第20話 とある少女は弟子を取る
部屋に案内され、私は部屋に着くなりぼすんと言う音を鳴らしてベッドに飛び込む。窓を見るともう空は暗くなっていた。
ちなみに部屋は雫と同室で、一応逃げないように監視の意味も込めているらしい。
「ふあああ……久しぶりのベッドだぁ……」
「レイはダンジョンにある間はどうやって寝ていたの?」
私がベッドの柔らかさに感動していると、雫が質問してきた。
「うーん……基本は結界を張って寝袋で野宿かな、木の上とかにいい場所があったらそこで寝たりしてるよ」
「そうなんだ、私はまだダンジョンで寝泊まりしたことない」
「結構いいもんだよ〜? 渋谷ダンジョンの65階層とかは星が満天の草原だったし、そこでの焚き火は格別だったなぁ」
「羨ましい。私も一回はやってみたい」
「雫ちゃんが65階層までいけるくらい強くなったら一緒にやろうよ」
「わかった、約束」
そんな他愛のない会話をしていると扉がノックされる。
そのノックには雫が対応してくれた。そして会話を終え戻ってくる。
「レイ、あなたの指名手配が解除されたこれですぐに捕まることはない」
「ほんとに? じゃあちょっと外歩こうよ。お腹すいたから久しぶりに地上でご飯食べようと思って」
「わかった。どこに食べに行く?」
「雫のおすすめで。どんなのがあるのかとか忘れちゃった」
「じゃあ、ハンバーガーを食べに行こう」
「ハンバーガーかそんなのもあったねぇ。いいねじゃあ今すぐ行こう! でもさきに魔物の素材を換金しないと。私、今無一文だった」
「ハンバーガーくらい別に奢る」
「いいの? まあ次に会ったらご飯奢るって言ったけど」
「私はダンジョン探索者の中でも実力は上の方。だから普通人より稼いでる。だからその約束は今度でいい」
「じゃあお言葉に甘えようかな。ありがとね」
そう言って私はローブを羽織りフードを深く被って雫と夜の街へ繰り出した。
ダンジョン協会からすぐ近くにそのハンバーガーショップはあるのでそこで食べることになった。
メニューは雫のおすすめで頼んでもらい、私は忘れていた味を久しぶりに感じ、一心不乱に食べていた。そして食べ終わり、二人で店を出る。
「いや〜久しぶりに食べたけど、あんな美味しかったんだなぁ、ハンバーガー」
「喜んでもらえたようで何より」
「およ? あれは何だろう」
レイは雫と話しながら歩いていると、視線の先に人だかりができていて、そこには飲み物屋さんとその前にある直径1メートル程の大きい鉄球があった。
「あれは今話題の飲み物屋さん。あの鉄球を持ち上げられたらあの店の商品券が10万円分貰えるらしい。でもいまだに持ち上げられた人はいない。私もやったことは無いけど身体強化系の魔法は得意じゃないから多分無理」
「はえ〜」
雫が細かくお店のことを説明してくれる。
そしてそれを聞いたレイはお店の方に歩いて行く。
「レイ? あれをやるの?」
「うん、雫に奢ってもらったからそれのお返ししようと思って」
「でもあの鉄球は噂では2トン以上あるって噂。いくらレイでも厳しいと思う」
「まあまあ、やってみないとわかんないでしょ、店員さーんあの鉄球持ち上げていい?」
レイは店員に話しかけた。すると店員のおじさんは驚いた顔をする。
「フード被っててわかんねぇけど多分あんた、女の子だろ? あれを持ち上げるのは無理だと思うけどなぁ〜」
「まあまあ、やってみなきゃわかんないでしょ。魔法使っていいんだよね?」
「あっああ……身体強化なら使ってもいいけどよ……」
そう言って鉄球の前にできた人だかりをかき分けて進んで鉄球の前に立つと、周りからは
「次の挑戦者だ」
「フード被ってて顔はわかんねえけど多分女か?」
「いや、女には無理だろあんなの」
観客達は否定的な意見ばかりだった。
そんな観客を横目に私は【魔装】を発動する。そして鉄球に触れた瞬間バチバチと音を立て小さな黒い稲妻が手に纏い、レイは片手で軽々とその石を高々と持ち上げた。
「よっ!」
その瞬間レイはとてつもない歓声を浴びる。そっと鉄球を下し人混みを掻き分けて、店員さんの方へ戻る。
「ね? どうなるかわからないでしょ?」
「あっああ……それじゃあ十万円分の商品券だが店の安全を考えて郵送にしてるんだ。だから住所と名前を教えてくれ」
「いや、商品券はいらない。その代わりに今飲み物2本無料にしてよ」
「そんなんでいいのか?」
「私は今それが1番嬉しいよ」
「よしわかった、特大サイズで入れてやる!それにクレープもあるからトッピングも大量に入れて作ってやる!」
「いいねぇ!そう言うのを待ってたよ!」
店員と無事交渉成立したレイは、特大の飲み物とトッピングがたくさん乗ったクレープを二つずつもらった。
「またね!おじさん!」
「おう!またこいよ!」
そう言って別れを告げた後、雫の元へ駆け寄る。そしてあるきながら人が少ない道を歩いてダンジョン協会への帰路に着く。
「はい雫ちゃんどうぞ」
「ありがとう。それにしてもすごかった片手で持ち上げるなんて」
「そんなことないよ結構簡単だよ? 雫ちゃんもすぐできるようになるよ」
「……あっあのレイ!」
突然、雫が立ち止まり大きな声でレイを呼んだ。
「どうしたの?」
「よければなんだけど、私に戦い方を教えて欲しい。私はまだ、もっと強くなりたい!」
普段の雫からは想像できないような緊張した表情でレイにお願いする。
「いいよ。でも教えた内容とかは秘密にしてね。普通の人がやると結構体への負担がすごいから」
「秘密にするけど……本当にいいの……?」
「いいよ、誰かが困ってたらなるべく助けてあげないとダメだって
レイのその言葉に雫は何か引っかかった。
「先生?」
雫がそう言うと少し走ってから後ろを振り向く、その時フードが外れる。
「ふふっ、ねぇ雫ちゃん。私がもし≪神様の教え子≫だって言ったら君は信じる?」
雫はレイが話す時、レイの声以外の全ての音が消えた気がした。
そしてそう言った時のレイの笑顔は街灯と相まってきらきらと輝いているように見えた。
あとがき
ここまでご覧いただきありがとうございます!
これにて第二章は終了です。第三章はレイが世界でどんどんと有名になっていきますのでお楽しみに!
最近は見ていただける方や評価をくれる方もどんどんと増えていき、とても嬉しい限りでございます!
この小説が面白いと思った方は、星で称えたりハートで応援、フォローをいただけると更なるモチベーションとなります!
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それではまた次の話でお会いましょう!
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