概要
それは呪いか──『運命』にエンゲージを
千年魔王が君臨していたあの時代。ついにファンドリアにも魔王の軍勢が差し向けられた。降伏すれば国が滅ぼされることはない、ファンドリアの姫は知っていた。あのグラシアのように。生贄の姫を魔王に差し出せばいい。姫一人と引き換えに、国は生き延び、民は日常を守られる。およそ迷いなどなかった。
姫君が自ら生け贄に名乗りを上げた。国民たちはそれに猛反発し、騎士も王家も姫君の説得にあたったが。
「希望は。絶やしてはなりません」
「あの恐ろしい魔物の軍勢を、美しいファンドリアを、私は見てしまったのです」
「すべてを灰にしていいはずがありません」
まるで演劇。クアルは冷めた目で熱く語る姫と息を潜め耳を傾ける民を見た。欠伸も出た。
(一体何を勝手に盛り上がってるんだか。悲劇のヒロインよろしく