【番外編】

『ご縁があったら、またいつか』❶

 

 生まれつき、私は体が弱かった。


 心臓に重い病気があるとかで、しょっちゅう入退院を繰り返していて、学校にも中々通うことも出来なかった。そんなわけで、友達なんて全くと言っていいほどおらず、私はいつも一人で本を読んでいた。


 本は、私をどんな世界でも連れて行ってくれる。心臓に負担のかかる運動も、本の世界でなら自由に出来る。本の世界の住人たちは、私を歓迎してくれてすぐに友達になってくれる。



 本は友達。



 そんな言葉があるけれど、私の場合は比喩ではなく、本当の意味で『友達』だった。


 しかし、中学に入学してすぐのこと。




 私は余命2年の宣告を下された。




 医者の説明は難しくて、私にはよくわからなかった。……わからなかったけど、ただ一つだけ確かなのは、命の時間制限タイムリミットがハッキリと見えてきたってこと。



 もう長くない命。



 両親は必死に病院を巡って、私を助けようとしてくれた。しかし、どこへ行っても結果は同じ。余命2年は変わらない。




 死を目前にして、私は「生きる」とは何か、「命」とは何か、ずっと考えるようになった。



 なんで人は生きているんだろう。


 この地球は、なんのために在るのだろう。


 なぜ、私は若くして死ぬ運命に在る必要があったのだろう。



 しかし、どの疑問も考えれば考えるほど答えは出なくなり、ループにはまってしまう。


 だから、私はその答えを見つけるために今まで以上に本を読んだ。今度は、友達を作るためでも、本の世界に入り込むためでもない。


 残された短い時間を、どうやって過ごすべきか、考えるためだ。


 今までとは違い、伝記や哲学の本、文豪の本など難しい本をたくさん読んだ。時には、百歳まで生きた人のエッセイであったり、闘病生活を書いたノンフィクションの小説なども読んだ。



 読んで、読んで、読んで……。



 しかし、私が一番心にストンと落ちてきた本はそんな難しい本やノンフィクションなどではなかった。


 私と同い年の作家さんが、書いた小説。



 言葉の一つ一つが、私の魂を刺激した。この話は確かに作り物だ。しかし、そこに込められた思いとか、言葉の重みとか、そういうのは偽物じゃない。本物だった。


 本物の言葉ほど、心に刺さるものはない。



 私は両親にお願いをした。


色野いろのタクさんと、同じ中学に通わせて」






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