二日前


 浩介がこっちに帰ってくるまで、あと十日。カレンダーに印をつける。


 東北はまだ雪が残る地域もあるらしく、この前浩介に電話をしたら、雪かきの最中だとか言われた。雪のあまり降らないこの地域に住む私から見れば、雪かきなんて新鮮だ。


 今日は、本当は師匠の家に行く予定だった。しかし、昨日師匠から「明日、新刊がちょうど発売するよ」とメールが来たので、本屋さんに行って買うことにしたのだ。


 本屋さんに行くと、いつも二時間くらい出れなくなる。というのも、色んな本を立ち読みをしてしまうからだ。図書館だともっとひどい。五時間くらいはずっといてしまう。


 まあ、気にしたところで直らない(というか直せない)癖なので仕方ない。今日は暇なので、本屋さんで満喫しよう。

 ここの曲がり角を曲がれば、本屋さんだ。


 すると、後ろから救急車のサイレンが聞こえた。どうやら、住宅地で何かあったようだ。


 ちょっと気になったが、師匠の本を早く読みたかったので本屋に急いだ。





 救急車で運ばれているのが、誰か知らずに……。








 さっそく、本をゲットし師匠の家に報告しに行った。しかし、通行止めになっていて、人が集まっているのだ。工事かなんかだろうか? いや、人が集まるということは事件? どちらにせよ、人くらい通らせろよ! と心の中で文句言いつつ、そこにいた(たぶん)優しそうなおばあさんに聞いてみた。


「すみません。ここ、なんで通行止めになっているのですか?」

 と聞くと、おばあさんは早口で言った。


「通行止めじゃなくて、立ち入り禁止。そこの家で、殺人事件があったんですよ。犯人は窓ガラスを割って入ってきたようでね……」


「え、どの家?」




「あの白い家……たしか阿部って表札は書いてあったけど」








 手から力が抜けて、本が地面に落ちる。






 ゴト、と重い音がした。

 頭が真っ白になった。







 そのあとは、記憶がまったくない。














  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る