第37話 とある少女は襲撃犯とお話(尋問)する

 レイのパーティーは順調に攻略を進め最終的には第12層まだ到達していた。

 それ以上を探索する時間は十分に存在したが今回は12層までしか探索を許されていなかった為、12層の転移門前でパーティーの反省会をしていた。


「いや〜なんとか無事に終わったね。最初はどうなることかと思ったけどみんな怪我しなくてよかったよ。

 みんなはどうだった? 今回のイベントは楽しかった?」


「はい! 本当に勉強になったし探索者に一層なろうと思いました!」


 桜が元気そうに言うと他のメンバーも大きく頷いた。

 その後は皆の立ち回りの課題や一人一人の改善点をレイが思ったことを言った。

 皆、しっかりとスマホやメモ帳で記録していてレイは感心していた。

 

 そうして10分程がたった頃、雫達のパーティーが第12層にやってきた。


「悔しい。追いつけなかった」


「流石に教え子に負けるわけにはいかないよ〜」


 レイは悔しそうな表情をしている雫の頭をポンポンと撫でながら言った。

 

 ちょうどその時に探索が終了の時間になり、レイと雫のパーティーは一緒に転移門をくぐった。

 そして全員が集まって閉会式のようなものをして今回のイベントは現地解散で終わった。

 

 レイと雫が帰ろうとした時後ろから声をかけられた。


「あの! もしよかったら打ち上げとかしませんか?」


 そう言ったのはレイと雫のパーティーの生徒達だった。

 レイと雫は顔を見合わせる。


「雫ちゃんはどうしたい? 私はなんでもいいけど」


「私は今回限りのパーティーだから最後に一回くらいは行ってもいいと思う」


「じゃあ行こうか」


 レイがそう言うと周りが歓喜の声を上げた。

 聞く話によると、二人のパーティーメンバーはどうやら友達同士らしい。

 そのため話し合ってレイ達を誘ったそうだ。


 彼らの提案でカラオケに行くことになった。しかしレイと雫は歌に全く興味がなく、歌えるものが全く無かったのでみんなの歌を聞いていた。


「みんな楽しそうだねぇ」


 レイがそう言うと雫は頷く。


「本当に偶にはこういう騒がしいのも悪く無いかなって思っちゃうね」


「確かに、ずっとは嫌だけど」


 そうして雫以外と話したり質問に答えたりしていると、カラオケの終了の時間がやってきた。


「それじゃあまたね」


 そう言ってレイ達は彼らと別れ帰路に着き、

帰宅途中で雫が口を開く。


「明日が休みだから私は今日実家に一旦行くつもり。だから私は電車で帰る」


「そっか、私は歩きたい気分だから軽く歩いてからバスに乗って帰るよ。じゃあね、また帰ってきたら一緒にご飯食べよう」


「うん、いずれは両親にレイを一回は紹介したい」


「まあ私は別にいいけど……」


「それじゃあ」


 そう言って雫は駅の方に向かって行った。


「じゃあ私も帰りますかね」


 レイ今日なんとなく歩きたい気分だったので歩き始めた。


 そして住宅街をしばらく歩いているといきなり黒ずくめの男がレイの後ろから首元に剣で攻撃した。

 レイは剣を抜きその攻撃を簡単に防ぎカウンターを入れようとするが、黒ずくめの男は後ろに飛び退き回避される。


「ちっ外したか……」


 黒ずくめの男が舌打ちをする。


「ちょっと、ここ住宅街なんですけど?」


「フッ、ここには今認識阻害の魔道具が設置されている。

 だからお前がいくら叫ぼうが、助けを呼ぼうが聞こえることはない。

 大人しく殺されるんだな」


 黒ずくめの男がそう言った瞬間影から4人がさらに出てきた。

 そしてその四人は一斉にレイに斬りかかる。


「後から来たこの四人、本当に人間?」


 レイは四人の内、一人の首を飛ばしたが霧になって消えてしまった。


「やっぱり、分身とかそんな感じか……」


 レイは他の分身体と本体の攻撃を防ぎながら考察する。


「クソッ攻撃があたらねぇ……」


「ねえ、聞いてもいい?」


「……なんだ」


「もしかして私を襲ったのって一条って人からの依頼?」


「俺たち『影』は依頼主の情報を吐くことは決してない」


「そうなんだ。ふーん……」


「……!?」


 そう言った瞬間、レイの瞳が薄く光った。その瞬間残りの3体の分身は霧になり消えていく。

 そのまま、驚いて一瞬隙ができた本体の黒ずくめの男に剣の腹の部分で殴る。


「ぐぁっ……」


 少しよろめいた瞬間レイはその男を組み伏せ馬乗りになる。


「なんだ、ここにいるあなたも多分本当の人間じゃないのに痛覚はあるんだ」


 実はレイは最初から魔力の質で本体らしき者も分身だと見抜いていた。

 そして痛覚があるとわかったのでここからレイのお尋問が始まる。


「ねえ、依頼主は誰?」


「…………」


 レイは何も言わない男の体内に神経を攻撃するような魔力を流し込む。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 男は断末魔のような声を上げながら足をジタバタさせて悶絶する。

 レイは一度魔力を流すのを止め、もう一度問いかける。


「ねえ、もう一度聞くよ? 依頼主は誰?……ここって認識阻害の範囲内だから叫んでも誰も来ないんだっけか。なら、後何回あなたは耐えれる?」


 そういいレイはまた魔力を流す。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」


 もう一度男は叫びもがくといきなり霧になって消えてしまう。


「ありゃ、逃げられた……。でもあの感じ多分一回死なないと戻れないタイプのスキルような気がしたから、多分ショック死したのかな」


 レイはそれ以上は興味がないため思考を止め歩いてその場を立ち去るのだった。


◇◇◇


≪一条side≫


「クソッ!! また失敗しただって!? どれだけ金を払っていると思ってるんだ!」


「それにしてもあの女、生きていたなんてな。俺たちでも勝てないからあの時囮にして逃げたのに、あいつが生きてたら真実を暴露されちまう……やっぱり早く殺さないと」


 一条は窓の外を見ながらニヤリと笑うのだった。



 あとがき


 これにてイベント編終了です!

 次回の章からさらに面白くなる思います!お楽しみにしていてください!

 いつも読んでくださる皆様も本当にありがとうございます!

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