第11話 とある神達の会議にいる愚かな者

 そうして亀裂に入るとおそらく会議の会場がある部屋の前の両開きの扉の前に着いた。

 すると迎えに来た案内人が説明を始める。


「到着いたしました。アイネ様はいつものように玉座に、レイ様は玉座の横の壁際にて待機していただきます」


 そう言われ扉が開けられる。するとそこは物語でよく見るお城の王に謁見するときのような玉座の間だった。

 しかし大きさはそれの数倍はあるそして、アイネが座るであろう玉座の向く方向には、今回出席した神達が椅子に座っていた。


(すごい人数だ……それに一人一人のオーラがとてつもなくすごい)


 そう想いに耽っていると、案内人の男性が私に話しかけてきた。


「この会議は、玉座に近いほど位の高い者が座っています。アイネ様は高位の神達の関係は非常に良好です。

 つまりは、アイネ様に忠誠心が高い者が多いということです。ですので突然襲われることはないと思われますのでご安心ください。

 しかし稀にここて戦闘が起きることがありますので、その時はお守りさせていただきます」


 そう言った案内人と私は壁際に向かい、これから始まる会議を見る。


 そうしてアイネが玉座に向かっている時に、最前列の二人の女の子達がアイネに抱きつく。

 

「アイネ久しぶり〜!!」


「お久しぶりです、アイネさん」


「久しぶり二人とも〜!元気してた?」


 私が仲が良さそうに雑談をしているアイネ達を見ていると、案内人が二人のことを説明してくれた。


「あちらのお二人、初めに挨拶した方が≪時の神≫クロノ様です。そして次に挨拶したのは≪豊穣の神≫エルデ様です。お二人はアイネ様をとても慕っておられる方達です」


 クロノはロングヘアーの黒髪に黄色の目をしていて、エルデは水色の髪と目をしていて長い髪をおしゃれにまとめている。二人ともこの世のものとは思えないほど綺麗な顔だった。


 そうして雑談が終わりアイネが玉座の前に立った瞬間、一斉に神達が立ち上がる。


「みんな久しぶり。これから世界の情勢を報告、議論する会議を始めたいと思います。それじゃあみんなよろしくね」


「「「ハッ!」」」


 アイネが開始の挨拶をし皆が一斉にその言葉に応えた。


「それでは始めます。司会は私≪平等の神≫ヴェリテが勤めさせていただきます」


 そして法衣のようなものを着てキリッとした表情の女性が司会の挨拶をして、会議は始まった。


 会議の内容は、魔族と人族のパワーバランスの提案や禁忌を犯したものの処分の報告など、様々な内容であった。

 それをアイネは素早く判断をして捌いていく。そうやって会議は進んで行った。


 そうして報告が終わり、


「それでは続いて≪罪の天秤≫を行います」


 そう言った途端、玉座の間にとてつもない緊張感が漂った。そのままヴェリテは話を続ける。


「今回の罪の天秤にかけられる者は一人です。まずは世界≪フォルトゥーナ≫を管理する下級神【ユウヤ】、前に来なさい」


「チッ。なんすかぁー?俺なんかしましたぁー?」


 そうやってユウヤが悪態をつきながら偉そうに歩いてきた。


 そうして玉座の一つ下の段に立ち、アイネの尋問が始まった。


 アイネはヴェリテから渡されたユウヤの経歴などが書かれた書類に目を通し読み上げていく。


「え〜っと? 下級神ユウヤ。元は別世界からの召喚者、魔王の脅威が許容値を超えた為人間側が彼を召喚。

 そこから魔王を倒し世界を平和に導いた。そして寿命で老衰した後、功績を買われ下級神になる。

 しかしそこで、自分の都合で世界に影響を与え、フォルトゥーナをはじめとする3つの世界の安寧を崩し、その世界の者達を破滅に追い込んだ。

なるほどねぇ、ユウヤ何か弁明はありますか?」


「べつにねえっす。てか俺は神なんだからあんなただの人間達の世界なんか別に好き勝手やってよくないすかぁ?」


ユウヤはニヤニヤとしながらそう言う。


「……そう」


アイネは呆れたように言った。


「てか、俺への罰ってなんすかぁ?どうせ格下げとかでしょ。てか魔力も感じないあんたが随分と偉そうっすねぇ。その場所変わってあげましょうかぁ?」


 ケタケタと笑いながらアイネを煽るユウヤ。


 その横でアイネを慕う者達は相手を殺せるのではないかというほどユウヤを睨んでいた。

 それにアイネは別に魔力が当然ないわけではなく、上位の存在になっていくほど辺りに与える魔力の影響は大きくなっていくため上位の存在は意図的に、魔力を隠すようにしているのだ。しかしユウヤはそのことを知らずにアイネを煽っていた。


「...君は典型的な者だね。そんな君は世界を管理するにはふさわしくない。それに世界の人々を破滅に追い込んだ。

 よって君への罰を宣告する。罰は。これは魂ごと処分されるため、存在が許されない。よって転生もできないし、君の存在は全て消されることになる」


「……は?」


 アイネの言葉にユウヤは唖然としていた。


「いやいや、ただ世界をミスって3つ潰しただけだろ!?」


「そのただの世界を私達は大切にしている。最初に説明されただろう?」


「ぐっ……けどよぉ!?魔力もねえお前ら如きに俺が倒せんのかよ!?よく見たら1番前の奴らも魔力を感じねえじゃねえか!なんだよ!最高神ってやつはコネでなれんのかよ!ギャハハハ!」


 そう馬鹿にするように言ったユウヤに対する反応は様々だった。

 下級神になって間もない者達はアイネ達の実力に疑問を抱き、歴が長い下級神と上級神は、青ざめた様子で最高神達を見て下を向きガタガタと震えていた。

 最高神は一周回って冷めた目でユウヤを見ていた。そして先程アイネをバカにしたユウヤを睨んでいたうちの一人であるクロノはアイネにある提案をする。


「ねえアイネ、ちょっとここらで久しぶりにみんなの気を引き締めさせたほうがいいんじゃない? アイネのことを知らないような新入り達もいるみたいだし、私も流石に慕っている人が馬鹿にされるのは許せないよ」


 そうクロノが言った瞬間、アイネをよく知らない新入り達は疑問を浮かべ、アイネを知る者は顔を青白くし凄まじい速度で首を横に振って拒否の姿勢をアイネに訴えかけていた。


「そうだね、一回みんなに喝を入れようかな」


 そういうとアイネは玉座から立ち上がり全員に向かって、


「全員頭が高いな。跪きなさい」


 すると、玉座に近いほどすぐに跪き、遠くなるにつれ跪く数は減っていった。


 それを見たアイネはため息をつき、


「……もう一度言う、


 その様子を見ていた案内人がいきなり結界をレイの前に何重にも張った。

 その刹那、アイネの目がうっすらと光り、玉座の間全体の空間が歪むほどの


 その魔力の圧が玉座の間にいた神達全員に降りかかる。

 ある者は気絶し、ある者はガクガクと震えることしかできなかった。


 そしてレイの前に張られた結界は瞬く間に割れ、残り一枚にひびが入ったところでなんとか耐えることができた。


 そのもろに魔力を浴びたユウヤは顔を真っ青にし、腰を抜かして後退りをしていた。


「なっなんだよ……なんだよその魔力量は!!!」


「……これから消滅する相手に教えることはないよ」


 アイネがもう話すことはないと言ったように突き放す。 


「これより、【下級神ユウヤ】を消滅させる。異論は認めない、ここでは私が


 そうしてアイネはユウヤを魔力で囲い、


『≪破滅ルイン≫』


 そう唱えユウヤに手をかざし、魔力で握りつぶす。


 そうして断末魔も聞こえる間も無く、ユウヤはどす黒い魔力の結晶になる。

 そしてその魔力結晶を地面に転がし踏み潰す。


「これで会議は終わりだ。各自解散するように。気絶した者は近くの者が連れて帰りなさい。

 あと地球を管理する【アプフェル】は私の元に来なさい。以上、解散!」


「「「「ハッ!!!」」」」


そうして波乱の神達の会議が幕を閉じたのだった。

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