者が皆仲良く、でしょ!」


「それで、ワトさんにお願いが」

「何でも言って!!」


「今回の事に、役立つか分からんが物や人の鑑定、出来るようにならない?」


「出来るよ!簡単!チョイチョイと・・・はい出来上がり!」


「ありがとう!ワトさん良い知らせ、待ってて」



「あっカメさん、私もい・・・行っちゃった・・・」




 メンバー全員が、開拓村に集合しました。


 ジャングル開拓村は、ホミを村長にキサが村長補佐、ガルバニの4人、王都組53人にドワーフのルドフ、男性15人、女性45人、計60人の獣人達による、ジャングル開発の最前線です。


 其にしても、ホミ村は巨人族による被害が、皆無だそうで、

 油断したな!ホミ村が一番最初に被害が出ると思ってたのに。

 おそらく、獣人の優れた野性の感を怖れて、敬遠されたな。


 日が暮れます。


 深夜闇に紛れステルスを生かし誰にも気付かれず来襲するはず!


「コポ!コボルト達に巨人族の気配、何でも良い、集中して探れ!

 何か違和感感じたら、即報告しろ!」




 深夜11刻前、コポが小声で「来た!」と告げて来ました。

 聴力の良い、獣人にしか聞こえない、笛を吹きます!


 合図と共に、一斉に篝火が炊かれます!


 対処していた私達と違い、巨人族は光に目を眩ませ、立ち止まり硬直する3体。

 何れも6メートルはある、見上げる巨体に、木の表皮を叩いて鞣した腰箕を着けただけの裸男。


 先頭の巨人目掛け

「みがわり」

 ・・・?

「みがわり!!」

 ・・・何?・・・身代りが利かない!!


 巨人に対陣していた私を、巨人の腕が凪ぎ払います!

 巨大な手は轟音と共に、私を張り飛ばし、体はバウンドを繰返し、何処までも転がって行きました。


 意識を手放さないよう必死の思い

 !巨人族、先神の末裔か!!

 対処間違った・・・意識が飛んで・・・。


 し、っ、ぱ、い、し、た、・・・な・・・。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る