第42話 とある少女はスタンピードと対峙する
今回の遠征組が札幌のダンジョンに向かおうとしている時、レイは第4層を走っていた。
「雪道だから走りづらいなぁ」
札幌ダンジョンは現在確認されている層は全て雪が降っている為一般的には雪に対して強い靴を用意するのだが、レイはもちろん事前情報など全く聞いてはいないので普通のブーツでダンジョンに潜っていた。
「そろそろ第5階層への入り口かな?」
レイがしばらく第4層を駆け抜けて、感覚的にそろそろ階層の終わりを予想した時、前方から一つの探索者パーティーがライトは逆方向に走っていた。
レイは立ち止まってその探索者パーティーに話しかけた。
「大丈夫ですか?」
「それはこっちの台詞だ! もう魔物の群れはすぐそこの第5階層まで来ているんだ! それに俺たちはすぐに転移門で逃げようとしたがなぜか第五階層の転移門が使えなかった! だからあんたも早く逃げろ!」
そう言って冒険者パーティーは第4層の転移門に向かって走り去った。
「ん〜? 転移門が使えないなんて私聞いたことないけど…… そんなことがあるんだなぁ」
レイは呑気にそんなことを言いながら第五階層の階段に向けて走って行った。
しばらくして第五階層に到着し、魔力感知発動する。
「んー? 前のスタンピードよりも随分と規模が大きいかも」
レイは立ち止まり魔物達のいる方向を見据えるすると約500メートル先で先頭集団が姿を現した。レイはさらに細かい情報を得る為に魔力感知の精度を上げていく。
「なるほど……数は多いけど特定の魔物から逃げてるって訳でもないし、一つ一つの魔物の強さは渋谷ダンジョンの時よりも随分と弱い。
ん? ということはあれを試すいい機会なのでは?」
レイは魔力感知を薄く広く展開し、第1階層から第20階層までを調べるが人の気配は感じ取れなかった。
「……人が居なかったらやってみてもいいよね?」
レイはニヤリと笑うと目を閉じて剣を地面に突き刺す。その時見える範囲の空間全てが一瞬歪んだ。
そうしてレイは目を開きその瞳は薄く光り出した。そこからどんどんと階層全体の魔力がレイの魔力に上書きされていき地響きが鳴り始める。
レイは獰猛な笑みを浮かべ魔法を詠唱する。
「
その刹那、魔物の約半数がノイズと共に消滅した。
「あーやっぱ半分くらいしか無理かぁ。私もまだまだって訳だね」
レイの使った魔法はレベルとステータスが極端に離れていないと相手には効かない魔法であり、今回のスタンピードは先頭に行くほど弱い魔物だったので先頭から半分ほどの魔物に有効だった。
そしてレイは残りの半数を【
レイはその後魔物が来た方角に向かい原因を調査しようとしたが、これといった原因が見つからなかった。
レイはそのまま第6階層に向かって移動した。
第6階層についたレイはまた魔力感知を展開するがスタンピードの影響で魔物はいないがこれと言って原因を見つけることができなかった。
「これは……スタンピードが起きてすぐに来たのにここまで原因がわからないとすると、魔物は何処からか転移してきた? その可能性があるなら原因はもっと進んだ階層にある?」
レイはその場で思考を巡らせるが上手く纏まることはなかった。
「今日は一旦帰ろう。私の勘だけど、多分もっと進んだ先に何かある気がする」
レイは階層の先を見ながらそう呟き第六階層の転移門が使えたのでそのままくぐってダンジョンを出た。
レイがダンジョンを出た先には今回の遠征組が待ち構えていてその先頭には皆川が腕を組んで仁王立ちをしていた。
「あっ……あの〜? スタンピードなら終わったんで、私帰ります!」
レイがその場を走って立ち去ろうとすると、気付かぬうちに後ろにいた雫に羽交締めにされる。
「しまった! 気づかなかった!」
「レイ、今回は逃げられない。大人しく皆川さんの説教を受けて」
「そっそんなぁ〜……」
レイは雫に引きずられて皆川との話し合いに連行されるのだった。
他の遠征組は解散して、現在レイは皆川と雫の説教を会議室で受けていた。
説教の内容は無断でダンジョンに入った事、勝手にスタンピードに立ち向かった事、会議をサボった事を1時間重点的に怒られた。
説教が終わる頃には、レイはしなしなになって声もか細い声しか出なかった。
「────わかったか! 氷川零!」
「あぃ…………」
「よし、説教はここまでだ。次はお前のスタンピードの話を聞かせろ」
「あぃ……」
レイはスタンピードの規模や原因を調査したが何も痕跡がなかった事を報告した。
「それにしても原因がわからないとはなかなかに妙な話だそれに転移門も使用できないなと聞いた事もない」
「多分もっと階層を進んだ先に何かあるんじゃないかと私は思っています」
「そうか、なら引き続きお前には攻略を頑張ってもらおう。もし人手が必要だったらそこの天城雫はいつでも出れると言っている事は伝えておこう」
レイが雫をみると両手をピースにしてこっちを見ていた。
「それでは解散としよう。次回の会議をサボったら次は2時間の説教だ」
「あぃ……」
レイと雫は皆川と別れ家に帰ってきた。そしてリビングに入った瞬間雫に押し倒される。
「しっ雫ちゃん?」
「私は説教するよりももっと効果的な方法を知っている。それは柔軟ストレッチ」
「ちょっ……やめ……」
そうして罰ゲームの柔軟ストレッチが始まりレイの悲鳴は家中に鳴り響くのだった。
「いたたたたたたたたたたた!!!! むりむりむりむり!!!!」
「いや、まだ行ける頑張ってレイ。あとストレッチは10種類残ってる」
「しっしんでまう!!!!」
レイは情けなくも涙を流すのだった。
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