第57話 変態パンツと全裸女子

「なんというか、さすがという他ないですよね」

 颯爽と三人に連れ去られた友梨佳ちゃんをお見送りした残留組(と勝手に言ってる)は各々散り散りになって繁華街へと消えていった。

 お友達少ないマンことななみはパーティの中で唯一まともに話せる相手がいなくなったこともあり、改札前で銅像のごとく微動だにしないままみんなが帰ってくるのを待っていました。

「しかし、私はなぜこの旅についてきてしまったのでしょうか」

 今更ながらに後悔しております。

 なぜって? それは昼間まで冷房の効いた部屋でダラダラして、少し冷える深夜に学校周辺を徘徊(全裸で)していたほうが新しいスポットの発見や、新しい仲間との遭遇もできたかもしれないからです。

 まぁ、部屋にいたところでその程度のことしかやることないので、結局面白くなるだろうこちら側に来てしまったんですけどね。

 しかし、本当にみんなが帰ってくるまで銅像してるのも面白くないので、私は私で面白スポット(露出スポットともいう)を探しにいこうと思います。

 慣れない地ですが、マッピング能力は高いほうなので迷子にはならないでしょう。



 さすがは慣れない地、この私ですら迷子に出来るとは褒めてあげましょう。

 しかし、どうしたものか。

 携帯電話は持ってますし、友梨佳ちゃんに迎えに来てもらうのもアリですが、どうせ今は修羅フィールドが発生してるでしょうし、集合時間が近くなったらメッセージだけ送っておきますか。

 ひとまず人気の一切ない路地裏から抜けて、大通りに出てどのあたりかだけでも把握しておかないと。

 と、そこで変なものが目についた。

 変なもの、というより変な人。私がいうのもなんだけれど、本当に意味わかんない人だった。

「何してるんですか?」

 私は思わず声をかけてしまった。

「……それは、私に話しかけるのかい?」

「あなたと私以外この空間にはいないので間違いようがないかと」

「すみません、妖精さんに話しかける人を知ってるもので」

 妖精さんですか、実在したらいいですね。

 まぁ、今の状態であればあなたも十分妖精さんみたいなものですが。

「どうしてあなたはパンツ一丁で仁王立ちしてるんですか?」

「どうして? と聞かれても、別に意味はないわ」

 意味はないんですね。意味わかんないです。

「強いて言えば、『協定違反』の罰って感じね」

 特に意味あった。どんどん意味が分かんなくなる。

「なんの協定の違反したのです?」

「休戦協定中なのに手を出そうとしたから」

 休戦協定ねぇ。

「まぁ、私にはあまり関係なさそうなので、ここいらで退散させていただきます」

 事情は一切聞かなかったけれど、これ確実に面倒なやつって七未しってるよ?

 距離置かないと絶対巻き込まれちゃう。

「いやしばし待ちたまえ」

「は?」

 いやマジでもう関わりたくないから一刻も早くここから立ち去りたいので話しかけないでください。

「君、友梨佳ちゃんのお友達だろう?」

 何で知ってるの?

「霧塚が調査したリストに載っていた」

 きりづかさんですか。知らない人の名前出されても分からないです。

「もうすぐここに来るだろうし、友梨佳ちゃんのところに案内してもらうといい」

 普段から友梨佳ちゃんに「あまり変態の言うことを聞いちゃだめですよ」って言われてるから、この変態パンツの言うことも聞かないでいいとは思うのですが、ここで少し待っていれば友梨佳ちゃんのもとへ案内してくれる人が現れるということであれば、時間もあるし、少し待ってやってもいいかな。

「それじゃ少し待ってみようかな」

 持っていた荷物を端に寄せ、いそいそと準備を行った。

「……君って変態なのかい?」

「は? そんなわけないじゃないですか」

「……」

 ほんの少し人気のない路地で全裸になった程度で変態名乗れるなら、苦労はしないですよ。



「……ひとまず事情は理解しましたわ」

 私が変態パンツと談笑していると、なんかよくわからん女性が話しかけてきた。

 パンツと全裸がいて最初混乱したようだが、事情を話すとすんなりと受け入れてくれた。

「私が霧塚沙綾子よ」

 私のこの状態を見て、名前を知って妙に納得してたのは、あらかじめ私の趣味も把握していたのだろう。抜かりないやつめ。

「で、友梨佳ちゃんのところに行きたいんでしたっけ? 私についてらっしゃいな」

「よろしくお願いいたします」

 丁寧な言葉(を頑張って使ってる風)につられて、こちらもなんだがかしこまってしまう。

「服は、着てくださいね」

「当り前じゃないですか」

 私は見せたいんじゃなくて見られるかもを楽しみたいので、決して大勢の人がいる場所で全裸になりたいとは思わないのだ。

 そこいらの露出バカと一緒にしてもらっては困る。

 そこ、覚えておいてよね!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る