第43話 とある少女は人外認定される

 次の日レイは雫の提案で早朝外に出て二人でランニングをしていた。

 現在レイ達は10km程を軽く流しながら走っていた。

 軽くと言ってもレイ達のスピードは一般人の全速力と同じくらいなので全くもって世間では軽くの範疇ではなかった。


「ねぇ雫ちゃん。どのくらい走るの?」


「このペースで今日はフルマラソンの距離を走る」


「え〜長いよ〜」


「今回の札幌ダンジョンの特性、レイは一回行ったから知ってるでしょ。だからテストの項目にあった持久走の意味も分かるはず」


「あ〜! 雪積もってるから体力がいるってことね! だから走ってるのか〜」


「そう。それにもしレイと行動するってなった時は足を引っ張りたくないから」


「かわいいやつめ〜! うりっ、うりっ」


 レイは横を走っている雫を笑いながらつついた。


「……やっぱりフルマラソンの2倍走る」


 雫はそう言うと走るスピードをさらに上げる。


「ちょっちょっと! ごめんってば〜!」


 レイも雫に追いつく為にスピードを上げるのだった。


 そして時間が経ち、宣言通りフルマラソンの2倍の距離を走った雫は現在レイがおぶって歩いていた。


「ぜぇ……ぜぇ……」


「ほら〜あんなに飛ばすからそんな立てないくらいまでしんどい思いするんだよ〜」


「レイは……なんで……汗ひとつかいていないの……」


「体力には自信があるからね、私」


「レイは人間じゃない……」


「なっなんて事言うのさ! あんまり強く否定はできないけど……」


 そうしてレイは雫をおぶって滞在先まで歩いていくのだった。

 そして家に着き雫がシャワーを浴びに行っている間にレイは雫の剣の手入れをしていた。


 剣の手入れが終わると同時に雫もシャワーから出てきたので朝食を取ることにした。

 二人は目玉焼きの乗ったトーストを食べながらテレビから流れるニュースを見ていた。


「へぇ〜、あんなおばあちゃんでも探索者なんだね」


 レイがテレビで特集を組まれていた高齢の探索者の事に触れると、雫が呆れた顔をしてレイを見ていた。


「……あれは日本最強各の探索者と言われている佐伯師範。

下の名前は公表されていない上に実戦武術特化の佐伯道場の師範代だから佐伯師範って呼ばれてる」


「はぇ〜すごい人だったんだなぁ」


「それにこの人の道場は北海道にあるから今回の遠征に参加するかもしれないって噂されてる」


「そんなすごい人が参加してくれるなら、今回の遠征メンバー大喜びなんじゃない?」


「そんな事はないと思う。あの人はすごく厳しいっていわれてるからみんなビクビク怯えるかもしれない」


「確かにちょっと厳しそうな見た目してるね」


 そんな話と共に朝食を食べ終わったレイと雫は皿を洗い今日のミーティングに参加するまでの間だらだらと過ごしていた。


 レイは昨日の地獄の罰ゲームを受け、今回は参加しないとその倍の量の罰ゲームを受けることになるのでミーティングに出るしかなかった。


 それでもミーティングに出るのが嫌なレイはソファーに寝転がって不貞腐れていた。

 

 しかし時間は待ってはくれない。


 集合時間の10分前になったので、レイは半ば強引に雫に会議室へと連行された。

 

 レイと雫は会議室に到着し、皆川に出席確認のような事をしてから隅っこの席に座った。

 

「今日は何のミーティング?」


「今日は札幌ダンジョンの特性だったり、出現魔物の種類だったりを詳しく解説される」


「へぇ〜」


 レイはあくびをしながらそう答え、ミーティングが始まるのを待っていた。


「それではミーティングを始める! 早速だが今回の遠征、あの佐伯師範の協力を得ることが出来た。

 その為今回のミーティングから参加していただくことになったので、皆把握するように。

 それでは佐伯師範、お入りください」


 そうして会議室に一人の老婆が入ってきた。

 佐伯師範は今回の遠征参加者を見渡すとふとレイと目が合った。

 その瞬間佐伯師範の姿が消え、気づけばレイの首元に蹴りが当たる寸前だった。


 レイはあくびをしながら腕で首元に放たれた蹴りを受け止めた。


「いきなりなんですか〜? びっくりしたんですけど」


「お主、本当に人間か?」


「なんか今日2回目なんですけど……はい、正真正銘人間ですよ」


 すると佐伯師範は足を下してレイの前に立つ。


「無礼な事をしてすまんかった。お主の魔力の巡り方が到底人では考えられんほどの密度じゃったので思わず反射で攻撃してしもうた」


 佐伯師範はレイに頭を下げる。


「いや、別に構いませんよ」


 レイは正直どうでもよかったので適当に許す旨の発言をする。

 そうして佐伯師範は前方の方へ戻って行った。

 そこからミーティングは始まったのだが、その時間の9割をレイは寝て過ごしていた。

 いつもより早く起床したことによってレイの眠気は限界だった。


 しばらくしてミーティングが終わり、今度は雫がレイをおぶって宿泊先に戻った。


 レイは戻ってから雫に起こされ、運んでくれたことにお礼を言ってから二人で昼食を食べに外に出るのだった。


 二人はハンバーガーチェーン店で昼食を済ませた後札幌ダンジョンに向かう。


 そしていよいよ遠征組は初めての札幌ダンジョンに潜るのだった。

 














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