第26話 とある少女は教師相手に無双する

 戦闘が始まり、レイは黒田に対してまずは軽く攻撃を繰り出す。

 黒田は難なくそれを防ぎカウンターで反撃してくる。その繰り返しを何回かしたところで攻撃しながらレイが黒田に話しかけた。


「先生、雫ちゃんは友達なので何点だったか教えてもらえますか?」


「……天城さんは文句なしの10点満点だよ」


「そうですか……」


(このままだと雫ちゃんに負けちゃうな)


 レイは剣の持ち手をギリギリまで長く持った。


(何か雰囲気が変わった?)


 黒田は直感的に何かを感じ取ったその瞬間、いきなり腹部に剣が滑り込んでくる。

 黒田はギリギリで反応して剣で防ぎカウンターをしようと思ったが、レイは長く剣を持っていたため黒田の間合いの外だった。  


(初動が見えなかった……完全に反応が遅れた。一体この子は何なんだ?)


 黒田が戦慄した表情でレイを見る中、当の本人は攻撃が当たらなかったことに驚いていたのだった。


(はぇ〜今の防げるんだ。こりゃ雫ちゃんよりもちょっと強いかな。少し興味が湧いた、先生の恐怖心をつついて本気を出させてみるか)


 楽しくなったレイは攻撃の威力とスピードを上げ、黒田の剣を弾きながら攻撃する。


「くっ……!」


 黒田は苦しい表情をしながらかろうじて攻撃を防ぐが、このままだと負けるのは時間の問題だった。

 それを見越したレイが少し殺気を攻撃に混ぜた瞬間、黒田の目つきが能力測定から殺し合いの目に変わった。


(おっ、やっとかな?)


 レイがそう思った瞬間黒田の剣が斬りかかってきた。予想外の展開にレイは目を見開いた。



「……驚いた、第二位階そこまできてるんですね」


「これが何かわかるのか?」


「ええ。でも出来るようになったのはおそらく最近みたいですね?」


 レイはそう言いながら、黒田の剣を涼しい顔で防ぎ切っていた。黒田は汗が滝のように流れており息も絶え絶えで、そろそろ限界が近づいていた。


「先生、私も10点ですか?」


「あっ……当たり前だろ…!!」


「それはよかったです!」


 レイはそういうと目が薄く光り始める。その刹那、レイの剣がノイズで歪んだ。

 そして黒田の剣とぶつかった瞬間、黒田の剣に纏われた第二位階の魔力の主導権を奪い、剣の内側に圧力を掛け剣を粉々にした。その反動で黒田は後ろに吹っ飛んだ。


「うわぁ!?」


 尻餅を着き黒田は倒れる。


「あれ? 剣が壊れちゃいましたね。流石に訓練用だから他の人との戦いでヒビが入ってたんでしょう。まあとにかくありがとうございました」


 レイはそう言いお辞儀をするとその場を後にし、教室へ向かうのだった。


 レイがその場からいなくなり、黒田は仰向けになり空を眺めていた。


(あれは、とてつもない殺気を感じたのはおそらく俺に本気を出させるためのもの……しかも彼女は全く本気を出していなかったし、完全に遊ばれていた。それに俺がこの前初めて使えるようになった黒い稲妻を彼女はすでに知っていた)


 黒田はクスクスと笑い始める。


「あぁ、世界は広いなぁ」


 黒田はまだまだ上があることを知り、嬉しそうにそう呟くのだった。



 教室に戻ったレイは席に着くと隣の雫から話しかけられた。


「お疲れ様。レイはどうだった?」


「適当に打ち合って剣を壊して試合終了かな?それにしても、あの先生結構強いよ」


「私は勝てなかった。すごく悔しい……」


 雫が頬を膨らませいじけているのでレイはある提案をする。


「雫ちゃんにもそろそろ魔力のちゃんとした扱い方教えてあげるよ」


「本当に!?」


「うん、対人戦はすごく良くなったしあとは魔力の扱いを覚えたら渋谷のダンジョンはソロで攻略が見えてくると思うよ」


「わかった! レイ、いつやる? 今からサボる?」


「そんな訳にも行かないでしょ? 今からサボったら後々めんどくさいよ」


「むぅ。残念」


 そんなやりとりをして、3時間目が始まった。

基本的に授業内容は普通の学校と変わらないため、しっかりとした内容の授業だった。

 そして全ての授業を終え放課後になり、雫とレイは帰路についていた。


「レイ、特訓はいつやるの?」


「今日は厳しいかも……」


「どうして?」


「あのダンジョン協会の会長さんからカメラドローンが送られてきたんだよね……だからダンジョンで試運転がてら配信して来いとのことらしいよ」


「分かった。私もついていく、操作方法を教えたら私は見えないところで観察しておくから」


「おっけー!じゃあ八王子にある小さめのダンジョンに今日は行こうか」

 

 二人はダンジョンに行く準備をするために一度家に戻った。

 そしてレイと雫はいつもの服に着替えて八王子ダンジョンへ向かう。


「ドローンって魔力で動くから壊れないか心配かも」


「確かに私のドローンはレイの魔力で壊された」


「うっ、言わないでよ。ちょっと後で調べたらあのドローン高かったから気にしてるのに」


「別にいい、最新版を買ったから」


 以前使っていた雫のドローンは日本円で約30万円だった。

 そして今回のドローンは最新型で50万円のドローンを買った。

 今回、レイに送られてきたドローンは雫の以前使っていたものと同じ物が無償で送られてきていた。

 

 そんな会話をしていると八王子ダンジョンの前に到着した。

 受付を済ませ第1層へ転移した。そこは赤色のスライムがぴょんぴょんと跳ねているのどかな野原だった。


「レイ、それじゃあ使い方を教える」


 そうしてレイの初めてのダンジョン配信が始まろうとしていた。


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