第40話 二日目(二)



 二日目最初の競技である「じゃんけん競争」が終わると、今度は組別による「玉つなぎ」という競技が始まった。

「玉つなぎ」と聞くと、私とか変態は卑猥なものを想像してしまいがちだが、決してそうではない。

 この競技はスタートから競技場所まで玉を運ぶ役、用意されたかごに玉を入れる役、かごで玉を所定の位置まで運ぶ役と、玉をつないで得点を稼ぐ競技なのだ。まぁ言ってしまえば玉入れみたいなもの。

 そしてこれは残念ながら全員参加の競技で、組ごとにスタートする。制限時間は5分、その間にどれだけの玉を運べるかを競う。

 さらに、この玉入れで重要なのは数ではなく重さという点が、通常の玉入れと大きく違ってくる箇所だった。

 運ばれてくる玉は三種類ある。一つは小さく数が稼げる小玉、二つ目は中くらいの大きさで、少し重い中玉、三つめがサッカーボール並みの大きさで、重さもある大玉。この三種類を運ぶ役の子たちが選別し、どれをどの程度運べば効率がいいのか考えたりするらしい。

 重くて大きい大玉をいっぱい運べば勝率は上がるだろうが、しかし大玉は重量があり、しかも一気に運べる数が限られてしまうので、逆に効率が悪くなるという点がある。しかしだからと言って小さな小玉や、中玉を大量に運んだとしても、その総重量はたかが知れているので、この配分が難しいと、運び役に選ばれた深桜ちゃんが言っていた。

「友梨佳さん、私が近くにいないからって、他の子に手を出したらぶっ殺しますからね」

「笑顔でそんなこと言えちゃう子は、ちょっと遠慮したいのですが……」

 その笑顔はもっと他のシチュエーションで見たかったよ。

「せっかく出来た友達が死ぬのは、ちょっと寂しい……」

「だから気配を消すな、後ろから声をかけるな、びっくりするから」

 例によって例のごとく七未が、私の陰に隠れるように佇んでいた。

「冗談ですよ、あともうちょっと友梨佳さんから離れてください七未ちゃん、さしますよ?」

 何をですかね?

「もうささってるから問題ない」

 何がですかね?

「……ねぇ、あなたたちはもう少し人の目を気にして会話するってことが出来ないの? 馬鹿なの?」

「あ、れいじゃん、どこ行ってたの探したよ」

「いや、私向こうの玉運び役だから、スタート位置が違うんだよ」

 あ、そうだった。れいは競技スペースから計量機のある場所まで玉を運ぶ役なので、スタート位置が若干異なる。

 ちなみに私たちの配役と言えば、深桜ちゃんが最初の運び役、私と七未が玉入れ役、そしてれいが最後の運び役である。この四人で一つの班となるわけだ。

 私たちの組は少人数で班を作り、その班で役を分けるという作戦をとっているので、数名の集団がどういうペースで玉を運んでいくのか、最後の作戦会議を開いていた。一方私たちは出たとこ勝負、その場の雰囲気でなんとなく必要そうな玉を運ぶという、お粗末極まりない作戦で臨むことにしていたりいなかったり。

 まぁね、この人たちにチームワークを期待してもって思うし、これくらい自由な方が良いと言えばいいのかもしれない。

「さて、前の組が終わりそうですよ、私たちもそろそろ準備した方が良いんじゃないですか」

 見れば最初に競技を開始した組の残り時間が三十秒になっていた。

「じゃあ私スタート位置に行くから」

「いってらっしゃーい」

 私たちはれいを見送ると、そそくさとスタート位置につく。

「まぁ、この競技は流して、私は早くお昼にしたいのですが」

 深桜ちゃんはもうお腹すいちゃったのかな?

「そうですね、友梨佳の丸裸が見放題のお昼が早く来ればいいのに……」

 丸裸になるなんて、私いつ言ったっけ? そんなこと言ったのなんてまるで記憶にないどころか、前世でも言ってないって断言できるレベル。

「ここで体育着を脱がしてあげてもいいですが」

「ダメですよ七未ちゃん。友梨佳さんの裸はひっそりと優雅に楽しむもので、大衆の見世物にするものではありませんから」

 違う、そうじゃない。心配のベクトルがそっちじゃないんだよ深桜ちゃん。

「じゃあこうしよう。この競技で私たちの組が勝ったら、友梨佳を抱こう」

「それはいいですね! でも、私以外の子に抱かれる友梨佳ちゃんは想像しただけで殺意が芽生えてしまうので、抱くのは私ですよ」

「それは構いませんが、それを私は横で見させてもらいますからね」

「それくらいならば構いませんよ。むしろ私たちの愛の極致を見せつけてあげたいところでしたので」

 だから、この子達は私を置いてきぼりにしすぎですよ。


 で、どうしてこの子達は私を景品にするのが好きなんでしょうね。

 ほんと、もうなんだかなぁ。


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