ちょっと百合道しませんか?
和菓子屋和歌
第1話 女の子は好きですか?
女の子は好きですか?
私、
スカートをひらめかせ、きらきらの美しい髪を揺らし、慎ましやかでありながらも希望が詰まった胸部を隠し、きらめく笑顔を浮かべて歩くその姿は、もはや芸術と言っていいものでしょう。
何よりもあのつややかな足! そして綺麗な流線型を描くお尻! こんなに素晴らしいものに囲まれながら生きていける私は、もう幸せの絶頂と言っても過言ではないはず!
現在午前七時五十分。
私の前にはこの春から通うことになった全寮制の白百合の丘女子高に通う、可憐で華やかな少女たちで溢れていた。
やはりこの時間を狙って登校して良かった! 学校と寮が近いために、みんな比較的遅い時間に登校し、かつ事前調査によって最も多くの生徒が寮を出る時間を調べた甲斐があったというものだ。
そして何より、現在私一番のお気に入りであり、寮の隣人でもある通称メガネっ子こと
私、今死んでも後悔はない。
「? どうしたの友梨佳ちゃん。そんなに息を切らして。もしかして体調がすぐれないとか?」
「! いえいえ! 私はいつでも上も下も無駄に元気ですよ! ええ!」
いきなり深桜ちゃんに話しかけられ、動揺してしまう。
いかんいかん、朝からこんなに飛ばしていては、お昼には保健室で過ごすという大層残念な展開になってしまう。
今日は午後の授業に体育が入っている。わがクラスメイト達の艶やかな姿を見るまで、私は倒れるわけにはいかない、いかないのだ!
「そ、そう。ならいいのだけれど」
なんだかよくわからないテンションの私に苦笑するしかない深桜ちゃん。けれどその表情も大変よろしゅうものです! もう可愛すぎて食べちゃいたい! もちろん性的にです。はい。
「桜、綺麗ですね」
深桜ちゃんが上を向きながらそう言う。私もそれにつられて上を向いて、今度は普段の落ち着いたテンションで答える。
「そうだね。綺麗だね」
頭上から舞い散る桜の花びらと、清々しく晴れ渡った青空を見ながら、私たちは学校へと向かい歩いていく。
桜と美少女。うむ、大変いいものですな、これは。
「あなたたち! あと五分でホームルーム始まりますよ! 急ぎなさい!」
遠くに見える正門から、黒のきっちりしたスーツを着こなす教師が私たちを急かす。なんだよ、せっかくいい雰囲気だったのに。
「友梨佳ちゃん、ちょっと急ぎましょうか」
「!?」
そういって深桜ちゃんは私の手を取り、小走りで正門を目指す。
深桜ちゃん、これは私には刺激が強すぎる!
その後私たちは何とか遅刻せずに教室までたどり着くことが出来た。
その時、私の息が切れていたのは、決して深桜ちゃんの手の感触を十二分に堪能しながら軽くイッたわけではない。決して。
「そんで、本当はどうなのさ」
ホームルームが終わると、私の前にはよくよく見知った顔があった。
有栖之れい。幼少のころからの腐れ縁であり、なんだかんだで高校まで一緒になってしまった。髪の毛は常に短く、化粧っ気もほとんどない。しかし体育会系独特の引き締まった身体と、たわわに実った胸。やわらかくも弾力があるお尻や弱点である首を触った時のあの何とも言えないエロス溢れる吐息と、艶やかな声。お気に入りである深桜ちゃんに及ばないまでも、れいは十分素敵な女性である。
しかしどうあってもれいはれい。何をしてもどうしても私は性的興奮は覚えないわけで。きっとそれは幼少期の思い出を共有しているという理由が大きいだろう。だって裸体とか見慣れてるし、自慰行為も何度も見てしまったし、今更興奮しろとか無理ですわ。
まぁ、でも。れいを使いまくってた時期もありましたけどね。あくまで今の私はれいに興奮しないというだけで、必ずしもれいが興奮しない身体というわけでは、ないわけで…………はい、今もたまに使ってます。嘘ついてごめんなさい。
等々、そんなことは置いておいて。
今現在私たちが話題としているのは、今朝のことである。
あの学校一、いや県内一、いやいや日本一かわいいと私の中で話題沸騰超トレンドの深桜ちゃんと、なんと知り合って約一か月で手を繋いでしまうという超絶イベントを発生させてしまったことについて、私はれいに熱く、しかし事細かに委細詳細一つとして省略することなく情景描写も交えて語っていたのだった。
そして私が話し終えた瞬間、れいは先ほどの言葉を私に投げかけた。
「……本当はどうなのって、何が?」
「何がっていうか、ナニがって感じの話だけれど。だから、本当は手を繋いでた時興奮しすぎてイッたのかイッてないのかって訊いてんのさ」
はぐらかそうとした私に対して、れいは情け容赦なく逃げ場を奪い、私が朝から情けなくショーツを濡らしたのかを問うてくる。
しかし、これは親友のれいともいえど、私の大変デリカシーな部分であるため、どうにかして話題を逸らせないかと頭をフル回転させる。
「あっ、いやいいよ、答えなくても。そこまで考えて話題を逸らそうとしてるってことはイッたってことで間違いなさそうだし」
「ちょ、ちょっと! 勝手に決めないでよ!」
「だって、友梨佳イッてないときは即答するからさ、熟考するときは逆にイッたってことなのかなと思って」
くっ! さすがは長いこと私を見ているれいだ。私の態度一つですべてを把握してしまうとは。私なんて未だにれいが一体何をオカズに毎日いじいじしてるのか分からないというのに。
いや、まぁそんなこと知っても意味はないけれど。
「それで、友梨佳お気に入りの深桜さんは今どこに?」
れいは教室を見渡す。が、そこには深桜ちゃんの姿はなかった。
「深桜ちゃんなら多分一限目の数学の担当教師手伝いに行ってるんじゃない? 今日日直だし」
「あんたもしかして、深桜さんのことならなんでも把握してるのか?」
若干れいが引きながら訊いてくる。日直くらいなら誰でも知れる情報だし、今ので私が深桜ちゃんを追いかける変態ストーカー的な立ち位置にするのはやめてほしいわ。深桜ちゃんの変態ストーカーを名乗るには、まだまだ情報が足りないしね!
しっかし、この学校の女の子はレベルが高いですな。どこを見ても保養になるし、どこに行っても爽やかで清楚な香りが漂っているし、なにここ、天国なの? 地上に舞い降りた天使たちが集まる楽園なの? それなら私は差し詰め迷い込んだ羽虫という感じか。
自身を客観的に見て、彼女たちが持つ清廉潔白な雰囲気など皆無。むしろ私欲性欲旺盛な変態だった。酷いな私。
しかし、それはほれ、この手入れのされていないぼさっとした髪とか、色気の欠片も詰まってないすっとんとんな胸とか、冴えないというか普通過ぎて無個性な顔とか、そういう色物も魅力あるよね! というポジティブなんだかネガティブなんだか分からない思考回路でぎりぎり許されてる感あるし。って何言ってんだろ私。
つまるところ、かわいい女子がそこにいるんだから、オカズにしちゃっても構わないよねってことさね。私ってホント酷いな。
「……まぁ、友梨佳のそれは今に始まったことじゃないからなぁ。あんまりやり過ぎないようにな」
「はーい」
私が適当な調子で返事をすると、タイミングよくチャイムが鳴り、教室の前扉から数学教師と深桜ちゃんが入ってきた。
さぁ、今から地獄の数学タイムだ!
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