第30話 私の愛は
結書深桜が付けた貞操帯によって、私の処女検査はあまり意味が無くなっているとは言っても、その貞操帯を付けた人物によって襲われていないとも限らないので、私は今日も今日とて深夜、いや既に早朝とも言えるような時間帯に、友梨佳ちゃんの股へと顔を突っ込んでいた。
この時期ではまだ寝汗をかくことはないだろうが、それでも布団の中は友梨佳ちゃん独特の匂いが充満していて、とても興奮する。夏場になればまた一層香ばしい匂いが私の鼻孔を刺激してくれるだろう。今から楽しみである。
「今日も異常なし、か」
私は一人呟くと、そのまま友梨佳ちゃんの股へといっそう顔を近づける。
ふむふむ、今日の匂いは薄めか。夜寝る前にトイレに行っていなかったから、そういった匂いもあまりしない。
最近は貞操帯のせいで友梨佳ちゃんが部屋で自慰をすることが少なくなった。だからか、ここ数日はとても濃い、私の性欲を刺激しまくる匂いが立ち込めていたのに。
これはどこかで自家発電していますね。
「もしや、あの女の部屋で?」
トイレに行くと偽り、結書深桜の見ている前であらぬ姿を見せているのでは?
いや、それは無いだろう。いかに友梨佳ちゃんが変態だとして、そこまで直接的な行為は理性が勝って拒否するはずだ。
それに、友梨佳ちゃんは自慰をする時は一人の時と言っていたはず。誰かに見られながらすることはないだろう。
ではどこで?
私は疑問に思って貞操帯へと手を伸ばすと、何やら違和感があった。
少しだけ貞操帯の締め付けが緩くなっているのだ。緩くなった貞操帯の隙間からは、ちょうど手が入れられる。なるほど、無意識的に手を伸ばしたりしていたり、使用している間に、このような隙間が出来たのか。そしてそれに気づいた友梨佳ちゃんは早速昨日どこかでせっせと自慰をしたと。
水臭い。私に言ってくれれば自慰のおかず、ないし手伝いはしたのに。
私はそう思って隙間に手を滑り込ませる。しかし思ったよりも手は奥に入らずに、友梨佳ちゃんの陰毛の感触しか味わえなかった。
しかし、ちょっと頑張ればクリちゃんには届くかも。
「……何してんの、あんた?」
「あらおはよう、友梨佳ちゃん」
なんと、起きてしまったではないか。
友梨佳ちゃんの性器に夢中になってしまったばかりに、友梨佳ちゃんが起きてしまうかもしれないという事態に意識が行っていなかった。不覚である。
けれど、私はその程度で諦める女ではない。
もう秘宝はすぐそこにあるのだ。後数センチで届く場所にあるのだ。だから
私は諦めるわけにはいかない!
「人の股に顔突っ込んでる上に、人の股を触ろうと必死になってる人間から、そんな爽やかな挨拶されても困るんだけど」
「まぁまぁ、あとちょっとの辛抱ですから」
できればお守り用の陰毛もいただきたいです。
「いや、別に私が怒ってないイコール触ってもいいってわけじゃないからね? 朝だからテンション低いだけだからね?」
「でも、私に弄られたくないですか? ここ」
「弄りたい時は自分で弄ります。なので早くその手を引っ込めてください」
「えー、最近全然弄ってないから、弄らせてくれてもいいじゃない」
「あれか、私がよく夢の中で気持ちいい思いをしてるのは、あんたが原因だったか」
朝からため息なんて、何か嫌な事でもあったんですかね?
「はいはい、朝から盛ってないで、ご飯の準備するよ」
「まだ四時なのに?」
「そんな時間に起こされたのか、私……」
起こしたくて起こしたわけじゃないんだけれど、結果的に起こしちゃったから、これだけは反省しておきます。次回からは起こさないようにしますね。
「…………何か嫌な事でも?」
「…………」
こういう時だけ察しが良いのはどうしてなんでしょうか。
友梨佳ちゃんって本当は私の事大好きなんじゃないのって、思ったりする。
「まぁ、それはそれ。これはこれ。ということで」
「……そう。なら私はもう一回寝るから、変な事しないようにね」
そう言って友梨佳ちゃんは再び夢の世界へと旅立った。相変わらず寝るの早くて私びっくり。
「変な事、ですか」
好きな子の股に触れることは変な事でしょうか。いいえ、普通の事です。
というわけで、私は懲りずに貞操帯の隙間から乙女の秘宝を目指すのです。
少し前、生徒会の面々や補佐たちを交えた会議が開かれた。
そこで私はあの変態企画をプレゼンして恥辱を受けたのだが、その描写はカットでお願いしたい。これは私の名誉を守ると同時に、とても過激で、一部不適切な内容が含まれていたからと説明しておこう。
なんでこう、みんな恥じらいというものを持っていないのでしょうか。直接的な言葉ではなく、もっとこう、オブラートやら餃子の皮に包んでもらいたい。出来れば第三者が聞いた時に、「普通の会議だな」って思えるくらいには、迂遠な言い方をするべきである。
誰にも聞かれていなかったから良かったものの、あれを聞かれていたら大惨事。今頃学校新聞やら校内放送で連日大騒ぎになっていただろう。
そんなこんなで、体育祭の準備は着々と進み、友梨佳ちゃんの周りには相変わらず変態が集まって、私たちはとても充実した毎日を送っている。
私が懸念していた姉妹に関しても、今のところ異常はない。友梨佳ちゃんには四六時中私か結書深桜のどちらかが付きまとっていたのも幸いしたのだろう。
しかし、気は抜けない。今まで平和だったからといって、明日も平和とは限らないのだ。
何よりもあと数日、休日を挟んだ来週には体育祭が控えているのだから。
そこで何かしらのアクションがあるかも知れない。
あるいは無いかも知れない。
けれど、何があったとしても私たちの愛の前には、どんな障害も障害ではない。それは愛を深め合うスパイスになるだけだ。
私が好きな、女の子。
変態的で、変態に好かれ、変態を集め、変態を自称する、普通の女の子。
若木友梨佳。
彼女が彼女である限り、彼女が彼女であればこそ、私は何も心配する事なく、ただ純粋に、愚直なまでの愛を注ぎ続ければいいだけなのだ。
だから、きっと何も心配することはない。不安になる事もない。悩み苦しむことはない。
私が私であるのなら、彼女が彼女でいるのなら。
私の愛は、私を裏切らない。
そう、私は信じている。
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