第50話 とある少女はファンと遭遇する

 レイは雫に連絡して地上に戻ると目の前はバリケードで周りが見えないようになっていた。

 

 すると横から雫がやってくる。


「レイ、お疲れ様。今マスコミがダンジョン協会の発表を見て此処に押しかけて来てるの。

 だからレイはこっちから一旦離脱する」


 雫はレイの手を取りバリケードでできた道を歩いていく。

 すると車の前で会長の宗一郎と皆川がレイ達を出迎えた。


「氷川零さん。この度は騒動を解決していただき感謝する。それと今回の騒動によって君の存在を晒すような事をしてしまった。

 申し訳ない」


 宗一郎と皆川が同時に頭を下げた。


「まあ、今回の遠征に来た時点で覚悟していたことなので大丈夫ですよ」


「そう言ってもらえると私達としてもありがたい」


 宗一郎達は頭を上げレイ達を車に乗せ走り出した。


「また君に迷惑をかけてしまうが、この後よかったら記者会見に参加して欲しい」


「理由は?」


「ここで説明をしておくことによってある程度マスコミを納得させ、君への詮索や尾行を減らせると私は考えている」


「顔出すとめんどくさいのでフードとかで隠してもいいんですか?」


「もちろんだ。今回記者会見に出るのは氷川零ではなく、ダンジョン配信者のreiだ」


「なら別に構わないです」


「感謝する。この後2時間後にホテルのパーティーホールにて記者会見を行う予定だ。

 それまでそのホテルで食事を取ったり休憩するといい。

 そのホテルは食事の評価がとても高いことで有名だから期待しておくといい」


「そういえばお腹すいたなぁ」


「私も」


 レイと雫は2人揃ってお腹を空かせていた。

 そして10分ほどでホテルに到着したレイ達はそのままレストランへと直行した。


 丁度夕飯時ということもあって沢山の宿泊客が食事を摂っていた。

 レイと雫は2人ともローブをきてフードを深く被った。

 レイ達はVIP客が食事をとるエリアに案内されてメニュー表を雫と一緒に見る。


「雫ちゃん何食べるの?」


「私は正直私はなんでもいい」


「じゃあおすすめ聞いてみよっか」


 レイが手を挙げるとウェイターがレイ達のテーブルにやってきた。


「どうかされましたか?」


「あの、おすすめのメニューはありますか?」


「でしたらこのステーキがおすすめでございます」


「うーんと、じゃあそれにします」


 ウェイターのおすすめである牛のステーキを2人とも頼み出来上がるまで雑談をする事にした。


 そうして雑談をしているとレイ達のテーブルに1人の小さな中学生くらい女の子がやってきた。


「あっあの!」


「どうしたの? お嬢さん」


「もしかしてダンジョン配信者のreiさんですか?」


 その女の子は不安そうな表情で小声でレイに問いかけた。


 レイはフード越しに雫を見るが雫も何が起こったのかよく分かっていなさそうだった。


「……どうしてそう思ったの?」


「私すっごくファンで憧れてて……服装も配信で見たのと同じだし、それに今北海道に来てるからもしかしてと思って……」


「そっか応援してくれてありがとう」


「やっぱり本物ですか!? あの写真撮ってもらってもいいですか?」


「フード被ったままならいいよ」


 レイはその女の子の自撮りに入るように写真を撮った。


「ありがとうございます! あの、さっきのレイさんの魔法めちゃくちゃかっこよかったです!」


「あの魔法って何?」


 雫が女の子に問いかけた。


「えっと、札幌ダンジョンの25階層にに写ってて、それからいきなり一瞬で魔物から氷が貫通して出てきて全滅したんです。

 私みたいなreiさんをずっと見ていたファンならreiさんがやったって思ってるんです」


「げっ……ライブカメラなんてものがあったのか…… ちょっとその事なんだけどしばらく他の人には言わないでもらえる?

 多分公表されるだろうからそうなったら言って構わないから」


「わかりました! 誰にも言いません!」


 そうして女の子はお辞儀をしてその場を離れて行った。


「まさかライブカメラがあったなんてね」


「私も知らなかった」


 どうやらライブカメラの存在は雫ですらも知らなかったらしい。


「レイ、ライブカメラの映像が拡散されてすごい事になってる」


 雫はレイにスマートフォンの画面を見せる。

 そこには魔物が一瞬で全滅しその後砂嵐になる映像で、ある人は『何かの突然変異』、ある人は『reiの魔法』などの様々な意見があった。


「随分としっかり写ってるなぁ……」


「もうここまで話題になったら消すことはできない」


「記者会見どうなることやら」


 そうして料理が到着しレイ達は食事を始めた。


「うっうま!」


「確かに……これは美味しい」


「よければ肉の追加もできますのでお申し付けください」


「「追加で!!」」


 二人は楽しい食事のひとときを過ごすのだった。


 食事を食べ終わり、ホテルの一室を提供してもらった。

 寝転がってダラダラと過ごしていると記者会見の時間になりレイ達は会場に移動した。


「では、頼んだぞ。君は答えたい事を答えるだけで構わないから気負わないでくれ」


 宗一郎にそう言われてレイは頷き、会場に入っていった。

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