第29話 とある少女は迷惑系配信者をボコボコにする
「あれ……どうやって配信つけるんだっけ」
レイは八王子ダンジョンに着いたものの、配信の付け方を忘れて困っていた。
しばらくすると配信者らしき大人の探索者パーティーが転移門のところにやってきた。
レイはそのパーティーのところに小走りで近づき話しかける。
「すみません。ちょっと良いですか?」
「はい、何でしょう?」
「あの、これってどうやって電源をつけるんでしたっけ」
「ええと、それはドローン本体のスイッチを押せば電源がつきますよ」
「あっこれですね!ありがとうございます!」
レイがお礼を言うとパーティーの人たちが温かい目でレイを見る。
「フードを被ったお嬢さんは今回が初めてのダンジョン探索なのかい?」
パーティーのうちのメガネをかけたお兄さんが問いかけてきた。
「いや、ダンジョンにはよく来ますよ。
ただちょっとこういう機械がすごく苦手で使い方とかすぐ忘れちゃうんですよね……」
「そっか、誰にでも得意不得意あるよね」
お兄さんはそう言い笑った。
「あっそうだ、お嬢さんに一つ忠告と言ってはなんだけど、最近このダンジョンには『迷惑系配信者』がいるって話だから気をつけてね」
そう言ってお兄さん達は転移門に入って行った。
「迷惑系配信者? なんだろそれ」
レイは言葉の意味がよくわからず特に気にせず転移門へ入るのだった。
レイは以前のスタンピードで17層まで到達したのでそこに転移する。そこは以前と変わらずいくつかの小さい林がある野原だった。
レイは教えてもらった通りにドローンを起動して配信をつける。
コメント閲覧用の腕輪は以前レイがぶっ壊して以来まだ新しいのは買っていなかった。
レイはコメントや視聴者数には興味がないので新しく買うのは勿体無いと思っていた。
「よし、ドローンは無事飛びましたよと。まあ配信できてなくてもできてるか分かりませんでしたって言えば問題ないでしょ」
そうしてレイはドローンから意識を外し辺りを見渡す。すると林の入り口の影に猪の魔物が数体群れでいるのを発見する。
「まずは準備体操しないとね、今日は25層くらいまでスムーズに行けたらいいな」
現在時刻午後5時、帰宅予定時間は午後6時半なのでレイは小走りで猪に近づき日陰なので黒の剣でまるで踊っているかのように美しく首を飛ばし倒していく。
「よし、このまま次の階層に向かおう」
レイは小走りのペースで次の階層の入り口を探していくのだった。
そうして約1時間が経ちレイは現在23層の巨大な木の樹海エリアに来ていた。
そこにいるのは巨大な熊の魔物が多いらしい。レイはその熊を5体ほど狩ったところで、いきなり木の隙間を縫って投げナイフが飛んできた。
レイは剣を上に振り上げ投げナイフを弾いた。そしてその投げナイフを鑑定すると麻痺毒が付着していた。
すると奥から投げナイフを飛ばしてきたであろう下面の男が現れる。
「みなさーん!今回の獲物はこの人にしたいと思いまーす」
その仮面の男は腕輪のコメントが見ながらレイに近づいてくる。
「だめですよ〜。一人でこんなところに来ちゃ〜、俺みたいな配信者に絡まれちゃいますよ〜?ギャハハハハ!! じゃあ今回はどんな痛めつけ方をして欲しいかコメントで募集しまーす」
「……あなたがさっき聞いた迷惑系配信者ってやつ?」
「あ? そうだよ! 俺は【ドラゴン】。探索者をコメントで募集した痛めつけ方で探索者をボコボコにして装備や素材を奪ったりしてんだよ!それでお前が今回のターゲットってわけ」
「…………ふーん、なんか名前ダサいけど頑張ってね」
レイはその場を立ち去ろうとする。その瞬間ドラゴンが斬り掛かってきた。
レイは剣を抜き余裕で受け止める。
「……なにさ」
「逃げんなよ、言っただろ? 今回お前がターゲットだってなァ! それで今回はお前を細切れに切り刻むのが決定した!!」
ドラゴンは目に見えないほどのスピードで連撃を繰り出す。
だがレイにとっては威力は弱いし、反応してから防げるので避ける必要のないものは避けずに体に当たりそうな攻撃だけを的確に捌いていく。
「なっなんで当たらねぇ!!」
「うーん、ずっと弱いものいじめしてるから、実力がついてないんじゃない?」
「……殺す」
ドラゴンはさらに攻撃のスピードを上げるが、正直レイはもう飽きていた。
攻撃を捌いているとスマホが震えたので、片手で剣を避けながらスマホを見ると雫からメッセージが来ていた。
『レイ、そいつは顔を隠して人を痛めつける快楽犯。そいつを適度に痛めつけてからダンジョン入り口まで持ってきて欲しい。警察はもう手配されてる。私も今八王子ダンジョンに向かってる』
レイはそのメッセージを見てから少しやる気が出た。
「おいテメェ! 何スマホなんか見てやがる」
「いや、君をボコボコにして捕まえて欲しいってお願いされてね? だから覚悟してね」
レイがドラゴンの剣が地面に近づいた瞬間足で踏みつけ固定し、その瞬間ドラゴンの腹部に拳がめり込んだ。
「ガハッ!!」
ドラゴンが地面にうずくまる。私はすかさず剣を蹴り飛ばした。
「やっやべえ……一旦逃げねえと」
そう言った瞬間ドラゴンは木の枝を伝いながら逃げていく。
レイはため息をいてから一瞬でドラゴンの後ろにつき、背中を蹴って地面に叩き落とした。
そしてまだ逃げようとするので足を氷で固めて動けなくする。
「くっくそ、動けねェ!!!」
「なんだっけ? 切り刻むんだっけか」
レイが剣を振り上げると仮面越しでもドラゴンが恐怖しているのを感じる。
「やっやめてくれ!! 俺が悪かった!!」
「いや、当たり前でしょ。じゃあこのまま氷で固めたまま置いていくから。運が良ければ生き残れるかもね」
「自首する!! 自首するから許してくれ!!」
「いや、この時点でもう現行犯だから」
レイはドラゴンの腹部をもう一度殴った。
するとドラゴンは大量の冷や汗を流しながら気絶した。
レイはドラゴンの首根っこを掴んで転移門まで移動した。そして転移門を出ると複数人のダンジョン協会の人間と警察が待っていた。
レイはドラゴンを警官達のいる前に投げる。
「えっと、なんだっけ……名前ダサい人捕まえたんでよろしくお願いします」
名前を忘れていたレイは警察達に丸投げしてその場を離れた。すると後ろから静かに声をかけられる。
「レイ、お疲れ様。お願い聞いてくれてありがとう」
「ううん。大丈夫だよこれくらい」
「それにしてもよく迷惑系配信者ってわかったね」
「それはねなんか20代後半くらいの大人の人たちのパーティーのメガネのお兄さんが言ってたのを覚えてたんだよね」
「それはおそらく【グローリア】。数年前から実力があるとして有名なパーティー」
「そうなんだ。なんかベテランっぽいなぁって思ってたけど合ってたんだ」
「それにしてもレイ。あなた今トレンド入りしてる」
雫がスマホの画面をレイに見せる。そこにはSNSアプリのトレンドの一位には『ドラゴン 逮捕』2位には『rei』がトレンド入りしていた。
レイが困惑していると雫が説明を始めた。
「今回の迷惑系配信者ドラゴンは、登録者が50万人いた。その影響でレイの配信を特定した人がいて拡散されたんだと思う」
「まじかよ〜、特定する人すごいなぁ」
「これでレイは有名になったから私とコラボができる」
「したいの? コラボ」
「当然」
「そっか。じゃあ今度一緒にダンジョン潜ろうか」
「絶対に約束」
「へいへい」
その後他愛のない会話をしながら二人は家に帰るのだった。
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