第48話 密室リンク
体育祭中にも関わらずこうしておっぱい選手権なんて開いてる変態(精鋭)が、なぜ教師たちに目を付けられていないと思っていたのか。
結果発表を行う前に、当然のごとく私たちは連行されてしまい、こうして個別で反省文を書かされている。
ちなみに私たちが出る予定だった種目はすんなりと代役が立てられ、何事もなく進行していた。こういう事態には学校側も慣れているということだろうか。こうなる前にもっとすることあっただろうに。試験の際に変態度チェックの導入とか。
いやしかし、この反省文って何書けばいいんだろうか。
あれか? 同級生のおっぱいを野外で揉んでしまいすみませんでしたって書けばいいのか? それとも目隠しという変態的な格好で長時間股を濡らしてしまってすみませんでしたってか? だめだ、どっちも反省しているようには全然見えんな。
まぁ、体育祭中にふざけて申し訳ありませんって無難に書いておけばいいか。
「……私はな、この学校に来て5年目になるんだ」
鉛筆ちゃんと白紙ちゃんとの濃厚なキッスを演出していた私に、監視役の教師が声をかけてくる。
「反省文書いてね」から今の今まで沈黙だったのに、どうしてこのタイミングで話しかけてくるのか。
「毎回イベント事になるとな、君たちみたいにやらかす子たちがいるんだよ」
だろうねぇ。もう実行委員会が種目として設定しちゃうくらいだしね。
そもそもこの教師何歳くらいなのだろうか。見た目がもう同級生なのだが。
「教師も女性しかいないとはいえ、と年頃の女の子が無暗に素肌をさらすのはいかがかと、私は思うんだ」
デスヨネー。私もそう思います。
しかし、私は別に好き好んで肌を露出させているわけでは決してないことをご理解いただきたい。
私は主に仕方なく、不可抗力で、強制的に、脱がされていることが圧倒的に多いのだ!(と、私は思っている)
「本当に……年頃の女の子のすべすべした肌とか見せられる私の身にもなってみなさい」
先生……そんなにお年を召している雰囲気ないけれど、いろいろお悩み申しているのか……。
「襲いたくなっちゃうじゃん!!」
「こいつも変態だった」
生徒が変態なら教師も変態とは、もうこの学校変態養成学校って名前にしない?
「でも私は教師という立場上生徒を襲うわけにはいかないのです」
「捕まるからね、普通に犯罪ですから」
「でも、でもね! それを録画、保存して個人で使用する分には問題ないと思うの!」
「問題しかねぇよ。さっさと削除しないと本当に捕まりますよ」
節度ある変態行動を心がけましょうね。
そうしないと普通に犯罪行為になってしまうのが、変態行為というものです。
というか、節度ある変態行動ってなんやねん。
「だって私も女の子とイチャイチャしたいもん! おっぱいに顔うずめたり、お股ぺろぺろしたいもん!」
「成人済みの女の子としてください」
「そこはほら! 若い女の子がいいじゃん! 年上のお姉さんもいいけどさ! やっぱり若くて年下の女の子とも一度はしてみたいじゃん!」
「それは表に出していい願望ではありません。死ぬまで内に秘めていてください」
「密室……二人きり……目の前には若い女の子……防犯カメラなし……私の教師としての信頼度はカンスト……カメラで撮影して口封じ……ふむふむ」
やばいでしょ、この呟きを目の前でしちゃうとか絶対やばいやつでしょ。
なにちゃっかり『カメラで撮影して口封じ』とか言っちゃってるのさ。一番教師が口にしちゃいけない言葉でしょ。
あとこの教師が普段はめちゃくちゃ真面目にお仕事してることが判明いたしました。
まぁ、普段から女の子とイチャイチャしたいなんて言ってたら今この場を任せてもらえてないだろうし。
裏を返せばこういう事態を想定して普段から真面目にお仕事してたとも言えなくないので、お仕事の動機が不純すぎてやっぱり教師とは到底思えないです。
「ねぇ、若木さん。反省文書かなくていいから、先生とイチャイチャしない?」
「反省文書きますね」
「ノータイムで拒否! でもなんかいい!」
まじ変態じゃん。もう変態じゃん。ずっと変態じゃん。もうさっさと反省文書いて早くこの変態との密室を去らねば私の今後が地獄待ったなしな予感がする。
「じゃあパンツで妥協します! ね! いいでしょパンツくらい!」
「ダメでしょ」
どうしてパンツはいいと思ったのか。
「いつも体育の時間に更衣室に忍び込んではワイシャツ嗅ぐくらいしかしない善良な私にご褒美としてそれくらいあってもいい気がするの!」
「なんてことしとんねん」
ギルティでしょもうこの人。
「ちょっと大きなロッカーに入って着替えを覗くのも何回かしたけど! そこで気分が乗ってびちょびちょにしちゃったこともあったけど! でも一度だって襲ったり脅したりしてないんだよ! えらいでしょ!」
「もう何もえらくないし威厳もくそもないな」
こいつのおかげでもう他の先生もそういうこと考えてるんじゃないかって勘ぐっちゃうじゃん。
「あ、反省文書けたのでもう行きますね」
そうこうしているうちに私は反省文を見事に書き上げたので、ささっと席を立って部屋から出ようと試みる。
「反省文? どこにあるの?」
「えっ、そこに――」
私は振り返り、机の上を指さした。
が、そこには私がさっきまで必死に書いた反省文はなく、汚れ一つないきれいな用紙が置かれていた。
「貴様、私が書いた反省文どこにやった?」
「何言ってるの? あなたまだ何も書いてなかったじゃない」
目が怖い。有無を言わさないその視線がめっちゃ怖い。
若い女の子と二人きりの空間を少しでも長く味わいたいという、教師にあるまじき邪な考えに支配されすぎて、私が書いた反省文をなかったことにするのに躊躇なさすぎでしょ。
「先生……そういうのよくないと思います」
「反省文書くまでどこにも行っちゃだめよ。もちろん、お手洗いも許さないから。するならそこにあるバケツにお願いね」
「人間としての尊厳すら奪いますか」
普段から人間扱いされていない私ではありますが、さすがにそれは躊躇いますからね。
躊躇うだけで、普通にやれと言われればやりますけど。
「大丈夫よ、先生が責任をもって処理しますから」
「どう処理するおつもりなんですかね」
小ならまだしも、大とかもう隠せないでしょ。
「もちろん、コレクションとして大事に保管するわ」
「私は今とんでもない化け物を目にしています」
こいつ本当にどっか飛ばされないかな。いや、他の学校で被害に遭われる生徒がかわいそうで仕方ないので、是非とも塀の中で一生を過ごしていただきたい。
あれ? でもそうなったら一日中女の子といれてこの人にとっては天国なのか?
そうなるともう無人島に放置するしかなくなるんですが。どうしようもないなこの人。
「私だってそんな趣味ないから、本当にコレクションとして保管するだけよ? それを舐めたり食べたりしないし」
「それはちょっと頭をよぎったけれど、本当に考える人がいるなんて思いたくないです、はい」
まぁ、お互い理解している同士ならいいけどさ。
「ほら、早く反省文書かないと体育祭中ずっとここにいることになるよ? 私は大歓迎だけど」
「私的には絶対的に避けたい状況なので、速攻で書きますね」
私が笑顔で言うと、先生は気持ち悪いくらい満面の笑みを返してくれた。
なんというか、直接的に手を出してこない分いつも相手してる奴らよりかはマシなのかもしれない。
「うふふ、若い女の子と一緒……ずっと一緒……一緒の空気吸ってる……」
やっぱり変態度では同列だからマシでも何でもないな。
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