第13話 とある少女は気付かぬ内にだいぶやらかす。

 レイが地球に帰還した時、ダンジョン攻略組もまた、渋谷ダンジョンに潜っていた。


  ◇攻略者side◇


 私、天城雫あまぎしずくは探索者をやっている。高校に通いながらダンジョンに潜っているが今では最強の探索者【四天王】のうちの一人なんて言われている。

 私のダンジョン配信チャンネル≪雫≫も半年前から初めて登録者は200万人にまで増えている。

 配信なんて興味なかったけど、のせいで、動画配信もしくは録画が義務付けられた。

 そんな私は基本ソロで潜っているけど、今回は国からの要請で今回の大規模レイドに参加することになり、集合場所に向かっていた。

 集合場所の渋谷ダンジョンの入り口付近に着いた私は、今回のレイドを聞きつけたマスコミを横目に見ながらリーダーの元へと向かう。


「はじめまして、雫です」


「おお! 初めまして俺は佐久間太一さくまたいちだ、よろしくな! 噂は聞いてるぜ、お前も【四天王】って呼ばれてんだろ? お互い大変だな。ああそれと、今回は参加してくれてありがとな!」


「こちらこそよろしくお願いします。それと今回配信はするんですか?」


「ああ、協会にも配信を可能であればつけろだとよ。だからお前も完全自己責任だが、配信付けたかったら付けてもいいぜ」


「わかりました」


 そう言いながら豪快に笑う佐久間を私は分析していた。


(確かにリーダーというだけに、すごいオーラを感じる。確か35歳のはずなのにあの巨体。まだまだこれから更に伸びていきそうな感じがする)


 雫が周りを観察していると、後ろから声をかけられる。


「よう、俺はダンジョン配信者の一条だ」


「……どうも雫です」


「よかったらこのあとレイドが終わったら飯にでも行かないか?」


「はい?」


「超高級レストランを予約するぜ?なぁいいだろ?」


「いえ、結構です。私はダンジョン攻略をしにきたのであって、遊びの約束をしに来たわけじゃないので」


「そっそうか……」


 私は自分の顔が良いのを自覚している、あんな風なナンパをしょっちゅうされていると嫌でも分かる。そして私がバッサリと切り捨てると、一条は戸惑いながらも退散していった。


(何あの人、いきなりナンパしてくるなんて。しかも全然オーラを感じなかった。正直今回のレイドに着いていけるとは思えない。人気者ってだけで参加できているの?)


 雫は今回の参加者を一人一人見ていくことにした。


(今回は三十人、私と同じくらいの強さの人が五人、私より少し弱そうな人が20人ほど、後は何故ここに居るのか分からないほど、弱そうな人、とくにやっぱり一条って人のパーティーが1番実力的にこのレイドのメンツに着いていける程の実力じゃない)


 私が分析していると集合の合図がかかり全員が佐久間の前に集まった。


「今回のレイドに参加してくれて感謝する!俺は佐久間太一、ダンジョン協会所属の探索者だ。今回のレイドだが、第60層のボス攻略を目標にしている。今回の魔物の名前は【双子狼】レベルは130。名前の通り二体の狼が襲ってくる。しかも普通の狼の10倍はでけぇ。

 だから今回はいつもより人数を増やし2チームに役割分担して戦う。詳しい話はまたボスの入り口で話す、それじゃあ60層の入り口の転移石は解放しているからそこまで転移する!全員いくぞ!!!」


「「「おおーー!!!」」」


 そう言って、全員転移のポータルに入っていった。


 転移が終わり全員がボスの認識されない範囲に集まる。

 そして当初の予定通り2チームに分かれることになった。

 私はリーダーのチームに入ることになり、一条とは別のチームだった。向こうのリーダーはダンジョン黎明期からのベテランなので心配はなさそうだ。

 そしてリーダーは配信用のドローンを起動し飛ばす。それに続き他の探索者も配信するものはドローンを起動して行く。

 私も今回は配信できたらすると視聴者に言ってしまったので、ドローンを飛ばし配信をつける。そして腕につけた腕輪型のホログラムでコメントを表示する機械に電源を入れる。


≪雫が配信を開始しました。≫視聴者数3万人


「今回は前に言った通りにレイドで60層のボスを攻略する」


『見に来ました』


『頑張れー!』


『気をつけてね』


『応援してますー!』


「応援ありがとう。戦闘中はコメントはみれないからそこのところよろしく」


 私は高速で流れるコメントを返し、気を引き締める。


「よし!準備できたな!戦闘開始ーーー!!!!」


 その合図とともに全員が双子狼の元へと突っ込んでいく。

 気づいた狼が二匹とも対抗するように走ってきて、鉤爪で攻撃を仕掛けてくる。

 その攻撃をタンク役が盾で受け止め、その隙に剣を抜いたアタッカーの私たちが狼に傷をつける。

 私は狼の足に切り掛かるが、皮膚が硬くあまり深い傷は負わせることができなかった。


「チッ、浅い……」



雫が攻撃をして一度後ろに飛ぶ。そして佐久間が大剣で片方の狼を殴って吹き飛ばす。


「オラァァ! よし狼を分断したぞ、俺のチームはついてこい!」


 その言葉とともに私達のチームは吹き飛ばされた方の狼を相手する。


 そうして盾で攻撃を受け剣士が横から狼を斬り、それを魔法職が援護する。負傷したものはサポーターに治療をされていき、そんなサイクルを繰り返し狼はやがて動かなくなった。


「よし、こっちは倒したぞ!!!」


 佐久間がそう言い、もう一匹の方を見る。すると向こうもちょうど倒し終わったところだった。

 

「よし、討伐完了!!第60層を攻略したぞ!!」


「うおおおおおお!!!!」


 佐久間がそういうと他のメンバーもそれに応えるように叫んだ。


 雫はコメントを見ると、


『すげえええええ!!』


『感動しました!!』


『やっぱり雫は最強だな』


 など、賛辞を送るコメントで溢れていた。


 そして少し戦利品の確認と休憩をしている時に何か嫌な予感を雫は感じ取った。


「…………?」


 座って休憩していた雫は立ち上がると次の階層に行く階段の方を見る。


「どうしたんだ雫、階段の方に何かあるのか?」


「いや、わからない。わからないけど、何か嫌な予感がする」


 近くにいた佐久間が聞いてくるので思だだことを話す。


『なんだなんだ?』


『何かあったのか?』


 コメントも困惑している様子だった。


「とにかく、ここは早く出たほうがいい。そんな気がする」


「わっ、分かった。おーい!早めに切り上げ……「「「!!!!!!!!!!!」」」 」


 佐久間はみんなに呼びかけようとした瞬間、とてつもない悪寒とともに

 雫と同じくらいの実力者もいち早く気づき立ち上がって警戒体制を敷く。

 そして地面が小刻みに震え始めた。

 そして実力のある探索者は皆同じことを考えた。


────何かとてつもないのがくる


 その瞬間、佐久間は叫ぶ。


「全員警戒体制!!!全員防御体制を取れ!!!取れないものはタンクの後ろに下がれ!緊急事態だ急げぇぇぇぇぇ!!!」


 只事じゃないと感じ取ったメンバーたちはすぐさま言われた通りにする。


 その瞬間、とてつもない轟音とともに吹雪が階段がら現れ、探索者たちを襲う。


「きゃああああああ!!!!」


「うわぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 タンクの後ろで探索者たちが悲鳴を上げる。


 そうしてしばらくして吹雪は止まり、あたりは雪が積もりしんしんと降り続けるのだった。


 そして私達は被害状況を確認する。タンクの盾は割れ、吹雪に当たってしまい体の一部が凍った人、寒さで震える人など、死者はいないものの被害は甚大だった。


「ぎゃぁぁぁぁぁぁ!イテェェェェ!!」


 そう言って叫んでいたのは腕が凍った一条だっだ。


「これは早く退散したほうが良さそうだな」


佐久間は雫に言う。


 私が頷き、動けないもののサポートに行こうとした瞬間。雪が一瞬で溶け、氷漬けになった人の氷も溶けていた。


「なっ!?」


 私が驚いていると、佐久間が話しかける。


「おいおい、今のはなんだったんだよ……悪い夢じゃないだろうな……」


 そんな佐久間に私の考えを話す。


「この氷、こんな一瞬で消えるってことは、魔法の可能性が高い」


「なっ!?ってことはこんな魔法を扱えるやつがこの先にいるってことなのかよ!?」


「わからない……わからないけどその可能性は考慮すべき」


「ははっ冗談じゃねえこんな魔法、この先に【魔王】でもいるんじゃねぇのか?」


 そんな佐久間の言葉に誰も否定できる者はいなかった。

 そうして大規模レイドは一応成功し、皆帰還するのだった。

 ちなみにその吹雪は40層にまだ到達し、その日のダンジョン内の平均気温はマイナス10度になった。その時に起きた吹雪は【魔王ノ一撃】として、全世界のトレンド一位を獲得し世界中で話題になるのだった。


◇◇◇


────その頃のレイ────


「やばっ、魔法消すの忘れてた!まぁまだ魔法が影響する範囲まで誰も攻略してないだろうし、影響したのも4、5層くらいまでだよね?誰もいないだろうし大丈夫だよね……?」


 そう、レイはよくて2、3階層ほどの影響だと思っていた魔法が、実は40階層ほどにまで影響を及ぼしていることなんてまだ知る由もなかった。

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