第47話 はじまりの深淵
きれいに並んだ指。
柔らかな曲線を描く足。
弾力と神秘を含んだ臀部。
程よく肉を纏った腰。
夢と希望が詰まった胸部。
白く陶器を彷彿とさせる腕。
神によって形作られた完全無欠なるモノ、それが女の子。
しかし、神は愚かにも外郭のみを完璧に作りすぎてしまい、中身に詰まるものをいい加減に作ってしまった。
でなければあんな、怪物クラスの変態が生まれるわけがない。
間違いなく、設計ミスと言える。
けれど、こうとも言える。
不完全性を内包するが故、ことごとくの可能性を秘めた存在、と。
都合の良い妄想だとは、自分でも思っている。
というか、そうでなければやっていられないだろう。
この状況は。
「さて、順番も決まったことですし、ちゃっちゃとやってしまいましょう」
耳栓を外され、深桜ちゃんの少しだけ不機嫌な声が聞こえたかと思うと、両腕をつかまれて引きずられる形で連行され、椅子に足を縛り付けられた。
視界のみならず足も封じられてしまえば、もう私に逃走の可能性はなくなってしまったというわけか。
まぁ、この場合逃走後のリスクの方が遥かに高いので、そんな無謀なことはしないけれどね。
「それでは順番に友梨佳ちゃんの前に立って、三十秒ほど胸を触らせてください。胸以外を触らせる、時間オーバーなどのルールを守らない人は、友梨佳ちゃんと優勝者がイチャコラする目の前で路上公開オナニーしてもらいますので、ご了承くださいませ」
なんて恐ろしい罰を与えようとしてるんだ七未のやつは。
しかも自分はそれを破ったところで、むしろご褒美になっちゃうとかいうガバガバシステムじゃないか。
「じゃあ一人目準備お願いしますねー」
そう言い残して七未は私から遠ざかると、入れ替わるように誰かが私へと近づいてきた。
これで最初は七未ではないことが分かってしまうが、まぁ誰がどの順番で来たところで私のやるべきことは決まっている。
かかってこいやぁ! と内心やけくそ気味になりながらも、超合法的に年頃の娘たちの成長途中であるが故の瑞々しくも豊かに実る秘められた果実を堪能できるのです。これが喜ばずにいられるかってことですよ!
そうこうしている内に私の腕を誰かが掴み、乙女の麗らかな双丘へと私を誘ってくれる。
一人目は非常に控えめな子であった。丘というよりも斜面に近いだろうか。
しかしそれ故に全てを私の手で包み込んであげている感覚がたまらなく私を興奮させる。
控えめだからといって主張しないわけではない。ひっそりと、ただし乙女の片想いのように慎ましさが宿った主張が、またなんとも言えない感情となって私に流れ込んでくる。
結論「聖女のごとき小聖丘」
一人目が終わり、興奮冷めやらぬまま二人目へと、私の手は誘われる。
今度の子はそれなりの大きさであった。例えるならば小型ピラミッド。
しかしピラミッドのように固く頑丈というわけではなく、むしろ抱き心地の良い枕のようであり、柔らかな日差しに包まれた休日の午後を思わせる安心感が、私の手のひらを通して伝わってくる。
押せば沈み、引けば吸い付いてくる。私の手が触れているはずなのに、私の手が触れられているかのような錯覚に陥るほどの弾力と吸着性を兼ね備えた、まさに至高の二振りといえよう。
結論「唯二無三の至宝丘」
三人目はどこか落ち着きがないという印象が最初にきた。
そして前の二人より確実に触らせ方がエロティックに特化していて、普段からどう触ったら一番自分の魅力が伝わるかを客観的に観察し、最大限相手に伝える努力を惜しまない、まさに努力型おっぱいの頂点と言えよう。
大きさで言えば前の二人より遥かに劣るが、そういった見えない努力が詰まっていることが、一揉みしただけで分かってしまう。
素直に触っていてすごく気持ちがよい。
結論「今は小さき理想丘」
四人目ともなると、さすがに私も慣れてきたので、足音が近づいてくると同時に乙女の果実へと自然に手が伸びるようになった。
私はこの瞬間、視覚ではなく”ぱい覚”という新しい感覚器官によって、五感を封じられてもおっぱいを見つけ出すことができる能力を手に入れたのだ。
さておき四人目である。
なんだかとてつもなく安心感があるというか、安定感があるというか、とてつもなく抽象的で申し訳ないが、おっぱいといったらこれだよねー、っていう、一種のふるさと的感覚が強かった。
あたたかく抱きしめられたように、どこまでも包んでくれる優しさ。
原点にして頂点。おっぱいの中のおっぱい。
結論「総ての原初丘」
五人目はなんか大きかった。
さっきまであーだこーだ言ってたけれど、そのすべてを「大きい」というただ一点のみで覆さんとばかりに、その大きさを前面に押し出してくる。
大は小を兼ねるというが、大が小を呑み込まんとしているようで、少し恐怖を感じてしまう。
けれど、精いっぱい私に喜んでもらおうと必死になって触らせてくるあたり、どこか憎めない押し付けに思えた。
好きなものに、好きな私を、好きなだけ、好きなように、好きにさせる。
おっぱいには夢と希望が詰まっている。
私はそう思っていたけれど、もう一つあることを忘れていたのかもしれない。
おっぱいには、愛も詰まっている。
溢れるほど、押し隠せない量が、そこには詰まっていた。
結論「狂気の愛情丘」
さて、ここで私のおっぱいテイスティングが終了するかと思いきや、足音が一つ近づいてきて、私の手を取った。
おかしい、このバカげたおっぱいテイスティングの出場者は五人だったはず。
七未。桔梗ちゃん。ロリコン。リリィ。深桜ちゃん。
これで全部のはずだ。というかこんな狂人たちと私を巡って競おうだなんて考える奴は存在してはいけない気がするのだ。
一体誰だ……。
そんな私の疑問や不安は、その感触によってすべて晴れた。
そうか、そうだったな。これが私の初めての感情で、私の初めての興奮だったかもしれない。
慎ましやかではあり、主張はあまりなく。
至高でありながら、日常にひっそり咲いた花のような。
努力を積み重ねながらも、一切を覆い隠し。
優しさと厳しさを兼ね備えたような。
それでいて、深く、深く、深淵のごとく、私を離さなかった。
結論「最初の深淵丘」
この日を境に、きっといつもの日常が生ぬるい地獄であったと感じるほど、凄まじき地獄の日々が蘇ってくるのだろうと、私は頭の端で確信していた。
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