魔王誕生編

第38話 とある少女は選考会に呼ばれる

 交流イベントが無事終わった次の日、レイは特に予定もないのでソファーでテレビを見ながら寝転がっていると、とあるニュースが報じられた。


『先日から北海道の札幌ダンジョンにて頻繁にスタンピードが発生しています。

 その発生頻度は現在三日に一回のペースで発生しており、ダンジョン協会は調査隊を送ると同時に探索者を選び攻略組として派遣する見通しです』


「ほーん……スタンピードかぁ……」


 レイが自分は関係ないと引き続きソファーで寝転がっているとスマートフォンが震え、画面を見るとダンジョン協会の会長からの着信だったのでレイは通話ボタンをタップする。


「もしも〜し」


『やあ氷川零さん、私だ』


「会長さん、どうかされましたか?」


『現在北海道で起こっていることを知っているかい?』


「あー……スタンピードがなんとかってやつですか?」


『そうだ。今回連絡した理由だがその原因調査の為に君には攻略組として君に北海道に行ってもらいたい』


「え〜〜面倒だから行きたくないですよ」


『そこを何とか頼む。一応現在天城雫さんにも打診をしているところだ』


「じゃあ雫ちゃんが行くなら私も行きます」


『分かった。本当は一人でも行って貰いたいところだが今は、納得しておこう』


 そうして電話を切り再びテレビを見ようとした時にまたスマートフォンが震え、画面を見ると雫からの着信だった。


「もしも〜し」


『レイ、私だけど会長から電話きた?』


「来たよ〜、雫ちゃんが行くなら行くって伝えたよ」


『そう、なら今回の北海道遠征は私は行こうと思ってるからレイも一緒に行くことになる』


「そっか〜……めんどくさいけど雫ちゃんが行くならって言っちゃったし私も準備するかね……」


『一度攻略組の候補者達が一度協会に集まる日がある。会長から直々に頼まれた私達は十中八九選ばれるだろうけど一応行っとかないといけない』


「分かったよ。それと雫ちゃん一回こっち帰ってくるんでしょ?」


『うん。今日の夜にはそっちに帰る』


「ならダンジョン協会に行く時一緒に行こうよ」


『私はそもそもそのつもりだった』


「そっか。それじゃあまた夜に」


 レイは通話を切りソファーに寝そべろうとするとまたスマートフォンが震えた。


「もう! 何回電話くるの?」


 レイはスマホの画面を見るとそこに映っていたのは【お父さん】と言う文字だった。レイは今更なんだろうと首を傾げる。


 レイは絶縁宣言のメッセージに返信してから興味はなかったのでブロックすらしていなかった。

 返信した後に会長に絶縁されたと言うと、会長はレイの父親を調査した。


 すると父親すらも一条に賄賂を貰いレイの指名手配に仕立て上げることに協力していたという疑惑が出た。


 レイは正直心底どうでもよかったが、会長は慎重にこれからも動向監視しつつ調査すると言っていた。

 そしてそんな父親から着信が来ているレイはというと……


「すぴー……すぴー……」


 スマートフォンを机の上に置いて眠っていた。


 そして2時間後レイは目を覚ました。レイはスマホを見るとおびただしい量の着信履歴とメッセージが来ていた。


 レイは読む気もなく、これ以上スマホから通知がなるのが鬱陶しかったのでここで初めて父親の連絡先をブロックした。


 そして日が傾き始めていた為、レイは近くのスーパーマーケットに夕飯で作るオムライスの材料を買いに行った。


 買い物が終わり、袋を持って帰り道を歩いていると前方に実家から帰っている雫の後ろ姿が見えた。


「あっ雫ちゃん!」


 レイは小走りで雫の元まで行き、雫と会話しながら帰宅するのだった。


 そして雫と一緒に夕飯を食べ眠りについた次の日、レイ達はダンジョン協会に訪れていた。


「雫ちゃん、今回の北海道遠征何人くらいが行くの?」


「とりあえず候補者は全国から100人くらいが選ばれて今日この日に大体30人前後までに絞られる。

 この100人の中には人気だから選ばれた人とか親の影響力で来た人もいるけど、今日ここで選ばれる人は会長が直々に決めるから不正はできないようになってる。その後に最終選考をもう一回行って遠征する人が決定する」


「会長も重労働だねぇ」


「ああそうだとも。だから二人が人選を手伝ってくれてもいいのだがね」


 ロビーで会話していたレイと雫の後ろから会長である宗一郎が声をかけてくる。


「あっ会長さんだ」


「やあ二人とも、今回はこの依頼を受けてくれてありがとう。

 私がさっき言ったことだがあながち間違いでもない。

 二人はもうすでに合格なのだが一応今回選ぶメンバーの見極めをしてほしいと思っている。

 選考会の試験に参加してもらい、私が選んだ中で不相応だと思ったもの達を教えてほしい」


「えーめんどくさ────「わかりました」」


 レイの言葉に被せて雫が了承の返事をする。


「そうか、ならまだ集合時間前なので職員用のカフェでお茶でもしながら話そうではないか」


 宗一郎が苦笑いしながらそう言いレイと雫は宗一郎の後ろをついていき、職員用のカフェのテーブル席に着く。

 席に着くと宗一郎が真剣な顔で話を切り出す。


「今回だが、一条も自分の影響力と親の力を使ってこの選考会に参加している。

 もし、一条が本当に今回の遠征調査で役に立ちそうな場合、二人には申し訳ないが連れて行くことにしている」


 宗一郎が申し訳なさそうな顔でレイに謝る。


「私は全然いいですよ。正直一条って人は興味ないし、札幌ダンジョンで私はおそらく単独行動をするので」


「……そうか。普通の探索者には単独行動は控えろというところだが、君ならその方がいいと思ってしまうな」


 宗一郎は苦笑いをしながらそう言った。

 

 そうしてレイと雫は今回の試験のことや選考の基準などを軽く宗一郎から聞いていると、ちらほらと候補者達が集まり始めているという報告を職員から受けた。


 宗一郎がレイと雫に挨拶をしてその場から立ち去った。


「雫ちゃん、私たちも行こうか」


「了解」


 二人は出された紅茶を飲み干した後、候補者達が集まる第一訓練場へと足を進めるのだった。

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