第49話 豚とパンツと私とお尻
「あら、遅かったじゃない豚」
「あれだけの修羅場を乗り越えた後の労いの言葉が豚は、さすがの私もいただけないです」
「豚が豚って呼ばれていただけないなんて、本当に豚の認識が足りないわねこの豚」
「豚の認識……私って人の認識では生かされないの」
地獄のような密室で反省文を一生分書かされたと言っても過言ではない私を出迎えてくれたのは、ロリコンのそんな言葉だった。
「はぁ、さっさと妹と妹の友達のところに行きたいっていうのに、なんでこんな豚の世話をしないといけないのよ」
「いやホント何故に待っていたのでしょうか」
さっさとグラウンドに戻ればよかったのでは? 私のような(あなたにとっては)ババア待ってるなんて、ロリコンの名が泣きますよ?
「ペア組めって言われたのよ」
「なんのですか?」
自然と敬語になってるのはきっと豚の認識が芽生えてきたからかも。鳴き声で意思表示するようになったらもう元の生活に戻れないので野生に帰りますね。
「争奪戦のペアですよ。勝手に決められてて私もさっき知ったのよ」
「争奪戦?」
誰の貞操を奪い合うの?
「そう、全生徒参加型競技、パンツ
「……」
あまりの競技名に、さすがの私も引きましたよ。
「全生徒参加型競技”パンツ争奪戦”のペアがまさかロリk、失礼、ご主人様となんて、まさに運命ってやつですかね」
「小さい子以外との運命なんて全部靴底にへばり付いたガム以下の代物だわ」
ロリコン過激派は言うことが違うなぁ。
「さて、そろそろ競技開始の合図がくるわよ」
ロリコンがそう言った直後に校内放送が流れた。
「これより、全生徒参加型競技”パンツ争奪戦”を開始いたします。全生徒はその場で体操着のズボンを脱いでください。繰り返します……」
これを校内放送で流す学校って相当やばいって気づこうぜ。もう手遅れだろうけど。
「ちなみにこの競技で一位になると、学校側が用意可能なものの範囲で何でももらえるそうよ」
「夢のある話ですね」
「学校が用意可能なものの範囲には、生徒も含まれてるって噂なんだけど」
「全力で一位を取りに来そうな輩が何名か浮かび上がりましたね、いま」
かくいう私も一位を狙っていきたいとこの一瞬で思ってしまった。
しかし、スペックからして優秀な変態が多いこの学校で、平凡な私が一位を取るのは奇跡を連発していかないと無理だろう。
この超絶ロリコンクソご主人さまがいかに高スペックだとしても、リリィとかれいには及ばないだろう。
しかし全校生徒が参加している以上、二年や三年の先輩たちも参加しているわけで。
そうなってくるとまさに群雄割拠、この学校にはまさに変態の申し子ともいうべき人材がわんさかいるのだ。
これはまさにサバイバル。そして争奪戦といっても過言ではなかった。
「あとは副賞というわけではないらしいですが、奪ったパンツは持ち帰っていいらしいですよ」
「絶対に負けられない戦いが、ここにはある!」
やる気満々意気揚々。それは私にとってある種の活性剤、やる気マックスゲージで今ならニチアサ枠で魔法少女やらプリティできゅあきゅあになれる気がする。
「全校生徒参加型競技”パンツ争奪戦”の準備が整いましたので、これより競技を開始いたします。繰り返します、これより競技を開始いたします。各員、好きな人のパンツを取るでもよし、片っ端からかわいい子のパンツを収集するでもよし、好きにパンツを集めてください」
この世で一番低俗な校内放送だろこれ。
好きにパンツを集めてくださいってなんだよ。好きにパンツ集められるなんて天国かよ。普通の人間ならこの時点でもう「あ、この学校辞めよ」ってなるわ。まぁこの学校に通ってる奴で普通な奴いないと思うけど。
「さて、と」
校内放送が終わると、校舎のいたるところから殴り合いでもしてるのかと勘違いするほどの破壊音が聞こえてくる。
どんだけ本気でパンツ奪い合ってるんだよ。もう怖いよ。
あとロリコンが普通に私を椅子にしてリラックスしてるのゆるせない。
「どうしようかしらね」
「どうしうようって、せっかく美少女のパンツもらい放題なんだから、たくさんコレクションしましょうよ」
「1位になるだけなら、人が少なくなってから動けば確実よね。消耗もしないし」
「やべぇ、私の声がまるで聞こえてないように話し進めてやがる」
私としては是非ともゲットしておきたいパンツがいくつかあったりするのだが、この状況では動こうにも動けない。
さてどうしようかと思案していると、ロリコンはいきなり私のお尻を叩いた。
「あふん!!」
思わず声を出してしまった。
「とりあえず安全な場所で作戦を立てるわ。空き教室に入りなさい」
「イエス、マム」
「豚は許可があるまで人語を話すな」
再び叩かれる私のかわいいお尻ちゃん。ペチンといい音が出たので思わず「イエス!」と口走ってしまって、再び叩かれてしまった。
このまま叩かれ続けたら何かに目覚めそうで、ちょっとだけ怖くなってしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます