第22話 摩訶不思議の奇々怪々
好きという感情がどんなものか。
その答えを知っている人間は少ないだろう。
恋心というのは十人十色。恋に落ちる瞬間も、恋に溺れている時も、愛情の表現も、その重さも。
誰だって少なからず違っていて、どこか似通っている。
でも、その中でも自分の愛は、どこか異常を伴っている。
異常で、異質で、異形。
「……よし! 今日も異常なし!」
だから、大事な大事な友梨佳ちゃんに対して、毎夜こんなことをしている。
こんなことっていうか、ただの処女検査だけど。
まぁあれよ、学校には誘惑が多いから、万が一友梨佳ちゃんがそういう誘惑に負けて他の子に処女捧げちゃってたりしてたら困るじゃない? だからこの検査は必要不可欠なのです。
あとは日中とかどんなお弁当食べてるのかとかの確認も必要かも。誰かに餌付けされてる危険性もなくはないし。
「とりあえず、今日も友梨佳ちゃんの処女膜は元気でしたってことで、私も寝ようかな」
同室とはいえもちろんプライベートスペースは確保されている。でもそんなことは関係ないよね。良好な関係は身体の距離で決まるって感じで、私は迷いなく服を脱いで友梨佳ちゃんが眠るベッドへとイン! する。
はぁぁ~! この感触、気持ちいいぃ~!
友梨佳ちゃんの背中に乳首が擦れてなんとも言えない気分になる。
さっきは私が友梨佳ちゃんの乳首をいじいじしてあげたんだから、これくらいはいいよね。
できればお股もすりすりしたいところだけれど、それは我慢。今そんなことしたら友梨佳ちゃんのパジャマがびちゃびちゃになっちゃうし。
「あっ……これいいかも」
いつもならただ裸で抱き着くことしかしなかったけれど、こうやって上手く背中に擦り付けると、結構いける。
正直、ハマっちゃいそう。
「あっ、んぅあ! 友梨佳ちゃん……気持ちいいよぉ」
気づかぬうちに激しく擦っていたらしく、友梨佳ちゃんが寝返りを打ってしまう。しかし、そのおかげで私の胸と友梨佳ちゃんの胸が重なり、大変よろしい状態になる。
据え膳食わぬは百合の恥。ということで、いただきます!
私は友梨佳ちゃんを起こさぬように、そっとパジャマの前部分を開く。そこには原初から変わらぬ身体の秘宝が鎮座していた。気分はもうオープンザプライスされた時と同じくらい興奮しちゃってます!
プロデューサーさんっ! おっぱいですよ、おっぱい!! ……この際のプロデューサーって誰でしょうか?
「それにしても友梨佳ちゃんのおっぱいって、小さいくせにやたら張りがいいのよね」
大きいだけの私と違って、そこにはおっぱいのすべてが詰まっている。とにかく揉んだら最後。病みつきになって手が離れなくなってしまう。
私は友梨佳ちゃんの背中に腕を回し入れ、よりおっぱいがくっ付くように引き寄せる。重なったおっぱいは楕円形に形を変え、ついには額と額がごっつんこしてしまうくらいまで近づいてしまう。
ああ、ごめんなさい友梨佳ちゃん。こんな変態で不埒で、この程度で情けなくも下半身を濡らしてしまう残念極まりない女の子が同室で。
しかし、それでもこれはやめられそうにない。
私が眠りについたのはそれから一時間後、軽く一回イッたあとに、もう二回絶頂を迎えてからだった。
夜のオカズは厳選に厳選を重ねたうえで使用をしないといけない。
なので私は最高十点満点でのオカズ評価表を制作した。
友梨佳ちゃんの靴下(使用済み)、三点。友梨佳ちゃんの普段着(使用済み)、四点。友梨佳ちゃんの歯ブラシ(使用済み)、五点。友梨佳ちゃんのお布団(使用済み)、六点。友梨佳ちゃんのキャミソール(使用済み&汗を吸いに吸ったもの)、七点。友梨佳ちゃんの体育着(使用済み)、八点。友梨佳ちゃんお気に入りの下着(使用済み、自慰行為後であればなお良)、九点。友梨佳ちゃん本体、十点。といったところだ。
ここで肝なのが友梨佳ちゃん関連のものは二点以下がないというところだ。
二点以下はぶっちゃけカス。友梨佳ちゃんグッズが手に入らなかった時とかに用意してる妹のパンツである。
妹。
思えば私は高校に入るまで、どうしてあんなちんちくりんな子のパンツで自慰をしていたのか、未だに疑問である。
リリィ七不思議に認定されちゃうくらい不思議。はやくこの不思議を発見されて解明してほしい。
というわけで私は高校で誰にも妹がいるということを言っていない。あれの存在は摩訶不思議の奇々怪々。妖怪やお化け、怪異なんかと一緒くたにしている。つまり私の妹ではない。
ここまで私が妹を拒絶するのは理由は…………なんだっけな。忘れちゃった。
たぶんあれ、妹のパンツで自慰してたなんて誰にも言えないし言いたくないし、ばれた日には切腹首吊りもの。私がこれまで稼いできた良い子ちゃん貯金が雪崩を起こしたように価値を下げ、紙くずとなってしまいかねない。
だから、これは封建、違うし封印だし。
とまぁ、ちょっと頭がぱぁになるくらいには、私に妹の話はタブーなのだ。タトゥーじゃなくてタブーね。
「それで、その妹さんはどうしてるの?」
「今は地元の中学に通ってるよ。来年ここ受けるってさ」
「ほんと! ちょっと見てみたいな」
「なにその顔。もしかして人の妹に手ぇ出そうとしてるの? やめてよね、私あんたとは家族になりたくないし」
「えぇ~! いいじゃんいいじゃん! ちょうだいよその妹! あんたの妹なら絶対かわいいじゃん!」
「いや無理だし。ほんとむり」
そんな私の前で躊躇なく妹の話をしているのは、私のクラスメイトであるかんらちゃんとみなみちゃんである。
かんらちゃんはどっからどう見ても高校生には見えないロリ体型でありながら、割としっかりとした性格をしている。一方でみなみちゃんはその逆、高校生には見えないくらい大人っぽいのにも関わらず、その言動はどこか幼く、周囲の子が母性を刺激されてしまうほどに甘え上手なのである。
共通項がほとんどないと思われがちな二人だが、その見た目や性格のギャップ、年相応にみられないといった悩みを互いに持っているため、意外と気が合う二人なのだ。
「あんたにくれてやるくらいなら、リリィにあげるわ」
「え? 私に?」
「えー! 万年欲情してるリリィより、健全できれいなみなみちゃんのほうが絶対にいいと思うんだけどな!」
「いやいや、ロリコンが健全とか、頭沸いてるのかと言いたい」
「どっかの誰かさんみたいに男装した子じゃないと興奮しないよりかはいくらか健全だと思うんですけどー」
「まぁまぁ、二人とも落ち着いて。他人がいる前ではそういう話はナシって決めたじゃない」
私たちはお互い不幸な事故で自身の性癖を知られてしまい、冷戦状態になっている。もちろん元々仲は良かったけれど、その性癖がゆえに時たまこうして衝突してしまうことがある。私の性癖(百合趣味)はこの二人に比べればいくらか健全的で多少二人の性癖ともかぶっていたので、衝突するのは決まってかんらちゃんとみなみちゃんなのだが。
「でもでも、かんらに妹ねー。写真とかないの?」
「あるけど……あんまり見せたくないなぁ」
この渋り方はあれだろう。さしずめ妹に男装させた写真しか持ってないから見せたくないとかだろう。
みなみちゃんも同じようなことを思ったのか、ちょっと悪い笑顔になっている。
「いいじゃんいいじゃん、見せてよ。別に妹の写真の一枚や二枚、減るもんじゃないし」
「それはそうなんだけど、ねぇ……」
「私もさっきはああ言ったけどさ、本当にもらいたいってわけじゃないし、そんなに警戒しなくても大丈夫だって」
「それは分かってるわよ。あんなことを本気で言ってたらさすがに友達やめてるわ」
「なら」
「でも、ちょっとこれはね……」
今回はやけに渋るかんらちゃん。いつもならいやいや言いつつもすぐに折れて写真やら秘蔵のコレクションやらを見せてくれるのに。
ちなみにこの二人、クラスメイトでありながらルームメイトでもあるため、自身の持つオカズはほとんど相手に知られてしまっている。しかし、クラスも部屋もいっしょは結構珍しい気がする。ほとんどの場合は違うクラスだし、例外的に姉妹での同室とかはあるけれど。
あと、聞いたところによると、この寮の部屋決めにはある一定の法則があるらしい。私も詳しくは知らないし、聞ける雰囲気ではなかったので訊けなかったのだけれど、理事長がそう言っていたのを覚えている。その法則のおかげか、今まで一度も部屋を変えてほしい、この人と同室は嫌だという苦情はないらしい。私も学年統括をしていて生徒の学校への不満や生活面での改善してほしい部分などを聞いたりすることはあるが、部屋を変えてほしいとか同室の人が苦手などといった、寮生活ならではの苦情はまったくもって聞いていないのだ。
一体どういった判断基準で、どんな法則性で部屋を決めているのか、ちょっとだけ興味がある。
そんなことはさておき。
やはり今日のかんらちゃんはちょっと変だ。というかその写真どんだけ見せたくないのよ。そんなに拒まれたらあんまり興味のなかった私でも見たくなってきちゃうじゃない。
「あきらめて、みせないさいよ!」
「だめ! これだけはほんとに勘弁!」
みなみちゃんは多少強引にでも見せてもらいたいのか、抱き着くようにかんらちゃんのケータイめがけて手を伸ばしていた。かんらちゃんはそんなみなみちゃんを近づけまいと、みなみちゃんの顔面を鷲掴みにして距離を取っている。アイアンクローをするロリ体型の女の子。うーん、私的にはありかな。
「ちょっとかんら! 本気で私の頭蓋骨砕こうとしてない!? なんか尋常じゃないくらいの握力で摑まれてる気がするんだけど!」
「そりゃそうよ。乙女の秘密を無理やり暴こうとする屑には容赦なき鉄拳制裁が一番だと思うし」
まぁそうよね。他人が秘密にしておきたいことを興味と好奇心で暴こうだなんて、ちょっと人としてどうかと思うもん。
けれど、今回ばかりは私も好奇心が勝った。
「!? リリィ! いったい何を!?」
「え、いや、私もちょっと興味が出てきたから、見せてもらおっかなー。なんて」
私はみなみちゃんとは反対側、つまりケータイを持った手を両手でしっかりと握ると、画面が見やすいように自分の顔の前まで誘導する。
「リリィまでそんなことをするなんて……! うん? でもリリィだからいっか」
最初は抵抗していたものの、どうやらかんらちゃんはみなみちゃんにだけはどうしても見せたくないというだけで、私には見せてくれるようだ。
「ぅえ!? どうして私はだめなのさ!」
「変態だから」
「あんたも変態だし、リリィも変態じゃん!」
「度数が違う」
「度数ってなんだし!」
「変態の、度数」
……まぁ、特殊な性癖の中にはどうしたって擁護できない、お前は一生檻の中で生活しろってくらいひどいものもあるけれど。
「それじゃ、拝見しますっと……」
さてはて、かんらちゃんがあそこまで見せたくないと言っていたブツはどんなものなのかな。
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