第25話 かんら家へようこそ!・後編
みなみちゃんとかんらちゃんと別れた私は、かんらちゃんの妹であるらんかちゃんの寝室(?)へと来ていた。
天蓋付のベッドなんて初めて見たので、ちょっとだけ興奮してます!
「それじゃ始めましょうか」
何を、って思ってらんかちゃんを見やると、なぜかそこには一糸まとわぬ姿のらんかちゃんが立っていた。
「んなっ!?」
私は思わずらんかちゃんから距離を取ろうと後ろへと下がると、そこにはベッドがあり、思い切り倒れこんでしまった。
「あら、さすがお姉ちゃんのお友達、話が早くて助かるわ」
その話が見えてこないので早いも遅いもないのですが。
「さぁ、早くその洋服を脱ぎなさい」
いやいや、脱いだら絶対に酷い目に遭わされる気がする。断固拒否!
「そういう嫌がる演出も嫌いじゃないわ」
演出じゃないし!
いやはや、かんらちゃんが言っていた事情がこれで判明しましたね。妹がこんなに変態な子だったら紹介もしたくなくなるよね。さらに言えば男装も嗜む子だからね。属性が付きすぎると逆に個性が無くなるよね。
様々なことを考えすぎたのか、私はいつの間にからんかちゃんに両手を掴まれ、身動きがほとんど取れない状態になってしまっていた。
「ふむふむ、嫌がる子を従順に躾けるっていうのも、中々いいものね」
私の友梨佳ちゃんのために取っておいた純潔が、こんなところで、こんな馬鹿馬鹿しい理由で散ってゆくなんて、悲しい。しかしなぜだろう、ちょっとばかり期待している私もいたりする。
こんな節操のない子だとは思ってなかったよ、私。
「洋服が邪魔ね」
かんらちゃんはそっけなく言うと無抵抗になってしまった私の身体を人形のように動かして洋服を脱がし始めた。
見事にすっぽんぽんになった私を見て、かんらちゃんはぼそりと「……いい」とだけ言って、再びベッドへと押し倒す。
「いい身体してるわ。やっぱりこの子で正解ね。胸もいい感じに育っているし、ウエストも引き締まっている。ほどよくお肉が乗った太ももとお尻なんて、本当に食べちゃいたいくらい」
じろじろと改めて見られると、恥ずかしいったらありゃしない。
「ああ、ごめんなさい。あなたにだけ恥ずかしい恰好をさせてしまって。私もすぐに脱ぐから」
期待していたわけではないが、ほんの少しの好奇心という奴だろう、彼女の身体は見てみたいと思っていた。
けれど、それは叶うことはなかった。
「リリィ!! 帰るよ!!」
ノックはおろか、扉をものすごい勢いで開けてきたのは、上の階でかんらちゃんといちゃこらしていたであろうみなみちゃんだった。一体彼女に何があったのかは知らないけれど、相当にご立腹である。
「ど、どうしたの? みなみちゃん」
一方の私は全裸であるが、とても冷静でいられた。こんなにも感情を露わにしている人の前では、混乱するよりもむしろ冷静になってしまう私はどこかおかしいのだろうか。実際ここからがいいところというところで闖入者が現れたらんかちゃんは、洋服を脱ぐ途中でフリーズしてしまっている。
「どうしたのは私も訊きたいけれど、今はそんなことよりも、さっさと帰り支度をするの!!」
その迫力ったら相当なもので、私はただ「はい」とだけ返事をしてそそくさと脱ぎ捨てられた洋服を拾い、ぱぱっと着替える。
「じゃ、帰るよ!」
終始意味が分からなかったが、とりあえず従っておかないと面倒になりかねない。
それに、みなみちゃんだって落ち着いたら事情を説明してくれるはずだから。
かんら家から出る途中、かんらちゃんがひっそりと私たちの様子を見ていたのに気づいた。友達が帰るのだから、挨拶くらいはしないとと思って出てきたはいいが、予想以上にみなみちゃんが怒っているので出るに出れないといった感じだ。
そんなかんらちゃんが私にだけ分かるように「ごめん」と言ったのは、気のせいではないはず。
ほんと、この子たちの間には何があったのか。
私の頭の中には疑問符だけが飛び交って、今夜はまともに眠れないかもしれない。
「何って、何もかもよ」
後日、朝のHRが始まる前にみなみちゃんにかんらちゃんの家で何があったのかを訊くと、そんな言葉が返ってきた。
さすがに日をまたげばちょっとは落ち着いたのか、今度は感情に任せず説明をしてくれた。
「リリィと別れた後、二人きりになったのかいいけれど、どうにも気まずい空気になってね、私はなんとかその空気を変えないとって思ったから、色々と話題を提供したの。そしたらかんらちゃんはどうしたことか、その場にいないはずのリリィの名前を五回も出したのよ!? 「リリィはどう思う?」とか「リリィなら」とか、私はそんなかんらちゃんに腹を立てて「そんなにリリィが好きなの?」って訊いたらさ、なんて言ったと思う? 「うん、大好き」だよ!? 怒って当然だよねまったく!」
……その話を私にするか。普通なら私以外の人にするんだと思うけれど。しかしそういった感情に関してみなみちゃんがいかに無意識なのか、自身で自覚していないのかがこういう場所で分かるのだ。それを私にしていい話だと気付かずに、はっきり全部話してしまうのだから。
こういうところが、まぁみなみちゃんの可愛いところなんだけれどね。
「でもさ、一方的に怒って帰ったでしょ? そのことでかんらちゃんが怒ってるかなって思ったらさ、反省したの。だから、今日かんらちゃんに会ったら謝ろうと思って」
「そうだね。それがいいよ」
私は小さくうなずくと、彼女を微笑みながら見つめた。
二人の大事な友人が、喧嘩をしているなんて私も嫌だから、この二人には早めに仲直りしてほしい。
そうこうしている内に、教室の後ろの扉からかんらちゃんが登校してきた。その姿をいち早く見つけると、みなみちゃんは颯爽と私の前を立ち去り、かんらちゃんにタックルする勢いで抱き着いた。
「ごめんねかんらちゃん!」
そんなみなみちゃんの様子に、かんらちゃんは一瞬びっくりした表情を浮かべるが、事情を察して「分かったから、抱き着かないでよ」と恥ずかしそうに言う。
その姿は、もう立派に恋人同士のそれだった。
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