第5話 とある少女は弟子入りする

眠りから覚めた私は体が少し動かせるようになったので自分でなんとか起き上がることができた。

 すると20秒もしないうちに、ニーナが部屋に入ってきた。


「魔力感知であなたが起きたのが分かったから様子を見にきたわ。ちょうどそろそろ晩御飯の時間だけど、あなたご飯は食べれそう?」


そう問いかけてくるニーナに私は肯定の返事をした。


「はい、お願いします。実はお腹がぺこぺこで……」


「ふふっ、分かったわそれじゃあまだ立ったりは出来ないだろうから車椅子で連れて行くわ」


 微笑みながらそう言ったニーナは亜空間の狭間を生成し、そこから車椅子を引っ張り出して、私を座らせて運んでくれた。


 部屋を出て廊下を進みリビングのような場所に向かって行く。

 家から受ける印象は、木造のログハウスのような内装でとても温かみを感じる場所だった。

 

 そして廊下を抜け部屋に入るとそこでアイネとアッシュがキッチンで一緒に料理をしていた。


 私たちが部屋に入ったことに気づいたアッシュは笑顔で話しかけてきた。


「おはよう!もうすぐご飯できるからね!今日はシチューとパンだよ〜!」


 そう言ったアッシュはまた料理の方へと視線を戻した。


 そして出来上がったシチューをよそってもらいダイニングテーブルに料理を並べ4人で座る。


「それじゃあ食べようか、いただきます」


「「「いただきます」」」


 アイネの後に続いていただきますをし、みんなでシチューを食べ始めた。

 味はビーフシチューのようで、ほっぺたが落ちるほどおいしかった。



 そして食事が終わるとアイネが問いかけてきた。


「そういえばなんであそこ倒れていたの?」


「私はあそこにくる前────」


 そう言ってレイは今までに起きた魔物を押し付けられ、必死に戦ったが死にかけたことを話すのだった。


 そして全て話し終えると、


「なるほど、それは中々に辛い経験をしたね」


「その押し付けてきた奴ら、私があったらボコボコにしてやるのに!」


「ほんと、その人間はどうしようもないクズね」


 3人はそれぞれ思ったことを口に出す。

 アイネは少し悲しそうな表情をしていて、アッシュとニーナは怒っているような様子だった。


「まぁまぁ、もう過ぎた話だし私はもう興味もありませんから」


そう言って怒っている2人を宥める。


「そんなにボロボロになって良くもまあそんな割り切れるわね……」


そう言いながらニーナは悲しそうな表情になる。


(ニーナさんは少し怖い人かと思ったらとっても優しい人なんだな)


そう思ったレイは、ニーナを安心させるために先ほどの説明で省いた、半堕天のことについて話すことにした。


「実は、本当に興味がなくなっているんです。死神生物と戦う前、称号の半堕天というのを使って感情を犠牲にして────」


そう言った瞬間、3人の目が大きく見開かれ、ニーナが大きな声で話し始めた。


ですって!?普通あれって人間に出せるような称号じゃないでしょ!もしかしてこの世界に飛ばされてきたのも何か意図があるのかしら……」


 そういうとニーナはそのまま考え込んでしまった。


(薄々気づいてたけどってことはやっぱり……)


「あのっ!この世界ってことはやっぱり此処は私の元いた世界じゃないんですか?」


 そう聞くとアイネが答えてくれる。


「そうだよ。ここは君がいた世界じゃない。それにこの世界は君たちの世界みたいに管理者が管理しているわけじゃなくて私たちが暮らすための特殊な場所なんだ。

 だから普通の人間の君が来れる場所ではなかったはずなんだ。

 でもおそらく心当たりはある。

 ついこの間、君が転移したであろう日に神達の会議があったんだ。

 その時の神達の移動する時に使用する転移魔法が偶然発動時に時空が捩れ、君に発動したのかもしれない。

 それでここに飛ばされるなんて本当にありえないほど低い確率だよ。

 ごめんなさい、私達の都合であなたの運命を曲げてしまって……」


そう頭を下げるアイネ。


「いやいや頭を上げてください!いいんです!それがなかったら私は確実に死んでいましたし!」


「そう言ってくれるとありがたいよ……」


 私がそう言うとアイネがうっすらと微笑む。


「それで、レイはこれからどうする?一応すぐに元の世界に戻すことはできるけど、どの場所に飛ぶかはわからないんだよね。

 一年後にもう一度会議があるからその時に君のいた世界の神様に引き渡すことができるよ」


 そう言われたレイだが、答えはもう決まっていた。

 アイネ達の凄さ、なにしろ称号によっておそらく感情の起伏があまりなくなった私だが、彼女たちの仲の良さ、暖かさが羨ましかった。私は本気で彼女達と一緒にいたいと思った。

 それに元の世界ににはあの死神意外もう何も興味が沸かなかったからだ。

 


「あの私をどうか拾っていただけないでしょうか! 私も剪定の神の仕事について行けるくらい強くなりたいです! やれることなんでもします!」


 そう大きな声で言い頭を下げる。


 するとアイネは唸りながら、


「うーん、そうしてあげたいのは山々なんだけどなんせ私の下につくためには色々と条件があって、それが厳しいんだよなぁ」


 そう言うアイネに横からアッシュが


「とりあえず次の会議までの間にレイを鍛えて素質がありそうならでいいんじゃないかな!どうせ昔の私たちみたいに元の世界でやらないといけないこととか色々あるし! ねっ! レイもそれでどう?」


「はいっ!それでお願いします!」


 アッシュの提案にレイは大きく頷き頭を下げる。


「ニーナもそれでいいの?」


「アイネがそれでいいならいいわ」


アイネは問いかけるとすでに思考状態から戻ってきていたニーナはそう答える。


「じゃあそう言うことで!まずは約一年間よろしくね」


「はい!よろしくお願いしますっ!」


 そうして、レイは剪定の神一家に弟子入りすることになったのだった。

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