第28話 変態企画会議
「うん、いいんじゃないかな。面白そうだし」
通ってしまった。
「面白そうって、この企画がですか?」
まだ骨組みすら完成していないような企画書ではあるが、まぁ却下されるだろうと思って手を抜いていたのに、まさかの面白そうときたか。
「まぁね、去年ほど過激じゃないのが残念だけれど、それでも十分盛り上がると思うよ」
去年もこんな企画を出した馬鹿がいるんですかそうですか。
私はかんらちゃんやみなみちゃんに変態チックな企画を託された翌日、至極簡単な書類を作成して放課後の早い時間に生徒会長であるみの子先輩に提出していた。ずいぶんとすんなり企画が通ったのには若干の戸惑いが無いわけでは無いが、しかしこの学校の特色を考えれば、ありえなくはない展開ではあったので、ちょっとばかり覚悟はしていたのが功を奏した。
「ちなみに、去年は何をしたんですか?」
「去年? えーっと、なんだっけな。内容がすごすぎて種目名覚えてないんだよね、誰も」
誰も、ですか。
誰も種目名を覚えていないようなくらい衝撃的で、けれど内容は忘れられないほどやばい種目というわけか。酷いな。
「でもこの企画書じゃ、具体的に何をするかが決まってないね」
そうなのだ。みの子先輩は具体的な種目内容を面白そうと言ったわけでは無く、単に小道具で薄手のTシャツとブルマ、種目に参加する生徒はノーパンノーブラという点だけを見て面白いと言ったのだ。私や私の周りも頭がおかしいほどに変態的な女の子が多いが、この生徒会長は頭一つ飛び出てると思う。
「具体的に何をするかは、その時はほとんど話していなかったので。とりあえずこういったものを使って何かやりたいということだけまとめてみただけです」
「そうなのか……。そうしたら種目の内容については、お友達と決めてきてくれないかな。生徒会や補佐で考えるのもいいけれど、反対意見を出されたくはないからね。このことは内々にということで」
「反対意見出るの分かってて黙っておくんですか」
「反対意見って言っても、別にやりたくないとかじゃないよ。あれは照れ隠しみたいなものじゃないかな」
絶対にやりたくないという意味での反対意見だと、私は思うのです。
「それに、私がやるって言ったら聞かないのはもう生徒会どころか、一年生以外の生徒や教師陣は知っているからね。そういう議論で時間を取られたくはないのさ」
パワーバランスどうなっているんですかねこの学校。教師陣弱くないですか。こんな人に実権握らせておいたら絶対に取り返しのつかないことになるんでは。
とまぁ、学校の闇を覗き見た気もしないでもないけれど、それについては考えない方向で。ほら、深淵を覗いたら深淵ちゃんに覗き返されちゃうし。
「じゃ、今週中に具体案を提出、よろしくね」
「分かりました」
って言っても、今日木曜日なんだけれど。
「というわけで、緊急会議はっじめっるよー」
そんなこんなが放課後にあったことをみなみちゃんとかんらちゃんに話すと、早速私たちは会議を開くことになった。
会議の場所に選んだのは、機密性の関係で私の部屋では行えないという事で、かんらちゃんみなみちゃんペアのお部屋と相成ったわけでありますが……。
「随分と質素な部屋だね」
この学校の寮は基本的に部屋替えが無いため、同じ部屋の子と相談して模様替えするのが当たり前である。しかし二人の部屋はあまりそれが見られない。私たちの愛の巣もあまり模様替えをしてはいないけれど、それでも壁紙や家具一式は取り変えてもらっている。そういう意味では二人の部屋は個性が無い。
まぁあれだ、人物像で既に個性が爆発しているから、部屋まで個性爆発だったらちょっと嫌だけれど。
「私もそう思ったんだけれどね、かんらがね、どうしてもファンシーな部屋にするって聞かなくて。それだと私の個性が発揮されないじゃない? だから折衷案として、内装はそのまま、小物だけ好きなものってことになったの」
そうですか。
でもどうだろうか。その小物に関しても若干かんらちゃん要素が勝っていなくもないような。あれか、惚れた弱みで押し切られているのか。天然で恋心満開させてるとこういう時に辛いのか。私も気を付けよう。
「まぁまぁ、部屋のことは置いておいて、早速会議を始めようじゃないかね」
「かんらちゃんは何故そんなにやる気なの?」
どっから出したのかホワイトボードまで用意されているし。
「せっかく私たちの独断と偏見で体育祭の一種目を決められるのだから、それは張り切らない方がおかしいでしょう」
「そうそう、まぁ私もまさか通るとは思っていなかったから、何も考えていないけれど」
「私も」
二人とも、自分の発言に対して無責任すぎやしませんかね? これで私一人で変態的な内容の種目を決めろって言われたら、私泣くぞ。
「でもざっくり大まかに大雑把な考えでいいのであれば、案は無くはない」
「ではどうぞ」
「手ブラでパン食い競争でしょ、ブルマをバトン替わりにしてリレー、パンツ限定の借り物競争もいいし、なんだったら脱衣リレーとかでアンカーは半裸で走るってのも大変よろしいのではないでしょうか」
私も相当の変態という自覚はあるが、こうまで予想を飛び越えた案を出されてはさすがに引く。なんだよ脱衣リレーって。まぁ面白そうだけれど。
「パンツ限定借り物競争のパンツは具体的にどの範囲までにするの? 教師に借りるとかはありなの?」
「各クラスから選出される実行委員が、着替えの最中にどんなパンツがあったかを記録しておいて、その中から多い順にお題に出せばいいんじゃない? もちろん先生に借りるのもあり」
「この中だと一番インパクトが無いのはパン食い競争だけれど、これはどういうルールにするの?」
「それに関してはおっぱいの大きさが一定以上の生徒を選んで、その生徒が揺らしながら走っているところを全校生徒で見ようという企画にするから、順位ではなくより揺らした子の勝ちにするのはどう?」
「その順位を決めるのは誰にする?」
「もちろんあの子だよ。ほら、同じ一年生の、おっぱいのサイズとか調べて先生に指導されたことのあるあの子」
「ああ、若木ちゃんね。確かにあの子が審査員なら身内びいきとか賄賂とかの不正は無くなるね」
「でしょ? で、脱衣リレーは脱ぐだけじゃ芸が無いから、借り物競争よろしく箱を用意したりして、そのお題で脱ぐもの、たまには着たり穿いたり被ったりさせれば、一層面白くなると思うの」
「だったらブルマリレーは自分から脱ぐんじゃなくて、次に走る人が脱がせるとかかな。それだったら足の速さなんかもあまり関係が無くなってくるし」
「そうだね。それがいいと思うよ」
こいつら、何も考えてないとか言っておいてよくここまでの案を出せるな。尊敬を通り越して狂気を感じる。
「リリィはどう思う?」
ここで振ってくるか。
「私は…………そうだね。パン食うくらいなら、いっそパンツ食い競争にしちゃえばいいんじゃないかな? それと脱衣リレーは最初に走る人が既に下着とかでもいいと思うし。あとあれ、ブルマリレーなんかブルマ以外いらないでしょ」
新しい案は出せなかったけれど、まぁそんなものでしょう。これ以上変態的な競技増やされても困るし、今出てる案の補強程度で勘弁してほしいです。
「……リリィもなんだかんだ言ってノリノリだよね」
「そうだね、流石の私もパンツ食わせるまでは思いつかなかった」
「あれ!? 私そんな変なこと言った!? 二人の変態意見よりはましだと思うんだけれど!?」
「いや、リリィも十分変態。流石我が学校の痴態三銃士!」
「私そんな括りに入った覚えはない!」
「ほんと、さすがこの学校が誇る変態レベルファイブですわ」
「能力者になった覚えもありません!」
たかだかパンツ食うとか、服なんていらないって言っただけでこの言われようはあんまりだと思うの。
「それで、今出た種目全部出来るの?」
かんらちゃんのハイテンションからいつものテンションへの切り替えが早すぎてちょっと私困る。
「えっとね……会長が言うには、二種目ないし三種目くらいなら十分枠は取れるって言ってたから、多分大丈夫」
やるかどうかはこの際置いておいてだが。
「余枠がそれだけあるという事は、つまり生徒会側でも何かしらの目玉競技を考えてたってことかな」
「そうじゃない。生徒会長の口ぶりから察するに、毎年恒例みたいなものらしいし」
毎年恒例かどうかはさておくとしてはだ。毎年私たちみたいな変態が、変態の為だけの、変態的な競技を考えていたというところに驚くべきではないだろうか。
どんだけ変態多いんだよこの学校。なんなの、この学校の合格基準は変態かどうかなの? だったら私もばっちり変態って見抜かれてたって事じゃないですか。親に自慰の現場を見られるより恥ずかしいですよそれは。
「そうだ。もうこれだけ変態的な内容にするならさ、もう思い切って自分の自慰をみんなに見てもらって、美しさや艶めかしさなんかで競うのはどう?」
「かんらちゃん、それは超えてはならない境界線の向こう側だよ」
公開オナニーとかもはや地獄でしかない。というか見られてもいいなんて人いないだろ。参加する生徒を募るところから無理難題。
「まぁまぁ、一応言ってみてさ、ダメだったらそれでってことで」
かんらちゃん、その目は期待している目だよ。そんなにすんなりと通るほど世の中甘くはないよ。これが通ったら私は生徒会長の倫理観を疑わなければならなくなってしまう。いや今も若干疑ってはいるけれど。
「……ま、今日の内容をざっと精査して仮案として提出しておくよ」
白紙になればいいのにと思ってることは内緒です。
「じゃあ今日はこれにて解散ですね」
「明日が楽しみだね!!」
色んな意味で楽しみですね、ほんと。
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