第44話 とある少女は超特急で探索する
レイと雫は攻略組の集合場所に到着し、レイは雫と別れて皆川のところへ行く。
「皆川さん、私先に行きますね」
「ああ、頼んだぞ」
レイが転移門をくぐる直前後ろから声をかけられた。
「お主は一人でダンジョンに潜るのか?」
声の主は佐伯師範だった。
「はい。単独での攻略が許可されているので私は一人でいきます」
「……そうか。一目見た時からお主からはただならぬ威圧感を感じていたから心配はいらなさそうじゃの」
「そうなんですか?」
「普通の人間は基本的に魔力が体内から外に流れ出る。しかしお主は目を凝らしても殆ど感じ取る事はできんかった。
お主の横にいた小娘もお主ほどではないが魔力が限りなく薄かった。
そこまで抑えれる者は見た事がない。じゃから儂はお主が只者ではないと思ったんじゃ」
「そうだったんですか」
レイがそう返すと佐伯師範はとても真剣な表情になった。
「お主、魔力じゃがどこまで使える?」
そう言って佐伯師範の手には黒い稲妻が走っていた。
「…………貴方のもう一つ上とだけ言っておきます」
そう言ってレイの手がノイズで歪み、その手で佐伯師範の手に触れた。
その瞬間佐伯師範が後ろに飛び退いた。その時の表情は驚きと恐怖が半分半分だった。
「それじゃあ私は行きますね」
レイはそう言い転移門をくぐってダンジョンの中へ入って行った。
佐伯師範はレイがその場からいなくなった後、冷や汗を垂らして立ち尽くしていた。
(あれが、儂の使う事ができる魔力のもう1段階上の力…… とても冷酷で全てを支配されるような魔力の圧。あれは人が持って良い力なのか?)
佐伯師範は震える自分の手見つめながらそう思うのだった。
「よーし! 昨日の続きからだー! 今日は超特急で30層までは行きたいな!」
レイは元気よく階層を走り出し、魔力感知を使い異変がないかを探しながら階層を進んでいくのだった。
しばらくすると10層ごとにあるボス部屋の入り口に到着する。
すると地元の探索者らしきパーティーが丁度今から攻略をしようとしている所だった。
レイは走りながら剣を抜きボス部屋に入る。
「よし、これから俺たちの目標でもあった第10層の攻略をするぞ! 視聴者も見ていてくれ!それじゃ────」
「ごめんなさい!急いでるので譲ってください!」
レイは今回のボスである巨大な雪だるまを剣に魔力を纏わせて叩き割って粉々にした。
そして次の階層に進むための階段に存在した人が通る事ができない結界がなくなったので、先にいたパーティーにお辞儀して走り去った。
殆ど横取りのような事をされたパーティーの男達は唖然としていた。
「おっ俺たちがこれまで目標にしてきたボスが一撃で粉々になった……」
後に配信のアーカイブから配信者のreiだと特定されてダンジョン配信者ファンの間では少しの間話題になるのだった。
レイは第11層に到着し、収納から時計を取り出して時間を確認する。
現在時刻は午後2時で雫と約束した集合時間の午後5時までは残り3時間だった。
「第10層までは約30分か〜 結構いいペースだ、このまま順調にいけば目標の第30層までは結構余裕でつけそうかな」
レイは第11層の雪の降る森の木々の間を再び走り始めた。
そこから特に何も起きずにレイは第20層のボス部屋まで到達した。
レイはいつもの如く一撃で倒し次の階層へ向かった。
そして第21階層につくと現在そこは夜になっていた。レイは気にせずに通常通り走って攻略していると前方に5つのテントと焚き火があり、そこには女の人が見張り役として座っていた。
レイは横を通り過ぎようとしたがその女の人に声をかけられた。
「ちょっと貴方、此処のダンジョンを知らないの? この階層は夜になると暗闇に紛れて攻撃してくる魔物がいるから危険よ」
「忠告ありがとうございます。でも多分私は大丈夫だと思うのでこのまま行きます」
「そんな事言わないでちょっとこっちきて座りなさいよ」
その女の人はレイの腕を軽く掴み焚き火の前の席に連れてきた。
そしてココアを渡されたレイは一応鑑定をして薬などは入っていない事を確認してから飲んだ。
「久しぶりに飲んだけどおいしい……」
「でしょー? それで貴方は1人で此処に来たの?」
「はい。私は今回札幌ダンジョンのスタンピードの調査に派遣された探索者で、私は単独行動でこのダンジョンを攻略しているところです」
「遠征組!? あの30人しか選ばれない遠征組のこと!? あなた……すごく優秀なのね」
「たまたま、私がソロに向いていただけですよ」
「ねえ、て事は貴方他県から来たのよね? なら他のダンジョンのことも教えて欲しいわ! 私今見張り役ですごく暇だったから少し話し相手になって頂戴」
「まぁ少しなら構いませんが……」
そうしてレイは、自分の拠点のダンジョンのことや今回の選考会の内容などを話しながら過ごした。
そして30分ほどが経つと、辺りが少しだけ明るくなり始めたのでレイは立ち上がる。
「それじゃあ私はそろそろ行きます」
「うん! 面白い話聞かせてくれてありがとう!」
レイは女の人に手を振って再び次の階層へ向けて走り出した。
これは余談だが、先ほどの女の人がレイとの出来事を話すとパーティーメンバーの1人がファンだったこともあり配信者のreiという事が判明し、なぜサインを貰わなかったのかと後悔する事態が起きたのだった。
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