第24話 とある少女は普通に学校生活を送りたい
「とうとう来てしまった…………」
今日から授業が始まると言う絶望感でレイは現在制服姿でベッドに寝転がっていた。
────ピンポーン
「聞こえない……聞きたくない…………」
────ピンポンピンポンピンポン
「……ぬぁぁぁぁぁ!!!」
レイは鞄と鍵を持って一気に玄関まで走る。そして靴を履き扉を開けるとそこには雫がいた。
「おはよう、それじゃあ学校に行こう」
雫はレイの手を引っ張り外に出しレイの鍵を奪い鍵を閉めた。そしてそのまま手を引っ張りエレベーターの方まで歩こうとする。
「雫ちゃんもう諦めたから!逃げないから!」
そう言うと雫は手を離した。
「もし後一回インターホンを鳴らして出なかったら、窓を割って入ってた」
「危機一髪だったじゃん……」
そんなやりとりをしながらレイ達は学校に向かった。そして15分ほど歩くと学校の校門に着いた。そして今日が初めてと言うこともあり、案内係の人達が学年とクラスごとに別れていた。
レイはここで別クラスのところに行っでもバレないんじゃないかと言う無謀な策を実行しようとするが、
「レイ、私たちはSクラス。ほら早くいく」
「…………分かりましたよ……」
雫に先手を打たれその策は潰えたのだった。
そして案内の人の説明を聞き無事に教室の前に到着したレイは深く深呼吸をする。
(なるべく……なるべくっ! 目立たないようにっ! 周りの目とかは興味ないけど、めんどくさいのは嫌!)
レイは覚悟を決め教室の扉を開いた。レイが入った瞬間、先に教室に入っていたほとんどの生徒の視線がレイに突き刺さる。
(絡まれませんように……)
そしてすぐ目線は外され友達同士で喋り始めた。生徒が絡んでくることはなく、レイは無事に席に着く。40席あり、Sクラスは基本的に席は自由だ。レイ達は1番左後ろの2席が空いていたので隣同士に座ることにした。
「それにしてもこんないい席空いてることあるんだ」
「Sクラスは強いだけじゃなくて向上心もある人が多い。それにSクラスのほとんどはみんな配信者で顔見知りらしい。私はそんなの興味なかったから顔見知りの人はいないけど」
「はえ〜でもそれだと先生は大変だね。やる気があって自分より強いかもしれない人を教えないといけないわけでしょ?」
「その心配はないと思う。少なくとも私たち以外は」
「そうなの?」
「Sクラスの教師はあなたがよく知る人。それにあの人より強い人なんてここじゃレイくらいだし、そのレイの弟子の私以外はちゃんと授業を聞くメリットがある」
雫がそう言うと教室の前の扉が開かれる。そこから入ってきたのはこの前渋谷ダンジョンで遭遇した、黒田のおじさんだった。
「終わった……」
「なんで?あの時フードを被ってたからおそらくバレてはいない」
「そんな強い強い言われてる人の前で下手に魔法とか撃てないでしょ!? 戦い見られてたんだから、私だってバレるかもしれないじゃん!あぁ……高校生活結構余裕そうかもって思ってたのに……いっそのことこの街を氷河期にして休校させるか……」
レイは小声で静かに叫び机の上に顔を伏せる。
「レイのそれは本当にやりそうだから冗談に聞こえない」
雫がレイにツッコんだ。すると黒田が教壇に立つ。
「みなさん初めまして。私が2学年Sクラスを担任する
「うおおおお!!」
「やったぜぇぇ!!」
「よっしゃぁぁぁ!!」
レイと雫以外は黒田が教師になったことに歓喜して騒いでいた。
「まずは、全員自己紹介をしてもらおうかな。左の列から順番にお願いします」
そうして一人ずつ自分の名前、戦闘スタイルを言って行く。そしてレイの番がやってきた。
「氷川零です。戦闘スタイルは……なんでもできます」
レイが自己紹介をするとクラスにざわめきが起きる。
あいつって……
ああ……
あの指名手配の?
いや、でも取消されたって話だ。
などとあちこちから聞こえてくる。
「でっ、では次の人」
「はい。私は
戦闘スタイルは剣士です。後私は曲がったことが大嫌いです」
そうレイを見ながら言った。
「ふふっ、レイ嫌われてる」
「あんなあからさまに言わなくてもよくない?……」
そうして全員の自己紹介が終わった。そして黒田が今後の予定を説明する。
「よし、じゃあこの後1.2時間目はAクラスと合同で身体能力検査を行う。この後更衣室で着替え、グラウンドに集合するように」
そう言って黒田は教室を出て行った。
「レイ、更衣室に行こう」
「分かった。はぁ……雫ちゃん、能力測定雫ちゃんの数値に合わせてやってもいい?」
「正直に言うと本気でやってほしいけど、まあ私の能力前後でいいんじゃない?」
「ありがとう雫ちゃん……!!」
レイがパァァ!と言う効果音が出そうな表情をし雫と一緒に更衣室に歩いて行った。
更衣室でジャージに着替え終わるとレイは後ろから声を掛けられた。
「ねえ」
「はい、あっ……さっきの私の次に自己紹介をしてた人」
「東雲裕奈です。いきなりですがどんな手を使って指名手配を取消させたのですか?」
「どんな手って……単純に私はやってないし、証拠不十分だからだけど……賄賂とかはしてないよ」
「フンッ、果たして本当でしょうか。今は納得しておきますが、嘘だった場合は承知しませんから」
そう言って東雲裕奈は歩いて行った。
「ねえ雫ちゃん。やばいのに目付けられたかな」
「あの人は正義感が強い。実力も次の四天王候補と言われるほどの実力者」
「終わったじゃん……関わったらダメなやつじゃんっ! 本当に目立たないようにしないと私のまともな学校生活は本当に終わる……!」
レイはなるべく目立たず、そして東雲裕奈にあまり関わらないようにしようと心に決めるのだった。そしてグラウンドに整列し、教師達の説明が始まった。
「それじゃあまずは男女に分かれて二人組になってくれ!」
黒田がそう言うと、列を崩しペアを組むために移動する。
「雫ちゃんは私とだよね?」
「当たり前」
そうしてレイは難なく雫とペアを組むことに成功する。
そしてペアが全員決まり、いよいよレイにとっては第一関門である能力測定が始まったのだった。
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