第16話 とある少女は世界に知られる
「ねえ、ちょっと携帯電話貸してくれない?」
レイがそう話しかけた瞬間、彼女は目をギョッとさせて後ろに飛び距離を取る。
そして彼女は警戒しながら話しかける。
「だっ誰?」
「まあそんな事はどうでもいいでしょ」
レイは彼女にを鑑定を発動する。しかし以前アイネ達はなるべく本人の許可無く鑑定しないようにしていると言っていたので、名前とレベルだけの鑑定をする。
ステータス
レベル290
(レベルが290って相当高くない? 攻略の最前線の子なのかな。でもこの子の実力でもここをソロ攻略するのは厳しいも思うんだけど、あの子の周りをフヨフヨ浮いてるボールみたいなのが何か彼女を強化してるのかな)
「それで? 携帯電話は貸してくれるの?」
「スマホのこと?貸す理由を教ないと無理」
「ちょっとこの間戦ってる時に壊れたの。だから今情報を得る物何も無くて困ってるの」
「まぁ……そういう事なら……でも何か変なことしないように私も一緒に見るから」
そう言って雫は渋々スマホを渡す。
「……わかった」
(まぁ、もし正体がバレたら気絶させて転移門に放り込んだらいいでしょ)
そう無理やり結論づけた私は、スマホを操作する。たしかこんなアイコンだったよね。
「……なんでメモ帳開くの?」
「えっこれメモ帳?アイコン似てるからわからなかった」
「いや、似てないでしょどう見ても」
「もうわかんないからちょっとネットで記事とか調べれるやつ出してよ」
「はぁ……ブラウザのこと?わかった」
「ありがと。で、どこから調べるの?」
「……あなた本当に現代の人間?」
「機械に疎いんだよ」
そうやり取りをして、私は≪ひかわれい しめいてはい≫という文字をぽちぽちと2分かけて打ちこんだ。
そして出てきた記事の内容を見る
≪高校生探索者 氷川零 指名手配≫
9月15日、渋谷ダンジョンにて人気ダンジョン配信者の一条に対して、魔物を押し付けて逃走しようとした。しかし一条の圧倒的強さに敗北し、そのまま魔物と共に逃走。
現在も逃走を続けているため探索者協会は氷川零を指名手配犯に設定し、探索者達に確保を呼びかけている。
「ふーん。そんな事になってるんだ」
流石に調べるところは見ていなかった雫だがレイの反応が気になりスマホを覗き込んだ。
「何調べて……っ!?」
雫はスマホの画面を見た瞬間、一瞬で剣を抜き至近距離のレイに斬りかかる。
しかしレイは剣を鞘から半分ほど出してその攻撃を防いだ。
「いきなり攻撃するなんて、びっくりするなぁ」
「はぁ……はぁ……あなたが氷川零?」
「だとしたらどうするの?」
「二つ聞きたいことがある。それと探索者の義務として、あなたをダンジョン協会に連れていく」
「質問には答えれるなら答えるけどこんな記事をみて、はいそうですかってダンジョン協会に行くほど私はバカじゃないよ。ほらっ質問って何?」
そうして雫は後ろに飛び退き話を始めた。
「1週間前の吹雪、あれはあなたがやったの?」
「……えっ? いっいや、わっ私じゃないけど!ちっちなみにその吹雪がどうしたの?」
「私達が60層のボスをレイドパーティーで攻略していた時、猛吹雪が私たちを襲った。それにほとんどの人の装備が凍って亀裂が入って壊れたし、体が凍った人もいた。でもいきなり氷が消滅したから私は魔法だと思っている。さっきの氷魔法といいあれはあなたがやったんでしょ」
そういう雫をフードで顔が見えない状態で見ていたレイはというと
(バレてるぅぅぅ! 完全に確信されてるぅぅぅ!ここで変に誤魔化しても面倒くさいしここは肯定の姿勢でいこう!多分大丈夫なはず)
「そう、あれは私がやったよ。ごめんねあの時テンション上がっててまさかそんな所にまで影響してたなんて。で? もう一個は何?」
「あの一条の記事、あれは本当の事?」
「……私の記憶にはないね。逆に一条に突き飛ばされて魔物を押し付けられた記憶ならあるけど」
「……正直、あなたも一条もどっちの言い分が正しいかは分からない。でも今はダンジョン協会の指示通り、あなたを力ずくでも確保する」
「まぁ、それがルールなんだったら仕方がないんじゃない? でも私も無抵抗で捕まる訳にはいかないよ? 多少の怪我は覚悟してね」
レイがそう話すと雫が剣を抜き構える。それを見ていたレイは雫の上に浮いている球体の存在を思い出す。
「あっ私からも質問していい?」
「……なに」
「その浮いてる丸いのって何?自分を強化したりするの?」
「?これは配信録画用ドローン。あなたの事件をきっかけに配信か録画を探索中は絶対にしないといけない法律になった。私のこれも今は配信中、だからあなたがここにいる事は全世界にバレてる」
「……そう、なら尚更捕まれなくなったよ。とりあえず君を戦闘不能にして転移門に放り込むことにするよ」
「やれるものならやってみるといい」
そうして雫とレイの戦いが始まった。
雫が一瞬でレイに接近し剣で攻撃する。レイは攻撃を防ぎながらどうすればバレずに1層までいけるかを考えていた。
そして雫は超高速で攻撃を繰り出す。レイはその攻撃を一歩も動かずに防ぎ続け、懐かしい思いに浸っていた。
「ふふっ」
(懐かしいなぁ、初めてアイネさんに教えてもらった頃の私の剣によく似てる。第二位階ですらないけどレベルが高いから私の昔のスピードに近いけど威力は全然足りないかな。ふふっあの人たちもこんな気持ちだったのかな)
「はぁ、はぁ、何がおかしい?」
「あぁ。ごめんね?あなたの剣筋が昔の私そっくりだったからちょっと懐かしくなっちゃって。いいことを教えてあげよう。君の剣には意思がこもってない」
私はそう言い剣に魔力を少し込める。そして雫の剣が私の剣に触れた瞬間、黒い稲妻と共に雫の剣は弾かれ雫は体ごと後ろに吹っ飛んだ。
「っ!? 今のは何?」
着地した雫が冷や汗をかきながら問いかける。
「もうちょっと頑張れば多分君にもできるよ。まだ力が足りないだけ」
私は思ったことをそのまま口に出した。すると、自分が鑑定されそうな感覚を感じ取るが私はそれをブロックし実際に鑑定をされることはなかった。
「このまま大人しく帰ってくれるなら、私は危害を加える事はないよ。嘘は言ってないからね」
「いや、私の探索者のプライドに掛けて退く事はしない」
「……そう、じゃあちょっと痛くても文句言わないでね」
レイはそう言い、次はレイの攻撃のターンになった。
(せっかくだし、加減をどこまですればいいかを検証でもしながら戦おうかな)
そして、レイは剣で攻撃を始める。そして雫は苦しいながらもなんとか攻撃を防いでいた。
ふとレイは雫が魔力の流れを見て頼りに攻撃を防いでいることに気づく。
「本当に昔の私によく似てる」
そう私はぼそっというと足元に流れる魔力を無くし、雫の懐に膝蹴りをする。
「がっっっ!?」
そして雫が崩れ落ち、悶絶しながら
そして私は少し離れ雫に語りかけた。
「君は魔力を見過ぎだね。もっと実際の視点も使って戦うといいよ、でも今回は相手が悪かったね、私スカート履いてるし」
『…………ウォーターサークル!!!』
そんな声が聞こえた瞬間水の檻がレイを囲むように現れた。
「およ?」
「ぜぇ……ぜぇ……この檻は超高圧の水圧が通ろうとするものを斬り刻む、だから大人しく投降して」
雫はうずくまりながらもそうレイに言い放つ。
レイは収納から昔探索者を始めた頃に使っていた剣を水の檻に向かって投げる。すると剣は粉々になり周囲に散らばった。
「本当だ。スパスパ切れるね」
「そう、だから大人しく連れて行かれることを約束して」
雫はそう言いながら近づいてきた。
「 ごめんね、本当に私は今捕まる訳にはいかないからあなたを気絶させて逃げるね。ちゃんと転移門に放り込むからそこは安心して。あとその丸いの魔力で動いてるから壊れるだろうけど許してね」
そう言った瞬間空間にノイズが走り歪み始め、ドローンは煙を吹き地面に転がった。
「なっなに!?何が起きてるの?」
『第一位階≪事象干渉魔法≫《レーツェル》』
その刹那、水の檻は氷漬けになった。レイは凍りついた檻を蹴って壊し、雫に向かって歩く。
「そっそんな、あり得ない……他人の魔法に干渉して自分の魔法に塗り替えるなんて……あなた本当に氷川零なの!? 本当は魔王とかじゃないの!?」
雫は後退りしながらそう言う。
「私は正真正銘氷川零だよ。ただちょっと色々あって強くなっただけだよ。それじゃあ携帯電話貸してくれてありがとう。また会うことがあったら次はご飯でも奢るよ、バイバイ」
そういってレイは雫の体内を巡る魔力の流れを一時的に不安定にする。それにより雫はひどい車酔いのような症状になって耐えきれなくなり気絶した。
「よし、それじゃあこの子を送って逆走を再開しますか!」
そう言ってレイは雫を背負って、各階層に一つある帰還用転移門の方へと向かっていくのだった
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