第51話 最弱全裸のトリプルカード

「簡単に説明すると、二人のカードをより十一に近い数字にしたほうの勝ちというのが『ダブルイレブン』のルールだよ」

 教室にて椅子と机の用意をしたのち、会長はトランプの山から目的のカードのみを取り出してシャッフルをしていた。

「使用するカードはトランプの一から四まで、合計十六枚です」

 つまりそのカードのみでより十一に近い数字にするってわけですか。

「手順としては”カードを三枚引く””任意のカード一枚を公開する””自身の手札からカード一枚を出す”。たったこれだけです」

「山札に残ったカードは公開されます?」

「いつものルールなら非公開ですが、今回は公開にしようか」

 いつもって、いつもこのゲームやってるんですかこの人たちは。

「十一に近いってことは十一より大きい数字でも可?」

「今回はバーストカウントとしてそのゲームは負け、バースト分を次のゲームに持ち越しとします」

「つまり次のゲームまでその数値覚えてないといけないってことね」

 すらすらと説明しているが、説明を受けている側がついてきているかの確認を怠る感じを見ると、頭の回転爆速の人たちに囲まれて過ごしているんだろうなってちらっと思ってしまった。

 あ、私が別にわけ分らんちんになってるわけじゃないですよ。どこかで聞いたようなルールでしたし、説明的にはわかりやすくてよかったと思います。

「ゲーム中の相談はもちろん、事前の相談もNGね。基本十回勝負で、十回以降は先に二連勝した法の勝ちってことで」

 シャッフルが完了した山札を会長は私たちに差し出す。

 それを無言で受け取ってぐちゃぐちゃに混ぜた後綺麗に整えて机の中心に戻すロリコン。

 相手の意図を明確に理解して行動するロリコンって意外と頭良いのか? ロリコンのくせに。

「おい豚失礼なこと考えてるんじゃない」

「なんでばれたんや」

「あんたの顔面見れば分かる」

 まじかよ、今度から覆面して学校通うわ。

「あとこれ脱衣麻雀と同じ要領だから。負けたら脱いでね?」

 そのちょい足しいらんやろ絶対。

「問題ないわ、こっちが負けたら脱ぐのは豚だし」

「服着てるほうがおかしいとか冗談でも言わないでね」

 流石の私でも傷ついちゃうから。ほら、私のハートってガラスどころかぷるっぷるのお豆腐なので。

「引く順番はどう決める?」

「じゃんけんで一人になった人から時計周りで」

 徹底的に無駄を省きたいのか、勝ち負けじゃなくてオンリーになった人からって指定入りましたよ。まぁ多分そのほうが早いけれども。

 そんなわけでじゃんけんクソザコ変態こと私からカードを引くことになりました。

 順番としては私、ロリコン、会長、副会長。手札公開もこの順で一ゲームごとに時計回りで先頭が回っていく方式で自然と決定した。

「さて、全員手札引いたので今度は公開タームですね」

 私の手札は一、一、一とスリーカード状態なのでとりあえず一を出します。何出しても一じゃねーかっていうツッコミはなしでお願いします。

「じゃ私は一で」

 一を私たちで独占してるのか。ルールがルールだったらある意味最強。

「私は四で」

「私は二を出します。これで全員カード公開したので、山札に残ったカードを公開します」

 山札に残った四枚は四、三、三、二。

 状況整理。

 山札と公開されたカードを合計すると、四が二枚、三が二枚、二が二枚、一が二枚。

 残りは四が二枚、三が二枚、二が二枚に一が二枚。私が一を独占市場してるので不明なカードがこれで判明。

 問題はロリコンがどのカードを持ってるか、なのだ。私はもう一しか出せないことが確定しているので、私目線では現在の合計数値が三、最弱すぎて吐きそう。

 あれ? ということは、ロリコンが何出そうが十一に届かないやんけ!

 ま、考えようによってはバーストするよりかはいいのかな?

「では最終タームに移ります。自身の手札から一枚出してください」

 これも順番に出すってことは後に出す味方はそれを踏まえてカードを出せるのか。確かにそうじゃないと揃えるのつらいもんね。

「はい、一」

「お前まさか手札クソザコだろ」

 当たりだよロリコン。

「四で」

 これで私たちの合計数が七で決定した。

 生徒会ペアは現在合計が六なので五になるように調整すれば勝ちか。負けじゃん。

「私三ね」

「私が二なので十一。私たちの勝ちですね」

「おいクソザコ豚。手札全部一とかありえないだろ」

「こればっかりは仕方ないでしょ」

 考えようによっては最後にシャッフルしたロリコンが悪いともとれるし。

「使用カードが少ない分、全部同じ数字はよく発生しちゃうんだよね」

 だからこその十回勝負なのかもとちょっと思った。



「ありえん」

「正直他のカードゲームだったら完敗レベルの手札だったね」

「あの確率を引き続けるのも一種の才能だと思います」

 二回目からの私の手札も相変わらず確率バグってるとしか思えない内容だった。

 二回目、四が三枚。三回目、一が三枚。四回目、二が三枚。五回目、一が三枚。六回目、三が三枚。

 この時点でさすがにお分かりだろうか。なんと私、二回に一回は最弱デッキなのだ。

つまり二回に一回は高確率で敗北するという、このゲームまじ確率大丈夫か問題が浮上してしまった。

「ま、今回は簡略ルールでやったから確率おかしくなっちゃったけれども、面白かったから良しとしましょう!」

「それこっちのセリフですし、普通にストレート負けで私全裸になってるのですが」

 ロリコンは本当に私にほとんど私に押し付けてあんまり脱いでないのずるくない? 私も女の子の柔肌みたいんですけど!

 生徒会ペアはバーストもせずぴったり十一を四回も出してる辺り、やっぱり私たちには不利なゲームだったんだなと思います。

「ゲームも終わったところでそろそろ時間かな」

 ゲーム中に何度か放送が入っていたのを覚えてはいるが、私自身がそんなの聞いてる場合じゃなかったので、まるで内容が頭に入ってきてなかったんだよね。あれってタイムリミットの放送もあったのね。

「たまにはこうしてじっくり衣服を剥ぎ取るのも悪くないね」

「まるでいつもは神速のごとく脱がしにかかってるような言い方ですね」

「間違ってはないね。私は必要な時以外衣服は身に着けない主義だから、私の部屋に来るものはみんなこの主義に染まってもらってるだけとも言えるが」

 いやそれ脱ぎたくないって言っても無理くり脱がされてるんじゃなかろうか。

「しかし、靴下だけ残したのは芸術点高いね」

「どうしてそこから脱がなかったのか疑問だわ、まぁ私が豚の気持ちなんて分かるはずないんだけれど」

 そればっかりは仕方ねーよな、お前はロリの気持ちしか分からないもんな。

「勝負がつく前にタイムリミットだから、本当ならパンツをもらう権利はないのだけれど、記念として貰ってもいいかい?」

「何言ってんだこいつ、ダメに決まってんだろ」

「豚のパンツでよければいつでも献上するわよ」

「人様のパンツ勝手にいつでも献上するな」

 みんな私の扱いひどすぎていじめを疑うレベルですよ。

「ま、今回は裸の写真だけで我慢するよ」

「ちょっと待てなんてもん撮っとんねん」

 訴えても文句言われないんじゃないですかこれ? 立派な盗撮ですよ!

「では、みんなで結果発表を見に行きますか」

 窓の外から見えるグラウンドには既に大半の生徒が戻ってきているようで、それぞれ獲得したパンツの集計を行っていた。

 みんなで奪い合ったパンツを数えるとか、これ外側から見ると完全に頭のおかしい集団だな。

 このまま私たちもあの変態集団に合流する流れなのですが、さすがに服は着ていいですよね?


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る