第41話 とある少女は勝手にソロでダンジョンに潜る
探索者達が飛行機に乗って札幌に到着し、ダンジョン協会が用意したコンドミニアムに荷物を置きに行った。
今回の遠征はおよそ2週間を予定している。
レイと雫は共同で生活した方が何かと便利だろうという事で二人は同室を選択した。
二人で生活する旨を会長に伝えると2LDKの家を用意してもらったので、レイと雫は他の探索者よりも広い部屋に住むことになった。
そして二人は滞在先のコンドミニアムに到着し部屋を見渡した。
「それにしても結構綺麗だねこの家」
「まだここは建設されてから数年しか経っていないらしい」
「へぇ〜そうなんだ、どうりですごい綺麗だと思ったんだよ。あとそういえば2時間後に一旦ミーティングがあるんだっけ」
「そう。今回はスタンピードが起きた時のためのレイドを想定して配置を決めるための話し合いをする」
「ふーん私は今回関係ないやつか」
「レイがソロで動けるのは正直羨ましい。でもミーティングには一応参加した方がいいと思う」
そうして約2時間が経ち集合の時間になったので、ダンジョン協会が用意した会議室に探索者達が集まった。
そうして皆川が名簿を見ながら人数をチェックし始める。
「氷川零はどうした」
名簿を確認していた皆川が雫に問いかけた。
「レイはお寿司を食べに行く為欠席すると言われました」
雫はさっき起きた出来事を思い出すのだった。
約数分前────
「レイ、そろそろ集合の時間だから会議室に行こう」
「あー……雫ちゃん! 私ちょっとミーティングに出席するの面倒だからそこら辺でお寿司食べてくる! 聞いた話によると北海道ってお魚が美味しいんでしょ? それじゃあね!」
レイは雫が返答を返す前に窓から飛び降りて行くのだった。
そのレイの行動に雫はため息をつきながら片手で頭を抱えるのだった。
そうして現在、皆川も先程の雫と同じポーズになっているのだった。
「まあ……あいつは今回単独行動が許されているから今回のミーティングはそこまで関係ないが……」
皆川は会議を進める為に平静を保とうとするのだった。
一方その頃レイはお寿司を食べ終わり会計を済ませ、一人で札幌ダンジョンの前に来ていた。
「おーここが札幌ダンジョン! 人は……いない?」
札幌ダンジョンの周りに探索者は一人もいなかった。
レイは疑問に思い受付の職員の人の方へ向かい話しかけた。
「あの〜すみません。今日ってダンジョン入れます?」
「探索者の方ですか? 問題なく入れますよ。ただ一つ注意事項がありまして、現在このダンジョンではスタンピードが多発している為危険だと判断した場合はすぐに退避してくださいね。間違っても! 立ち向かおうとしないように!」
「わかりました、忠告ありがとうございます。それじゃあ受付をお願いします」
レイは職員の人にカードを渡して受付を済ませた後、第1層へと足を踏み入れるのだった。
レイが第1層に入り最初に見た光景は、雪が光に反射してキラキラと光る美しい雪原だった。
「さっさむ……」
レイはいつも身につけているローブの下に上着を一枚着て防寒対策をする。
そしてレイは今日ダンジョンの雰囲気を見に来ただけだったのでそこまで深く潜る気は無く、大体5層くらいまでを目標にしていた。
しばらくレイはゆっくり観光気分で階層を進んでいるとスマートフォンからアラーム音が鳴り響いた。
「ん? 確かこれは……」
レイがスマートフォンの画面を見るとやはり以前のスタンピードと同じ通知が来ていた。
「発生場所は不明……でも現在魔物の群れが進行しているのは第5層か。よし、ちゃちゃっと沈静化しますかね」
レイは現在3層にいたのでスピードを上げて5層に向かう。その途中に走りながら雫に電話をかける。
「もしもし雫ちゃん?」
『レイ……今会議中なんだけど』
「ちょっと札幌ダンジョンに遊びに行ったらスタンピードに遭遇したから沈静化するって皆川さんに言っといて!」
『え? ちょ────』
レイは雫の返答を待たずに通話終了ボタンをタップしてスマートフォンの電源を切った。
「さてと、今回はどのくらいの規模までは見てなかったけどどうなんだろう」
レイはそう呟きながらスタンピードが起きている場所へと急ぐのだった。
一方その頃
「あっ……電話切られた」
「なんの電話だったんだ?」
皆川に電話の内容を尋ねられた雫は正直に話すことにした。
「今レイから電話がありました。
内容はレイが今札幌ダンジョンにいるらしく、ちょうどスタンピードが起きたから一人で沈静化するとのことです」
雫がそう話した瞬間に皆川のスマートフォンからスタンピードを知らせるアラームが鳴り響いた。
その内容を見て皆川は目を見開く。
「なっ!? 今回のスタンピードは魔物の数約1000体の規模だぞ!? いくら氷川零といえども沈静化は不可能だろう! すぐに電話を掛け直せ!」
雫はもう一度電話をかけるがレイが通話に出ることはなかった。
「レイは電話に出ませんでした。おそらく電源を切ったか収納に入れたかのどちらかです」
「くそっ…… 氷川零はおそらく一人での沈静化は可能だと判断したのだろうが、私達も念の為ダンジョンに向かうぞ!」
そうして会議室は慌ただしくなるのだった。
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