新章
◾︎神の箱庭
デルタルド
「やあ、ご機嫌いかがかなボクの親友」
「ふふ、ちょうどいいところに来たね」
美しい花の咲き乱れる庭に面したテラスで彼はティータイムを楽しんでいるようだった。やってきた客人の分も用意されている。まるではじめから約束でもしていたかのように。
「お見通しといったところかい」
「それはこっちのセリフ」
向かい合って座る。同じ顔が二つ。声も背格好もうり二つ。それはもう鏡の世界。
「僕の創った世界がどうやら次のステージに進むみたいなんだ」
「待って、思い出すから。ええと確か、君の世界は魔力を持たない人間の世界だったよね。君が招待した九百九十九体の魔界人が好き勝手して、人間たちと争い事が続いて、最後には魔界人たちはみんな人間にやっつけられた」
「創世記まで遡るのか」
「し。黙って、順番に思い出すんだよ。彼ら魔界人が世界にマナを与え、最後の一体が呪いをかけた。人間が一人、生け贄になる。そう魔王化の呪い。マナから生まれる魔属たちの王。気狂いの王。人類の敵。しかし勇者が魔王を倒すと、その勇者が次の魔王へ──哀しいエピソードだったね」
「最後の魔王。千年魔王。彼が現れて物語は加速した」
「不敗の魔王が勇者を育て反逆した。運命を逆手にとって舵を握る。いかにも君好みだ」
「反逆の魔王が勇者に力を与えた」
「勇者の生まれ変わりは前回幼くして魔人に殺されてしまったね。僕が知ってるのはそこまでだよ」
「そう。やっとね。勇者は魔王に再会するんだ。反逆劇の続きをね」
「魔人はすべて排除され……魔王の呪いもここまでかな?」
ゆっくりとティーカップをソーサーに戻す。じっと目を見て首を傾けた。
「そう思うかい」
「浮かない顔だね。駄目だよ、神様は何があってもちゃんと全部黙って見届けるものさ」
「反逆の魔王には、次のプログラムコードが発動する。人間を殺せない勇者と、魔属を殺せない魔王。彼らに第三の敵を迎え撃つことができるのだろうか」
「心配いらないさ」
慰めているつもりなのか、角砂糖を三つも入れてスプーンを鳴らした。カップの中はいつも淹れたての紅茶が光ってなくならない。
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