第30話 とある少女はまたトレンド入りする

 迷惑系配信者騒動から1週間が経った。

 

 普段通り学校が終わり今日はレイと雫はダンジョンに行く予定はないので、二人で夕飯を出前で頼み雫の家で一緒に食べていた。


「そういえば雫ちゃんとコラボっていつするの?」


「いつでも大丈夫」


「じゃあ明後日学校休みだからやろっか。場所は渋谷ダンジョンで雫ちゃんと一緒に攻略する感じで行こうか」


「うん。あとこれ見て」


 雫がレイにコメント閲覧用の腕輪を取り出した。


「私もとうとう魔力を入れたら壊れた。

 おそらくレベルが400を超えて私の魔力の質が変化したからだと思う。

 でも私じゃまだこの力をずっと出すことはできないと思う」


 雫が手に黒い稲妻を纏わせて嬉しそうにレイに報告する。


「えっ、おめでと〜! すごいよ雫ちゃん! これで雫ちゃんも練習すれば基本属性魔法全部使えるよ!」


「レイみたいに氷魔法も使える?」


「氷と水は系統似てるから多分すぐいけるよ」


「分かった。じゃあ練習する」

 

 そんな会話をしつつ二人は食べ終わりソファーでくつろいでいると雫が立ち上がる。


「今から私は部屋で1時間くらい配信するけどレイはどうする?」


「じゃあ私はここで剣の手入れでもしようかな。雫ちゃんの剣もやっとくよ、こういうのは魔法使わずに自分でやった方が楽しいんだよね〜」


「分かった。ありがとう」


 そう言って雫はレイに剣を2本共渡して自室に入って行った。


 そして30分ほどがたった頃、雫が部屋から出てくる。


「あれ、雫ちゃんもう終わったの?」


「レイ、よかったらなんだけど私の配信に今から出ない? カメラはオフにするから」


「随分いきなりだね」


「視聴者に今レイが家にいるって言ったら、質問したいってコメントがいっぱいきた。

 スタンピードの件で私との関係もバレてるから仲良しってことを視聴者にも前から言ってた」


「いいよ。雫ちゃんの配信に出よっか」


 そう言うと雫は嬉しそうな顔で分かったと言った後準備をしに行った。

 そして十数秒後に雫から手招きされたので、レイは雫の部屋のパソコンの横にあるベッドに座った。

 すると雫はコメント欄と喋り始めた。


「今、レイがここにに来たからレイへの質問を募集する」


 雫がそう言うとコメントの流れがどんどんと加速して行った。

 そして雫が質問を選びレイへの質問コーナーが始まった。


『reiさんに質問です。何歳ですか』


「今現在16歳、8月で17歳になるよ」


『この前の迷惑系配信者が襲ってきた配信を見ていたのですが、コメントを見ないのはなぜでしょうか』


「腕輪に魔力を通すと腕輪が壊れちゃうんでコメントは今のところ見れないです」


『最近の雫さんの剣とreiさんの剣は同じ物なのでしょうか。それに売っているならどこで購入できるのでしょうか』


「この剣は特製だからどこにも売ってないよ」


『雫とreiはどう言う関係?』


「友達であり師弟関係でもある感じかな?」


『レベルはいくつでしょうか』


「今は秘密かな」


 そうした簡単な質問を答えること30分。

 雫の配信は終了の時間になったので、雫が締めの挨拶をして無事終了するのだった。


「ありがとう。配信に出てくれて」


「全然いいよ、それと剣の手入れ終わったから渡しておくね」


 そうしてレイは自宅に帰って眠りにつくのだった。


 そして翌日、レイは一人で渋谷ダンジョンに来ていた。

 そして今日来た理由は近々学校で行われる他クラスとの合同ダンジョン攻略イベントの下見に来ていた。


 Sクラスのレイと他のC.Dクラスの2人ずつで、パーティーを組み、渋谷ダンジョンを1層から順番に攻略する。


 レイは言ってしまえば護衛役のようなものだ。しかしレイは他人の強さに興味がなかった為、他クラスの人たちがどのくらい魔物を倒せるか知らなかった。


 雫の予想によると基本的に10層までは実力的に行けそうと言っていたので、現在レイは1層から順番に下見をして魔物の強さを調べていた。

 

「さっ……流石に手応えがない……」


 現在レイは10層にいるがここの魔物はレイにとっては流石に弱すぎた。

 それに大体下見は終わったのでもし予定より進んだ時の為にレイは11層の下見をすることにした。

 11層は大きい洞窟になっていて、遠くにいる戦闘音もたまに聞こえるくらい音が響いていた。


「きゃああああ!!」


 レイは11層を探索していると奥から悲鳴のようなものが聞こえた。

 走ってその声のした方向まで行くと、一人の女の子が巨大な蜘蛛の魔物に襲われていた。


「多分イレギュラー……」


 レイは小さく呟きながら現状を把握する。

 おそらくあの女の子はここで戦える戦闘力はあるが、イレギュラーが現れて太刀打ちできなかったと結論付けたレイは、蜘蛛に向かって氷の槍を飛ばす。

 女の子に覆い被さっていた蜘蛛は身体が硬く槍は刺さらなかったが槍のぶつかった反動で吹き飛ばされた。


 すかさずレイは女の子を抱き上げて避難させる。


「あとは私がやるから、あなたはもうここから離れて」


「あっあの────」


 女の子が何か言う前にレイは蜘蛛の方向に走って行った。

 そして体勢を立て直した蜘蛛はレイに向かって高速で移動してきていた。

 レイはその蜘蛛の足を全て切り落とし最後に頭を飛ばした。


「うん、この剣はやっぱり使いやすいね。加減がしやすくてこう言う敵にも対応しやすい」


 レイは魔法で倒さずに純粋な剣のポテンシャルだけで倒したのだった。

 そうして蜘蛛の素材を収納に入れていると、さっきの女の子がレイの元に走ってきていた。


「あっあの! 助けていただきありがとうございます! 私ダンジョン配信者兼アイドルをやっている【アオイ】と申します!」


「あっどうも、私はただの探索者です」


 レイは適当に挨拶を返すと、アオイは目を輝かせ始めた。


「もしかして、いやもしかしなくてもreiさんですよね?」


「……そうだけど」


「やっぱり! 私大ファンなんですよ!あの配信者ドラゴンをボコボコにした所、リアルタイムで見てました! 最高にかっこよかったです!」


 レイの手を握り、アオイは目をキラキラと輝かせていた。


(この子めちゃくちゃグイグイくる!)


 レイはこんなにも積極的な人は昔の凪くらいしか経験がなかったので非常に困惑していた。  


「あっありがとう……それじゃあ私はもう行くね」


「はいっ! ありがとうございました! またお礼は絶対にしますので」


「いやっ必要な────」


させていただきますね!」


 そう言ってアオイはレイが見えなくなるまで手を振っていた。

 レイは精神的に疲れたので配信を切り帰ることにした。


 その晩雫からスマホを見せられ、またトレンド1位に『rei』、2位に『アオイ救助』がトレンド入りし、レイは頭を抱えるのだった。



あとがき


 これにて新生活編が終わりとなります!次は雫との配信や学校でのイベントなどたくさんある予定ですのでお楽しみに!


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