第36話 一日目(五)



 お弁当タイムをどうにか乗り切った(記憶が飛んでいますが)私は、現在深桜ちゃんと化粧室改めおトイレに来ている。

 まぁご存知の通り私はお弁当タイムに禁断のお漏らしを少々してしまったので、その処理というか、対処をしていたりするのです。

「うーん、思ったより出てないですね」

「そりゃあんな場所で本気で漏らしてたら恥ずかしくて外歩けないでしょ」

 ちょっと、ほんのちょっと出ただけですからね。本当ですよ、本当。

「じゃあ残りも出しちゃいましょうか」

「それはいいんだけれど……」

 この状況、分かるかなぁ。分からないだろうなぁ。女の子のトイレって個室じゃないですか。で、そこに一人で入って用を足すっていうのが基本じゃないですか。普段も深桜ちゃんに管理されてるとはいえ、扉の外で待機してたりするじゃないですか。どうして今日に限って中に入ってきてるんですかね。

「私のことは気にしないでください。してるところ見たいだけなので」

「いや、見られてたら出るものも出ないのですよ」

「友梨佳さんは私に見られたくないんですか?」

「見られるのが好きな子はあんまりいないんじゃ……」

 七未とかだったらきっと大喜びだろうけれど。

「でも、友梨佳さんは私のものじゃないですか。だったらどういう風に出すのかを確認しておかないといけないじゃないですか」

「ごめん、私には理解が出来ないよその理論は」

 変態って、ほんと思考回路が複雑怪奇だよなぁ。

「好きな人のことは何でも知っておきたいって事です」

「何でもの範囲が本当に何でもなのが変態が変態たる理由なのかね」

「まぁまぁ、いいから出してください。可能であればかけもらってもいいですよ」

「そのプレイは特殊過ぎるのでNGでお願いします」

 ……これでしないともっとエスカレートするだろうなぁ。でもこれでしたら今度は深桜ちゃんのするところを見せられる気がする。そしてその際に顔面にかけられる可能性が。

 回避不可能の即死トラップやめませんかね?

 でも、こういう時に限って誰かが邪魔してくれて、有耶無耶なまま終わるってことがあったりするから、とにかく時間を稼いでおこう。その間に誰かが来るのを期待するしか、もう逃げ道ないです。

「はい、観念して私の目の前で出してください。さぁさぁ」

 息が当たるほど近い距離で見なくてもいいじゃないですか。癖になりそうで怖いです。

 私は深桜ちゃんの言う通りに仕方なく(仕方なくですよ?)目の前で見られながらすることにした。その際、少しでも長引かせようと勢いを制御するというあがきをしよとしたが、それは深桜ちゃんの手によって阻まれる。具体的にはお腹をめっちゃ押されて両足を全開近くまで広げられた。

「いいですよー、すごい出てます」

 恥ずかしい! 死ぬほど恥ずかしい! 同級生の女の子におしっこシーン見られるのってこんなに恥ずかしいんだね! ちょっと興奮して別のものが出そうです。

「あ! いや、自分で拭くから! 拭かなくていいから!」

「ダメですよ、全部私に任せてくれないと」

 そんな風に優しくなでられたらもうやばい。すごいやばい。

「……あら? これはおしっこじゃないですよね? 友梨佳さん、まさかこの状況で興奮しちゃいました?」

「……」

 わざわざ言わんでも分かるでしょうが。

「いいですよ。初めてがこんな場所っていうのはちょっと私的にはいただけませんが、友梨佳さんがそこまで言うなら、ここでしましょうか」

「言ってない。私何も言ってない」

「いいえ、下のお口が雄弁に語ってますよ。私としたいって」

「言ってない……言ってない、と思いたい」

 身体は正直ですからね。いくら目の前の女の子が変態でも、女の子であることには変わりがないわけで。可愛い女の子と密室で二人きりっていうのは、私にとっては願ってもない状況ではあったりする。

 でも! 初めてがトイレは避けたい! いや、トイレでなければいいという訳でもないですよ?

「はーい、友梨佳さんが大好きな私の生パンティですよ。脱ぎたてほやほや、運動したから汗とかいっぱいですよ」

 欲しい! でも状況が状況なので素直に喜べない!

「被ります? それとも咥えます? あ、交換もいいですね」

 魅力的な選択肢が並ぶが、ここで即決してはいけない。焦らして焦らして、時間を稼いでいかないと救助が来ないのだ!

 というわけで私は他の選択肢を提示する。

「私は女の子のパンティを被ったり咥えたりはしないのです。パンティは穿くもの。つまり! 自分で穿いて「あの子と繋がってる!」を一人の時に堪能したいのです! だから、深桜ちゃんの提案には乗れないの!」

 完璧! これぞ勝利すべき黄金の聖剣を軍神が持った並みの必殺パターンですわ。何言ってるのか自分で分からなくなってきた。

 とりあえず、これで深桜ちゃんは熟考に入るはず。

「なら、今ここで私に見せてください」

「へっ?」

「だから、ここで友梨佳さんがオナニーするところ、見せてください」

 ……想・定・外!

 これはさすが変態と言わざるを得ない切り返しですね。基本的にオナニー、つまりは自慰は一人でするものという常識が、この変態という役職には通用しない。自慰とは誰かと交わることなく達する。ただその一点のみが共通の理解であり、そこに他者がいようが誰かに見られていようが関係が無い、というわけだ。

 いや、これは予知できた未来だ。

 確か午前私が女の子を撮ることに夢中だった時に、リリィと深桜ちゃんは互いが持っているおかず(つまりは私の私物だったり動画だったり)を二人で見てしようって言ってた、気がする。

 あー、やっちゃったなー。これ、しないと解放されないパターンでしょ。

「一人でするのは恥ずかしいなら、私も一緒にしますよ?」

「……あー」

 それは見たい。正直言ってすごく見たい。私の自慰は既にれいやらリリィやらに見られてるから正直ここで深桜ちゃんに見られてもあんまり恥ずかしくはないけれども、しかして深桜ちゃんの自慰は未だ誰も見た事がないのではないだろうか。

 好奇心が、私の中でにゃーにゃー言ってます。殺されなければいいですけれど。

「でも、ちょっと恥ずかしいですね。誰かの前でオナニーって」

 そういう感情は持っているんですね。なら私が今までどれだけの恥辱を受けてきたのか理解しているんでしょうね。理解していないでしょうね。

「友梨佳さんって、あんまり手入れされていない毛が好みなんですよね? だから私、最近剃ってないんですよ」

 深桜ちゃんはそう言って私の前で体育着をめくって見せる。そこには手入れのされていない半野生状態のジャングルが広がっていた。はっきり言って興奮します。

 深桜ちゃんも興奮しているのか、ちょっと息が荒い。狭い空間に二人の女子の豊潤な匂いが満ちていて、頭がくらくらします。

 これでは正常な判断が出来ない。どうしよう、もう私ここで散らしてもいいかもとか思っちゃってる。初めてはもっとロマンチックな場所だって思ってたんだけれどなぁ。

「…………二人とも、いい雰囲気の時に申し訳ないのですが」

「七未!? 一体いつから!?」

 覚悟を決めた私と、どう弄ろうかを考えていたであろう深桜ちゃんは、個室の上から顔を出した七未に心臓が跳ね上がるくらい驚いた。

「いやー結構最初の方からいたんですが、邪魔しちゃ悪いかなって思って、今まで黙ってたんですが、この様子だと時間かかるなって思って、声かけさせてもらいました」

「……ちっ」

 舌打ち怖いよ深桜ちゃん。

 ま、でも助かったは助かった。この後七未が深桜ちゃんに虐められるかもしれないけれど、それでも私が助かったから良しとしよう。

「で、七未はなんの用なの? まさかおしっこしに来ただけってわけじゃないよね」

「まぁ、さっきまで隣で大してたはしてたけど、それだけが目的ってわけじゃないよ」

 してたのかよ、しかも大かよ。

「大してる時ってさ、こう、ビーズをひり出す時の感覚に似てない? いいよねあれ」

「そんなことを言いに、わざわざ顔を出したんですか? 私たちの甘いひと時を邪魔したんですか? そうじゃないならさっさと要件を言ってください」

 怖いよ。せっかくのチャンスを邪魔されたからってそんなに怒る事ないじゃない深桜ちゃん。

「ああ、そうだった。緊急招集だって。もちろん深桜ちゃんだけだよ。なんか生徒会と補佐で色々と確認しておきたいことがあるんだってさ」

「……こんな時に……!」

 すごく悔しそうですね。まぁそれはそうか。招集がなければ私の処女(セカンドバージンだけれど)奪えたもんね。

「場所は?」

「生徒会室。すぐに来てだって」

「……分かりました」

「じゃあ私はこれで」

 七未、後でお礼を言っておこう。あと今夜あたりは夜道とかに気を付けてとも言っておかないと。

「ということで、私は行かないといけなくなりました。友梨佳さん、パンティは置いていくのでご自由にどうぞ」

「あ、はい」

 そう言い残して深桜ちゃんはトイレを後にした。

 残された私はというと、何日ぶり、下手をすれば一か月ぶりに貞操帯から解放され、本物の自由を手に入れたのだった。おまけに女の子の脱ぎたてパンティも付いてきた。

 こうなったらもうする事は一つしかないでしょ。

「……するか」

 私は深桜ちゃんのパンティをおかずに、こっそりと息を潜めるように自慰をするのだった。


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