新生活編
第21話 とある少女は家を手に入れる
翌日私たちはまた会長室にいた。そして机の上には部屋の間取りが書かれた書類が山積みになっていた。
「今、用意できる部屋はこのくらいだ。範囲は都内に絞っている」
「いや、多いなぁ」
レイは机に突っ伏した。
「まぁ、この山は保険みたいなものだ。本命はこっちだ」
そして宗一郎は書類が20枚ほど挟まったファイルを手渡す。
「これは?」
「これは君に4月から通ってもらう予定の新設された【八王子探索者育成高校】の近くの物件だ」
「探索者育成高校? 私はそこに行くの?」
「ああ、これは探索者を志す高校生にカリキュラムを受けさせるためにダンジョン協会が創設した学校だ。
普通の高校と同じように高卒の資格も得られる為、東京の探索者志望の高校生は今年度から殆どここに転校している。
そこの天城雫も4月からそこの生徒の予定だ」
ふとレイは横を見ると雫がピースをしている。そしてレイは宗一郎に視線を戻した。
「わかった。そこに通うけどいいの? 私ついさっきでは犯罪者だけど」
「法律上はなんら問題がない、逆に行かない方が問題がある。安心しろ、カリキュラムは基本戦闘訓練や演習ばかりだ」
「そっちの方が心配だよ……手抜くの結構めんどくさいんだからね?」
「まあそこは頑張ってくれ」
「はあ……わかりましたよ……」
レイはそう言うと書類を手に持ち物件を見ていく。そして物件を見ている途中、雫が何かを見つけ声を出した。
「あ、そのマンションの家私が住んでる所と一緒」
「この1LDKのお家?雫ちゃんお金あるからもっといいところに住んでると思ってた」
「私が元々住んでた所はこの学校に行くには遠すぎる。それに1番通いやすそうだからここにした。レイもここにするといい」
「じゃあここにするか〜」
雫の提案に乗り、案外あっさりと物件が決定した。
「よし、物件が決まったようで何よりだ。今日書類を書いたら手続は午前中に終わらせ、午後には住めるようにするがどうする?」
「それなら今から書類書くよ」
「それでは電子と紙、どちらに記入する? 紙の書類は一度電子に打ち込む作業が入るが、あまり手続き作業速度に変わりはない」
「う〜ん、それじゃあ打ち込むのも面倒臭いだろうから電子にし────「紙でいい!!」」
私が電子で打ち込むと言おうとすると雫が大声で横から会話に入ってくる。
「しっ雫ちゃん?」
「紙でいい。電子にしたら今日はここから出られないと思った方がいい」
雫がレイを睨みながら言った。
「わっ分かったよ……紙に書くよ……」
そして用意された紙に必要事項を書いて、宗一郎に渡した。
「よし、確かに受け取った。これでおそらく午後には手続きが終わるからその時に連絡しよう。あの時渡したスマホは持っているか?」
「うん、ほらあるよ。これでしょ? 携帯電話」
そうしてレイはスマホを収納から取り出しスマホの画面を宗一郎に向ける。しかしそこに写っていたのは、充電切れの文字と0パーセントになった電池の表示だった。
「…………雫に連絡しよう」
そうして宗一郎は雫と連絡先を交換し、レイは雫と共に八王子にある物件に向かっていた。
「それにしても、あの素材達は凄かった」
「そう?40階層くらいの素材だけだから大したことはないと思うけど」
「40階層はそもそも行ける人が少ない。だから素材が出回る量も少ない」
「ふ〜ん」
レイはダンジョン協会を出る前に、魔物の素材を換金していた。
その時に出した素材は第40〜50階層の素材ばかりで、受付達は大層混乱して慌ただしく動いていた。
そしてその換金した額はしばらく遊んで暮らせるほどの金額になった。
「それにしてもスマホ、充電していないとは思ってなかった」
「充電? そっか、充電しないとダメだったのか」
レイはそう言うと、おもむろにスマホを取り出し右手の人差し指に雷魔法を纏わせる。そしてスマホに近づけようとした瞬間、雫に腕をかなり強い力で掴まれる。
「なっなにさ……」
「今何しようとしたの」
「いや、充電しないとって思って」
「普通は雷魔法なんかで充電はしない、付属の充電器があるでしょ。それにあなたの雷魔法はスマホに当てた瞬間おそらく爆発する。2度としないで」
「わっわかりました……」
雫に鬼の形相で怒られ、レイはただ頷くことしかできなかった。
そして色々あったがレイは八王子の物件に到着した。そして携帯を充電するために雫の家にお邪魔することになった。
雫の部屋は、無駄なものがあまりないシンプルなものになっていた。そしてリビングで充電をさせてもらい、充電がある程度貯まりスマホが起動する。その通知欄には凪の文字があった。
そのことを伝えると、
「私は一旦出るから電話するといい。電話はここを押すだけでできる」
そう言って雫は自分の部屋に入って行った。私は凪ちゃんのトーク欄を開き電話をかける。
しかしレイは間違えてビデオ通話をかけてしまった。そして1コールも経たないうちに電話がつながった。
『レイ!? レイなの!?』
「うん、久しぶり」
『久しぶりじゃないよ! どうして連絡返してくれなかったの? それにその髪……』
「ごめんね、携帯電話壊れちゃってさ、あっ今はスマホっていうんだっけ。スマホが壊れちゃって連絡できなかったんだよね。それで使えるようになってすぐに連絡したんだよ? それと髪の毛は色々あってこうなっちゃった」
『そうなんだ……ねえ今日どこかで会えない?』
「私は今八王子にいるけど……」
『そうなの!? 私も今八王子にいるの! カフェの位置情報送るから後で集合して、そこで話さない?』
「いいよ。それじゃあまた後でね」
そう言って電話を切ると雫が部屋から出てきた。
「丁度さっき協会から私に連絡があって、お家の手続きは終わったみたい。部屋は私の真下らしい」
「そっか、じゃあ家具とか適当に買って来ようかな」
「私もついて行く」
「退屈だよ?」
「大丈夫。監視の意味も込めてるし、それに私はあなたの≪弟子≫。師匠にはついて行くのが筋」
「……そうかい、この物好きめ」
そうしてレイ達は家を出て、生活必需品が色々と揃っているショッピングモールに向かうのだった。
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