第39話 とある少女は選考試験で無双する①

 レイと雫は選考会の試験会場に到着した。

 そこは体育館を2倍にしたくらいの大きさで天井は30メートルはありそうなくらい大きい場所だった。

 周りを見てみると確かに今回参加した人達は中々に強そうな魔力を放っている人が多かった。


 二人は壁際に移動して説明が始まるのを待つことにした。そうして5分ほどが経つと皆川が試験会場に現れた。


「静粛に! これから北海道遠征に向けての選考会を始める!」


 騒がしかった会場が一瞬で静かになり入り口から会長が入ってくる。

 会長は探索者達にとっては時代を切り拓いた英雄的存在らしく、会長が登場した瞬間に感動を表す声や驚きの声が上がっていた。


「私はダンジョン協会会長、山本宗一郎だ。

 今回の遠征に行くメンバーは私が最終的に決定する。

 しかしもうすでに遠征に行くことが決定している者も、共に試験に参加していて君たちを評価する。選考会の試験中も私はモニターで見て審査しているので頑張ってくれ」


 そう宣言すると宗一郎は別室に移動して行った。その姿を確認した皆川は参加者達に説明をする。


「まず1つ目の試験は体力測定だ。

 この試験会場の地面に引かれている300メートルトラックを魔力を使わずに10周し、そのタイムに基づき評価する。

 測定方法は今から魔導リストバンドを配る。

 それをつけて走れば周回数が記録されるようになっている。

 それとこの魔道具は魔力感知も備えているので魔法や身体強化を使ったら瞬時にばれて即失格だ。注意するように」


 皆川の説明が終わり参加者達は自分の名前が記されたリストバンドを貰いスタートラインに誘導されて並ぶ。

 レイと雫は探索者達の列の真ん中あたりからのスタートになりそうだった。


「レイ、どのくらいのペースで走る?」


「どのくらいで走ろうかなぁ。特に決めてないよ」


「なら私と競争。1位と2位を私達で獲る」


「えーめんどくさ────」


「負けたら2時間柔軟ストレッチ」


「やらせていただきます。私は絶対に負けません」


 そんなレイ達がゆるい会話をしていると横から声が掛けられた。


「ケッ、四天王だかなんだか知らねえけどよ。あんまり選考試験舐めんなよ?」


 そう雫に声を掛けてきたのはいかにもチンピラという言葉が似合う見た目の探索者だった。


 レイと雫が顔を見合わせ首を傾げた瞬間スタートのピストルが鳴り響いた。


「よし! 雫ちゃん勝負だよ」


「負けない」


 そうしてレイ達はスピードを上げてどんどんと順位を上げていく。

 そうして1番先頭に出るとレイがさらにスピードを上げ、雫が後をついて行く。


 そうしてレイが5周目に入る頃には雫は30メートルほど後ろに、そして3位の人とは周回差をつけていた。

 

 レイが他の候補者達を見ていると順位を気にして最初に飛ばしすぎて苦しそうな人や、安定を求めて走っている人など様々だった。


 そうしてレイは十周を終えたので皆川の元まで行きリストバンドに記された10の文字を見せた。


「やっほー皆川さん。これでいい?」


「ああ、確かに確認した。それにしても凄まじいスピードだな……それに汗もかいていないし息も切れていない」


「それは罰ゲームがかかってたからね」


「罰ゲーム……? まあいい、しばらくタイムアップの時間まで休んでおくといい」


「はーい」


 レイは壁際に座って走っている人たちを眺めているとおよそ一周遅れで雫がゴールした。

 雫が皆川に報告した後レイの元にやってきた。


「おつかれ〜雫ちゃん」


「レイとお疲れ様。やっぱりレイは速い、また勝てなかった」


「雫ちゃんもレベルが上がればあれくらい余裕だって。私よりもポテンシャルあるんだから」


「むぅ……」


 雫が頬を膨らませて不満そうな顔をしている横でレイは他の探索者が走っているのを見ていた。


「ねえ雫ちゃん。私達早く走りすぎたのかな」


「私達が早いのもあるけど全体的に走るのが遅い。戦闘面では活躍するかもしれないけど万が一転移門に帰れない時に足手纏いになる」


「おっ、やっと一人終わったみたいだよ」


 レイが全体で三番目にゴールした人を指差した。


「あれは佐久間太一。私は攻略組に参加した時に一度話したことがある」


「はぇ〜てことは今のところ攻略組候補で1番有力ってことか」


「ちなみにレイの魔王ノ一撃を食らった内の一人」


「……何その私の聞いたことのない単語……」


「あの攻略組を襲ったレイの氷魔法の事。今のところレイの仕業ってバレてないけど」


「あれ? でも雫ちゃんに聞かれた時雫ちゃん配信してなかった?」


「多分だけどあの時、レイが助けてくれた時に使った氷魔法の影響でマイクが壊れてたみたい。だからレイとがやったという事は今のところバレてない」


「奇跡すぎでしょ……」


 そんな会話をしていると半分ほどがゴールしていて、皆川がタイムアップの笛を鳴らした。

 

 ほとんどの探索者が息を切らして倒れ込んでいる中、次の試験内容を皆川が告げる。


「次の試験だが防御を測る試験だ。これから自分の武器をつかってこの魔導人形の攻撃を2分防いでもらう」

 

 皆川がそういうと剣を持った10体のゴーレムが運ばれてくる。


「このゴーレム一体の攻撃を防いでもらうわけだが、一人一人を見ていたら日が暮れる。

 そこでこの魔導人形は現在10体あるため、先程の順位を元におおよそ10人ずつに分かれて試験を行う。分かったな、それではゴーレムの元へ移動しろ」


 レイと雫は順位が1位から10位の人用の魔導人形のところへ向かうのだった。














 



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