第45話 とある少女は異変に気づく
レイは焚き火で会話してからは階層をスムーズに攻略していったことで終了30分前には既に30層のボス部屋に到着していた。
レイはボス部屋を見渡すが辺りには何もいなかった。
レイはふとボス部屋の真ん中を見るとサンタクロースの格好をしたデフォルメされた鬼のぬいぐるみが落ちていることに気づく。
「なんでこんなところに可愛らしいぬいぐるみが……」
レイがぬいぐるみに近寄った瞬間、レイはぬいぐるみがピクッと動いた気がした。
その疑いは正しく、ぬいぐるみはどんどんと大きくなっていく。
「ちょいちょいちょい! 一体何!?」
そうして最終的にぬいぐるみは筋骨隆々の鬼がサンタコスをしている魔物になった。
そしてその鬼はさながらボディービルダーの様なポーズを一通り決めた後、3メートルはある棍棒をレイに向かって走りながら振り回していた。
「こんなん子供が見たら泣くぞ!? なんであんな可愛らしいのからこんな怖い筋肉お化けが出てくるんだよ!」
レイは棍棒を避けながら叫びながら愚痴をこぼすと剣で棍棒を吹き飛ばす。
「そんなに筋肉が自慢なら耐えてみな!」
レイは剣を鞘に直すと鬼の懐に潜り込み鬼のみぞおちに魔力強化のみのボディーブローをお見舞いする。
鬼はみぞおちを抑えながらうずくまるが、10秒も経つと起き上がり目に涙を浮かべながらも平然を装っていた。
「なんだその全然効いてませんけど? みたいな顔は!」
レイはあまりにも人間っぽい鬼に突っ込んでしまう。
「はあ…… なんか疲れた……」
レイはそう言って剣を抜き、鬼を細切れにして絶命させた。
すると攻略報酬で先ほどの最初のぬいぐるみがドロップした。
レイは拾い上げ鑑定を発動するとなんと何も効果がない唯のぬいぐるみだった。
「なんでレアドロップが唯のぬいぐるみなんだよ!」
レイはツッコミを入れた後収納に投げ入れた。
「はぁ、なんかどっと疲れた……」
その後移動して、レイが次の階層に到着して転移門から帰ろうとした時スマートフォンが震えた。確認すると雫からの着信だったのでレイは通話ボタンを押した。
「もしも〜し」
『もしもしレイ? 大丈夫?』
「大丈夫だけどどうしたの?」
『今15階層でスタンピードの予兆がある。報告によるとただ魔物が大量に居るだけで何からも逃げている訳でもない』
「えっ? 私今30階層にいるけど15階層に魔物は全然いなかったよ?」
『そうなの? なら隠れていたとか? とりあえずスタンピードを未然に防げるかもしれないから私達は全速力で15階層に向かってる。今は13階層を走ってるから後数分で着く予定』
「分かった。私もすぐに行くよ」
レイはそういうと転移門をくぐり一度地上に出てからもう一度転移門をくぐり15層に転移する。
(いや、魔物が隠れていたなんて事は多分ない。私はずっと魔力探知をしていたし、見える魔物は全て倒してから来た。
やっぱり私の予想通りで、何かが意図的に転移させて送り込んでいる? 確証はないけど……その可能性の信憑性はどんどんと上がってきている)
レイが思考を巡らせていると、階段から遠征組が走ってきた。
そして魔物の群れの対処は、スタンピードが起きた時の実践練習も兼ねて処理するとのことで、レイは手出しせずに見守るだけとなった。
レイは遠征組が魔物の対処をしている間、再び考え始める。
(もし送られてきているならあれは何階層の魔物達だ?
いや、そういえば私はあの魔物達を倒しても魔石どころか素材すらも出ていない。
つまりは何かがあの魔物達を生成して転移させて送り込んでいる?
でも何の為に?
今回のスタンピード多発は最近起き始めたはず。
つまりは外部から何かが入ってきてこのダンジョンを支配した?
分からない……でもやっぱりこの推理が当たっていれば階層をもっと進んだ先に絶対何かがいる!!)
レイはこの先にいる何かを探す為にさらに深くまでこのダンジョンを攻略することに決めた。
「おい氷川零。大丈夫か? 先ほどから話しかけているのだが反応がないが……」
「え?」
レイは隣に皆川がいたことに今初めて気づいた。
レイは今考えていた事を皆川に簡単に説明する。
「皆川さん。このスタンピードの原因が分かったかもしれません」
「なに!? 本当か!?」
「おそらくですがこの魔物は何かに意図的に作られて転移してきていると思われます。
そしてその原因の何かは最近このダンジョンにやってきた可能性があります。
だから私はもっと階層を深くまで攻略して原因を探します」
「なるほど。お前が実際に階層を探索して思った事なら私もその説を推すことにしよう。
だが今日は一度休んだほうがいい、もう外は日が暮れる。
お前に当てはまるかは分からんが、探索をそんなに焦ってもかえって足を掬われるだけだからな」
「……そうですね」
そうして遠征組も魔物の処理が終わり、全員転移門で地上に戻った。
その後現地解散をして、雫と共に宿泊先へと戻った。
夕飯の時に雫にもその話をすると、何か力になれる事があれば何でもすると言っていた。
レイは明日に備え、早めにベッドに入り目を瞑った。
しばらくすると急に布団がモゾモゾと揺れ始めた。
ぎゅううううう…………
「ん? ────いたたたたたた!!!!」
モゾモゾと動いた正体は寝ぼけて例のベッドにやってきた雫だった。
そして雫は毎度の如くレイにすごい力で抱きつく。
そしてレイは雫に抱きつかれたまま眠り朝を迎えるのだった。
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