第25話 とある少女は弟子の実力を見誤っていた

「よーし、まずは準備運動だ!ペアでストレッチを始めてくれ!」


 教師達がそう言って生徒達はストレッチの準備をし始める。


「雫ちゃん、私別にしなくていいんだけど雫ちゃんはやる?」


「私はやる。ストレッチはしないと記録が落ちる」


 そうしてレイは雫の開脚前屈を手伝う。雫はとても体が柔らかく胴体が地面に簡単に着いた。


「雫ちゃん柔からいねぇ、全然辛そうじゃないし。私にはできないなぁ」


「……もしかして、レイは体が硬いの?」


「いっいや! そんなことはないよっ!? やっぱり私もそれくらい柔らかいかな〜? 本当だよ?」


 雫は思った、だと。すると雫はニヤリと笑い立ち上がってレイを地面に座らせる。


「やっぱりレイもやるべき。私が押してあげる」


「いや、本当に私はやらなくても…………いたたたたたたた!!!」


「……レイは尋常じゃなく体が硬い」


「えーん……いたいよぅ……」


 レイは雫に少し背中を押されただけで泣きべそをかいていた。そしてレイの地獄のストレッチが終わりまずは1500メートルの持久走をすることになった。


「雫ちゃんが先だね。私の為にもあんまり頑張らなくていいからね!」


「分かった全力で取り組む」


「話聞いてた!?」


 そう言って雫は教師の合図で走り始めた。


「頼むよ雫ちゃん……」


 レイはストップウォッチを握りながら祈ることしかできなかった。


 雫はどんどんと後方を突き放しそれに着いていこうとする者、諦めて自分のペースで走る者てばらけていき誰が1番早いかなどわからなくなった。


 そして300メートルトラックを5周してきた雫がスタートラインを越えるとレイはストップウォッチを止める。雫は汗を拭きながらレイの元に駆け寄ってきた雫にタオルを手渡す。


「お疲れ様雫ちゃん。タイムだけど4分ぴったりだったよ」


「やっぱり魔法を使わないと遅くなる」


「確かに魔法使えたら雫ちゃんは1分以内かもね」


「ほら、次はレイの番」


 教師達が次のグループの集合を呼びかけたのでレイはスタート位置につく。

 すると隣にはさっき話しかけてきた東雲裕奈だった。


「私、あなたにだけは負けませんから」


「……私、あなたに何かしたのかな」


「いえ、ただ私は曲がったことが大嫌いですので犯罪者の疑いのある人を良く思っていないだけです」


 そう裕奈が言った瞬間スタートの笛がなった。


「まぁ私は雫のペースに合わせますかね」


 そうしてレイは走り出した。そしてトラックを5周してスタートラインに戻り雫の元へ向かった。そして雫がタオルを手渡す。


「お疲れ様。レイのタイムは3分50秒だった」


「タオルありがとう。そっかぁちょっと早かったかな」


「敵わないって分かってても普通に悔しい」


「雫ちゃんは負けず嫌いだね」


「むっ……これからの種目手を抜いてでもいいから私と勝負。それでもし私が勝ったらレイには1時間ストレッチの刑」


「ちょっちょっと! それは無いよ〜!」


 レイは勝てば目立ち、負ければストレッチの、どちらに転んでも負けの勝負をする羽目になるのだった。


 そこからは一般的な能力測定と同じ種目をこなし、最後は戦闘能力を測定する種目になった。

 すると剣を持った黒田が前に出てくる。


「それじゃあ測定を始めるんだけど、Sクラスは俺と戦って俺が点数を決める。みんな、Sクラスの実力を俺に見せてくれ!」


「「「おおおおおーーーー!!!!」」」


 全員がやる気を漲らせ、テンションは最高潮になっていた。


「それじゃあ戦った人から教室に帰って行くように。それじゃあ一人目は誰から行く?」


 そうして戦闘能力測定が始まった。レイと雫は1番最後になるために後ろの方に行く。二人はクラスメイトの戦闘を見ながら雑談をしていた。


「ねえ雫ちゃん。雫ちゃんの記録って他の人より結構ぶっちぎりで高かったりしない? 私他の人の記録とか見てないんだけど大丈夫だよいね?」


「……………………大丈夫」


「えっ? 私まさか終わった感じ?」


「大丈夫、師匠は1番じゃないと面子が立たない」


「あっ終わった」


 レイはどんどんと灰のように白くなって行くのだった。時間が経ちそして順番は雫の番になった。


「お願いします」


「天城雫さんだね。よろしく」


 そうして雫と黒田の戦闘が始まった。雫は学校が始まるまでにレイに対人戦闘訓練を受けていたおかげで対人戦は以前と比べ物にならないくらい強くなっていた。


「くっ……!」


 黒田は苦しそうな声を出しながら攻撃を防いでいた。そして攻撃をいなし続け、隙をつき雫の剣を上に弾き飛ばした。剣は宙を舞い、カランカランという音を立てて転がった。


「はぁ……はぁ……ありがとうございました」


「あっ、ああ……じゃあ教室に戻っていてくれ」

 

 そうして雫は教室に戻るために歩いて行くのだった。

 そして黒田とレイの二人きりになった。


「じゃあ最後は氷川零さんだね」


「はい。お願いします」


 そう言いレイは訓練用の木製の剣を手に取る。


「短い……」


 レイはいつも使う剣よりも短いことに違和感を隠しきれずそう呟く。


「ん? 何か言ったかい?」


「いえ、いつも使用する剣よりも短くて違和感があっただけですので問題ありません」


「そうか。じゃあ始めよう」


 そうして黒田とレイの戦闘が幕を開けるのだった。

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